株主還元で外国人株主に秋波 「メディア」関連株が上昇

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株式市場でメディア関連株が人気化しています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は8.8%と、東証株価指数(TOPIX、1.7%高)を大幅に上回りました(2月2日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

日テレが名簿外の外国人株主にも配当を実施する方針

メディア関連株が上昇した背景は、日本テレビホールディングスによる外国人株主への配当支払い方針の提示です。同社は、6月開催の定時株主総会の定款変更で株主名簿への記載を拒否した外国人等株主が配当を受け取れるようにする方針を示しました

放送法は国益等の観点から、メディア業界における外国人による放送事業者の議決権保有を制限しており、議決権比率が20%以上になることを禁止しています。仮に20%を超える場合には、放送事業者は外国人の株主名簿への記載を拒否し、株主の権利(配当金受け取り、議決権行使など)を無効化することが認められています。 

日本テレビはこれまで外国人の議決権比率の20%超えを避けるため、一部の外国人株主を株主名簿に記載せず配当も出していませんでした。しかし、このことが一方で、自己株式の取得を困難にするという副作用を生み出していました。

どういうことかと言うと、自己株式の取得は、発行済み株式総数を減少させることにつながり、既存株主の保有比率が上昇することになります。日本テレビの23年9月末時点の外国人の議決権割合は19.99%で、このままの状態で自己株式を取得すると外国人の議決権割合が20%を超えることとなります。記載済みの株主を名簿外にする必要が生じ、今まで支払われていた配当が支払われないこととなります。

このため、株主還元の拡充も踏まえ、自己株式を取得するにあたり、すべての外国人株主に配当する方針を示した訳です。今後、他のメディア企業も追随する可能性があるとの見方からメディア関連株に買いが広がりました。

コア視聴率3冠でジブリ子会社化【日本テレビホールディングス】

上昇率トップは日本テレビホールディングスです。傘下の日本テレビは、2023年の年間視聴率で13年連続の視聴率3冠は逃したものの、情報発信や経済活動が活発なコア(13歳〜49歳男女層)視聴率が11年連続で3冠を獲得。放送収入はタイム・スポットともに民放トップをキープする強さを誇ります。また、23年にはアニメーション映画の製作などを手がける「スタジオジブリ」を連結子会社するなど、コンテンツ強化にも注力しています。

優良資産多数保有で株主還元に期待【TBSホールディングス】

上昇率2位はTBSホールディングスです。本業の放送事業では苦戦を余儀なくされていますが、複合施設「赤坂サカス」などの優良不動産を抱える不動産業が収益の柱となっています。また、東京エレクトロンの創業時に全額出資した経緯から現在も大株主となっており、23年9月末時点で保有する東京エレクトロン株の時価評価額(2日時点)は4500億円強に達しており、これを元手にした株主還元が期待されています。

自社株買いや配当性向を引き上げる企業も

テレビ朝日ホールディングスは、傘下のテレビ朝日が2023年の年間視聴率で開局以来初となる3冠(全日、ゴールデン、プライム)を達成しました。14年ぶりに世界一を奪還した「WBC(ワールドベースボールクラシック)」や五輪出場権を獲得した「バスケットボールW杯」などのスポーツ中継が高視聴率を記録しました。フジメディアホールディングスは積極的に株主に利益を還元しており、連結ベースの配当性向は40%を基本に設定し、24年3月期までに100億円を上限に自社株買いを実施しています。テレビ東京ホールディングスは30%を配当性向のめどにしていますが、中長期的には35%への引き上げを目標に掲げています。

引き続き外国人投資家との関係の動向に注目

今回、日本テレビが名簿外の外国人株主に配当する方針を示したことで、他のメディア企業にも外国人投資家から株主還元の拡充などの要求が増える可能性があり、市場の注目を集めそうです。これまで、メディア・放送業界を巡っては、2019年に、投資ファンドの米ホワイトボックス・アドバイザーズ、英アセット・バリュー・インベスターズなどが、TBSに対して政策保有株の売却による配当など株主還元を要求。また、昨年2月には、日本民間放送連盟が、総務省に放送分野における外資規制等に係る法令改正に対する意見を提出しています(『規制緩和要望で外資流入の思惑 「民放キー局」関連株が上昇)いずれも株価へのインパクトのある動きであり、引き続き外国人投資家との関係の動向が注目されそうです。