越境EC市場10倍へ! 物流大手から新サービスも

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中国・韓国などの海外企業が運営する「越境EC(電子商取引)」サイトで日用品や衣料品を購入する消費者が急増しています。物価高で節約志向が強まり、「安くて質も悪くない」品ぞろえが利用者を引き付けています。今回は需要が高まる越境EC関連事業を強化するヤマトホールディングスを中心に関連企業をご紹介します。 

先月2月、格安の日用品などを扱う中国発のECサイト「Temu(ティームー)」の日本での利用者数が1月に1500万人を超え、国内大手EC3社の平均利用者数の半数を超えたとのニュースが流れました。日本に参入したのはわずか半年前。節約志向の広がりもあって、安さを求める若者などの消費者の受け皿になっています。衣料品の「SHEIN(シーイン)」も利用者数を伸ばしているようです。 

低コスト・短時間で配送できるシステムを確立

利用者の増加を背景に、物流企業などで越境EC事業を支援するサービスや取り組みを強化する動きが広がっています。

今年1月、「 ヤマトホールディングス 」は、越境EC事業者が利用できる日本向け海上小口輸送サービスを開始しました。独自開発した輸入通関・保税システム「OBOS(オーボス)」を活用することで通関工程を効率化することがポイントです。

これにより、韓国からは最短4日、中国からは最短5日という早さで日本の消費者へ商品を届けられるようになります。越境EC事業者には、衣料品や化粧品といった小さい貨物を日本へ輸送する際のコストや手間が省けるとともに、販売機会の拡大が期待されます。

さらに同社は2月、ファッションECを運営するシックスティーパーセント(東京・渋谷)に追加出資。同ECにはアジア約10ヵ国のブランドが出店しており、ヤマトHDは越境EC市場の成長を見込み、支援を強化する方針です。

 市場規模は急拡大中、物流や商社など商機探

佐川急便を傘下に持つ「 SGホールディングス 」や「 日本郵政 」のグループも越境EC事業者向けサービスを手掛けています。佐川急便は、海外販売を目指す日本のEC事業者への支援サービスを23年8月に始めました。

物流業界以外にも市場拡大を商機とみて事業に参入したり拡大したりする企業が増えています。「 メルカリ 」は23年10月から、中小企業向けのECプラットフォームでも越境販売ができるようになりました。「 伊藤忠商事 」は23年9月に子会社を通じて中国企業との合弁会社を設立し、中国の衣料品や雑貨を日本に円滑に仕入れる体制を整えています。

経済産業省がまとめた資料(令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告)によると、2030年の越境ECの市場規模は21年時点の10倍となる約8兆ドルに拡大する見込みです。今後の各社の事業戦略が注目されそうです。