改訂版 勝つ投資 負けない投資 片山 晃(五月)/小松原 周

投資がもっと楽しくなる!日興フロッギー選書/ 片山 晃(ペンネーム:五月)クロスメディア・パブリッシング小松原 周

投資や資産形成をもっと楽しくするためにピッタリの書籍を、著者の方とともにご紹介する本連載。今回は、さまざまな投資手法がある中で、自分に合ったものをどう見つければいいのか、その考え方を、個人投資家として150億円の資産を築いた片山晃さんと見ていきましょう。[PR]

「ラクして稼ぎたいからこの手法」と決めるのが危険な理由

投資にはさまざまなやり方があり、どれを選ぶべきかは一概に論じることができません。ですから、ここでお話しする僕のやり方や考え方については、「たまたま片山晃という人間が上手くいったやり方」であるということを忘れずに受け止めるようにしてもらいたいと思います。

どの投資が合うかは、その人の性格にものすごく左右されます。また、育ってきた環境や今の家庭の状況などのバックグラウンドによって、リスクに対する考え方も大きく異なります。なので、自分にはどんなやり方が向いているかというのは自身で見つけるしかありません。

では、どのようにして自分に合ったやり方を見つければよいのかですが、特に難しいことはありません。いろいろなやり方に実際に触れてみて、それを実践している先駆者のブログやSNS、書籍から考え方を学び、しっくり来るまで試してみるのです。僕も「これが多分自分のやり方なのだろうな」と自覚できるようになるまで5年はかかりました。

よくないのは、「大きく儲けたい」とか「ラクして稼ぎたい」という発想からやり方を決めることです。著名トレーダーに、BNFさんという、30代にして数百億円もの資産を稼ぎ出した生ける伝説となっている方がいますが、僕は彼のやり方を決して真似しようとは思いません。やっても自分にできるわけがないことを、これまでの経験でよく知っているからです。僕もその全貌を知っているわけではないですが、彼は本当にトレードに関して天賦の才を持っているように思います。

逆に、僕のように企業業績をつぶさに見ていくような作業はどうしても好きになれないけれども、BNFさんのように独特の感覚で値動きを捉えるトレードのほうが性に合っているという人ももちろんいると思います。そこは、それぞれが考えることでしょう。

ただ、一般的に、株を始める時に参考にするであろう書店の株コーナーや、マネー誌に出てくるやり方は、どうしてもその時々の売れ筋に沿ったものになります。そのため、内容が画一的になりがちで、本当に自分に合ったやり方に辿りつけていないという人もいるのではないでしょうか。ですから、そこはネットなどを使って能動的に、「世の中にはどんなタイプの投資家が存在するのか」をよく研究してみることをおすすめします。

「かけられる時間と情熱」によって取れる手法が決まる

僕の現在の主な投資手法は、「小型の成長株がその頭角を現し始める初動を捉えて、集中的に投資をする」というものです。これをやるには、普通の人があまり見ていないような小さな株を常にウォッチしながら、「世の中の次のトレンドは何だろうか」ということを考え続ける必要があります。小型の株は特定の製品やサービスに特化していることが多いだけに、そこに「時代の風」が吹けば、業績や評価が一変する可能性を秘めています。

「時代の風」とは、ここ十数年でいえば、たとえば東日本大震災後の再生エネルギー関連やLEDなどの省エネであり、コンピューターの世界ではクラウドやIoTであり、数年前であれば自動車の自動運転システムやマイナンバーなどです。より大きな視点で捉えるならば、21世紀に始まったインターネット革命は、今なお吹き続けている時代の風といえるかもしれません。そうした大なり小なりの世の中の変化を予測し、銘柄という形に落とし込んで先取りするのが成長株投資の基本です。

これをやるにはいくら時間があっても足りません。学校の宿題のように、今日はここからここまでやればいいというものがなく、その気になれば365日24時間ずっと取り組むこと、考えることがあります。なので、このやり方は、世の中の行く末や企業の盛衰について考えることがそもそも好きで、そうしたことに多くの時間を費やすことを厭わない人にしかできない可能性があります。

もし僕と同じようなやり方をするのであれば、それなりの時間と情熱を注ぐことを覚悟しなければならないと思います。それも、数年かけて収穫期に入るぐらいの時間感覚が必要です。

では、僕が数年に及ぶ苦行のような体験をしてきたのかというと、そんなことはまったくありません。僕は単に、元から関心のあった企業業績に関する研究や分析を、投資で勝つためにより深く行っただけであって、その作業自体はずっと楽しんでやってきました。それが「向いている」ということなのだと思います。

時間も情熱もかけられない人が取るべき手法とは?

そういう地道な作業は向いていない、かといって値動きを読んでトレードで勝つほどのセンスもなさそうだという人はどうすればいいのでしょうか。

答えは明瞭で、投資で大きく儲けることは諦めるのが賢明です。自分に合ったやり方が見つかっていないのに、「儲けたい」という願望ありきで投資を続けてしまうと、儲けるどころか損を重ねるばかりで大変危険です。

冷酷かもしれませんが、投資に向いていない性格の人というのは現実に存在すると思います。ただ、そういう人はスポーツやアートの分野に向いているかもしれないし、起業やビジネスで才覚を発揮するかもしれません。たまたま投資に向いていなかったというだけで、他の分野に目を向ければいいことです。

それでも、どうにかして投資で勝ちたいという人には、次の3つの選択肢が考えられます。

① あまり適性がないことを自覚して、無理のないリターンを上げる手法を磨く
② 信頼できるプロフェッショナルを見つけ、自分の代わりに運用してもらう
③ 投資で勝つために自分自身を殺し、勝てる性格に少しでも近づける

①は、大勝ちはできないが手堅くて汎用性の高い手法を取り揃え、それを効果的に使い分けていくというものです。自分でやっていないのであまり適当なことはいえないのですが、企業の純資産価値に着目したバリュー投資や、配当利回りを基準とした銘柄選択、普段はキャッシュを厚く持っておいて相場が大きく下げた時にだけ出動するやり方など、方法はいろいろあると思います。

②は、端的にいえば投資信託を買うやり方です。これについては多くの専門書が出ているので、敢えてここで解説はしません。

③は、一番きついやり方です。なぜ多くの人が投資で負けてしまうのかというと、「頭では正しいと理解していること」をそのとおりに実行することがとても難しいからです。値動きが弱く、とても上がる見込みがなさそうなのに、損を確定させたくないからと含み損のまま塩漬けにしてしまうのがその典型です。

理屈としてわかっていることと、それを実践できることには大きな違いがあり、これを埋めるのは容易ではないのです。

ところが、トレードに向いている人はそこにためらいがありません。下がると思えば売る。損切りした株でも、また上がると思えば躊躇なく売値より高いところで買う。普通の人が「心理的」にやりにくいようなことを「合理的」に処理していけるのが、トレード適性の高い人です。

反対に、長期投資においては、短期的には弱々しく見える値動きでも、自分が考える将来価値との差にギャップがあると思えば、むしろ買い増していく勇気も必要になります。これは、弱ければ売って、強ければ買えばいいという合理的な考え方ができるトレード派の人とは相容れない感覚でしょう。

自分に向いていないと思っても、目指すリターンを上げるためにはその手法が必要なのだとなれば、自分自身を変革していく努力が必要になります。長期間投資をやっていれば必ずどこかで壁にぶつかるので、専業投資家になるなら、この覚悟は必要不可欠といえるかもしれません。

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