株式市場で「保険」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は7.4%と、東証株価指数(TOPIX、2.4%高)を上回りました(2月16日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
金融庁が政策保有株の売却加速を求める
保険関連株が上昇したきっかけは、金融庁による損害保険大手4社に対する政策保有株の売却加速要請の報道です。
政策保有株とは純投資目的以外の投資有価証券のこと。取引先と相互に保有する場合は「持ち合い株」と言われ、日本独自の企業慣行として普及しました。企業改革の流れが進む現在では海外投資家を中心に批判的な見方が多く、売却が求められています。
また、金融庁は2023年12月に、企業向け保険料を事前調整したとして、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社に保険業法に基づく業務改善命令を出していました。
金融庁は、企業向け保険料の事前調整の背景には、政策保有株の存在があり、政策保有株が健全な競争環境を歪めていると問題視。2024年2月末の提出を命じた業務改善計画で現在の政策保有株の削減計画の見直し案を報告するよう求めています。
政策保有株の削減は、資本効率の改善や株主への利益還元の強化につながるためポジティブに評価されました。
海外保険子会社の好調で大幅増益【MS&AD】
上昇率トップは「 MS&ADインシュアランスグループホールディングス 」です。14日に発表した2023年4~12月期連結決算は、純利益が前年同期比2倍の2815億円となりました。海外保険子会社の保険料収入増加に加えて、新型コロナウイルス関連の損失の減少、資産運用益の増加などが寄与しました。
通期予想を上方修正【東京海上】
上昇率2位は「 東京海上ホールディングス 」です。14日に発表した23年4~12月期決算は純利益が前年同期比81%増の5174億円となり、通期予想を前期比79%増の6700億円(従来予想は5750億円)に引き上げました。海外の保険引き受けが好調なことに加え、資産運用益の増加などが寄与する見通しです。
業績改善が相次ぐ
このほか「 SOMPOホールディングス 」は、23年4~12月期最終損益が3230億円の黒字(前年同期は471億円の赤字)に転換。海外保険の保険引受・資産運用両面での利益拡大、国内生損保の前期コロナ支払などの剥落が寄与しました。
「 第一生命ホールディングス 」は、保険料等収入の増加や為替差益などの発生を受けて24年3月期業績予想を上方修正。また、顧客基盤の拡大と非保険領域の強化を目指し、福利厚生アウトソーシングサービスでトップクラスにあるベネフィット・ワンの完全子会社に向けたTOB(株式公開買い付け)を実施しています。
「 T&Dホールディングス 」は、23年4~12月期の最終損益が648億円の黒字(前年同期は1675億円の赤字)に転換。これは、前年同期に海外再保険関連会社で米国金利上昇に伴い発生した一時的な評価性損失等がなくなったことによります。国内生命保険事業の契約業績は、主力商品の販売好調により堅調に推移しています。
政策保有株ゼロに向け売却加速も
MS&ADは22~25年度までの4年間で政策保有株を6000億円削減、東京海上は23~26年度までの4年間で政策保有株を6000億円以上削減する方針を掲げています。SOMPOは傘下の損保ジャパンが現行の中期経営計画で政策保有株を年700億円削減し、30年度までに修正連結純資産比20%以下まで減らす目標に掲げていましたが、次期中期経営計画では削減ペースを再加速して最終的には保有残高ゼロを目指す方針を示しました。これを受けて、MS&AD、東京海上も売却をさらに加速するとみられます。政策保有株ゼロに向け売却が加速することで、更なる資本効率の改善や株主還元の強化が期待され、保険関連株は株式市場での評価が高まる可能性がありそうです。