大学生といっしょに日経平均株価採用銘柄を眺めてみた

あなたの知らない「インデックスの世界」/ おせちーず須山 奈津希

「日経平均株価の採用銘柄、どこまで知ってる?」を読む

「日経平均株価」を耳にする機会は多くても、その中身やルールについては、自ら興味を持たなければ積極的に知る機会はないでしょう。そんな中、某大学で学生のキャリア形成の授業をとる筆者が大学生に「日経平均株価に採用されている銘柄から1つ選んで投資するなら?」と問いかけてみました。その選定銘柄と理由には納得のものも。どんな銘柄が選ばれたのか、そしてこの授業の意図とはーーさっそく見ていきましょう。

目的は「結構知らない企業が多いんだな」と認識してもらうこと

授業では、日経平均株価に採用されている225社のリストを学生に配ります。まずは、知っている会社に印をつけてもらい、印がついた数を数えてもらいます。筆者の経験では100社に印が着いたらかなり多い方です。これは前回の記事で触れたように、BtoB企業が沢山採用されているからでしょう。筆者は地方在住で、授業を実施している大学ももちろん地方の大学です。言葉を選ばず言えば、地方の学生にはなじみがない企業が沢山採用されているのも日経平均株価です。

学生に印をつけてもらう目的は「日本を代表する企業群なのに、結構自分は知らない企業が多いんだな」と気づいてもらうことです。このプロセスをきっかけに、自分はもっと視野を広げたほうがいいかもしれない、と気づいてくれたら本望です。

さらに学生には課題を出します。「日経平均株価採用銘柄から1銘柄を選び、最後の授業直前までのリターンを競う。選んだ銘柄と理由を示すこと」という課題です。なお、授業の目的は投資のノウハウを教えるものではありません。ですから、一般的なファイナンス理論もまったく教えていません。あくまでも、日本の代表的企業に馴染んでもらうことが目的なので、リターンを成績に反映させるのはフェアではないと考えています。学生にとってはゲームみたいなものでしょうか。

では、11人が履修した2023年度後期の1年生が選んだ銘柄と、その選定理由を見てみましょう(10月上旬に選定)。

サッポロHD
ニチレイ
セブン&アイHD
花王
ブリヂストン
日立
ソニー
任天堂
JR西日本
NTT

筆者は学生に何も伝えず「1銘柄選んでね」と指示したのですが、短期的な目線、長期的な目線があるように思えました。株価の推移を確認して選んだと思えたもの、自分たちに馴染みがある企業を選んだもの、季節を考えて選んだと思えるものなどがあり、それぞれ面白いなと思いながら選定理由を拝見しました。ブリヂストンに関しては、筆者が住む北国では冬になるとスタッドレスタイヤがカーユーザーには必須になるからという理由でしょう。

実際に日興フロッギーで100円ずつ投資してみた

学生には内緒にしていましたが、筆者は日興フロッギーで学生が選んだ10銘柄に100円ずつ投資してみました。彼らが選んだ銘柄に投資したら結果がどうなるのかを試してみたかったのです。最後の授業の前にすべて売却して、投資の評価をして学生に伝えるつもりでした。トータル1000円なら、最大のロスも1000円です。ましてや、日本を代表する企業群から選んだ10銘柄です。2ヵ月程度ですべてがゼロになることも考えにくいです。仮に売却時にマイナスになっていても筆者が許容できる金額です。このようなことを気軽にできるのが日興フロッギーの良さだと思います。

買いの約定から約2ヵ月後、12月に2023年度の最後の授業を実施することにしていました。その頃10銘柄をすべて売却した結果が以下の通りです。NTT(9432)以外はすべてプラスになり、トータルの金額は1070円になりました。買いの約定は2023/10/16で売りの約定は2023/12/15です。仮に終値で評価するとこの期間の日経平均株価のリターンは4.14%でした。日興フロッギーでの投資のリターンは税引き前で7%ですから、上出来と言えるでしょう。

利益は「〇〇した」

学生には最後の授業で、それぞれの学生が選んだ銘柄のリターンを伝えるとともに、実はすべての銘柄に100円ずつ投資していたことを伝えました。それまで全く伝えていなかったので、筆者が自腹を切って投資していたことに驚いた学生もいたようです。

「皆さんが選んだ銘柄に実は私が100円ずつ投資しました。1000円投資して、70円ぐらい増えました。減ってしまったら、その責任は私が抱えようと思っていましたが、有難いことに増えました。増えた分は、私が寄付します。皆さん、知らないうちにいいことができましたね」と伝えると、学生は笑顔になったように思います。

実際は利益分に課税されますし、数十円だけ出金するのがやや億劫だったので、寄付は筆者が保有していたポイントから行いました。「がんの子どもを守る会」を選んだのは、筆者ががん治療を経験しており、同じ病気と闘う子どもたちが少しでも楽しいクリスマスを過ごしてくれたらいいなと思ったからです。

実はこの試みを3年続けています。
毎年、時流を反映してか学生の視点が異なるので、筆者も学生が選ぶ銘柄を楽しみにしている試みです。
2023年度に関しては、実際にお金を入れてみるという試みもできて、新たな展開を作れたと思います。これも、気軽に投資できる日興フロッギーだからこそできたと思います。

一方、学生が選んだ銘柄はやはりBtoC銘柄が多い印象です。
日本株投資のすそ野を広げるためには、もっと広い視野を持ってもらう必要があるなとも感じています。とはいえ、現時点で筆者の授業は投資のノウハウを教えるものではありません。あくまでも学生の将来を考えてもらうことが目的です。日経平均株価採用銘柄に触れてもらうことが、その一助になっていたらうれしく感じます。

※本記事は筆者のキャリア形成の授業における投資教育の場面を執筆したものです。未成年が投資を行う際は親権者の同意が必要ですので、ご注意ください。