”オンリーワン”の価値をつけろ! 急拡大ホテルグループの全貌

読んで分かる「カンブリア宮殿」/ テレビ東京(テレ東BIZ)

カエル先生の一言

この記事は2024年2月23日に「テレ東プラス」で公開された「「贅沢バイキング」から「ほったらかし」まで…廃れた宿が蘇る”オンリーワン”戦略とは:読んで分かる「カンブリア宮殿」」を一部編集し、転載したものです。今回、「カンブリア宮殿」に登場されたのは、マイステイズ・ホテル・マネジメントの山本俊祐会長です。

マイステイズ・ホテル・マネジメント 会長 山本 俊祐(やまもと しゅんすけ)

「ニューアカオ」が再始動~オンリーワン戦略とは?

劇的に復活した静岡・熱海市の「ホテルニューアカオ」。館内では昔懐かしい射的など、昭和の香りがするゲームコーナーが大人気になっていた。海にせり出したテラスで宿泊客が楽しんでいるのは釣り。釣竿はホテルからのレンタルで、気軽に本格的な釣りが楽しめる。さらにはサップやカヤックなどのマリンスポーツも提供。さまざまなアクティビティが客を呼び込んでいる。
かつて一世を風靡した「ホテルニューアカオ」は昭和48年に創業。熱海のシンボル的な宿としてその名を知られたが、社員旅行などの団体客が減り、経営は悪化の一途。新型コロナが追い打ちをかけ、2021年11月に営業を終了した。

そんな宿に再生の手が入る。2023年2月、「ホテルニューアカオ」に仕掛け人の姿があった。マイステイズ・ホテル・マネジメント会長・山本俊祐(46)だ。

念入りにチェックしたのは、ビュッフェスタイルのレストラン。試食も行い「やや大人の味なので、取りやすく食べやすいお子さんが喜ぶものも……」。子どもが喜ぶ食事やアクティビティを増やし、これまで以上にファミリー層にアピールする方針だ。
「昔のままのものを再現するのではなく、当初のファミリーフレンドリーなホテルとして親しまれてきたものを今の時代に発展させるというのがコンセプトです」(山本)

そして7月、「ニューアカオ」は再生の一歩を踏み出した。

オープンの式典で「一度体験したら忘れられないオンリーワンで際立ったホテルにしていきたい」と挨拶した山本。打ち出したのはオンリーワン戦略だ。他にはない“ウリ”を作り、客を集めるのだ。

実際、そんなやり方で山本は多くのホテルの再生を進めてきた。

例えば千葉・白浜町の「白浜オーシャンリゾート」。かつては南房総を代表するリゾートホテルとして営業していたが、2016年、経営不振により売却された。この宿を引き継いだ山本がオンリーワンとして打ち出したのが、海の幸を贅沢に楽しめる「海鮮浜焼きバイキング」。赤海老やホタテを好きなだけ楽しめるようにした。これでリピーターが増え、宿はにぎわいを取り戻した。

栃木・那須町の「ホテルエピナール那須」はもともと5万坪を誇る地域最大級のホテル。2016年、オーナー企業が売却したことに伴い山本たちが取得した。そして敷地内の森を切り開いて作ったのが、ヤギや羊と触れ合える「どうぶつ広場」。人懐っこい動物たちがいっぱいいるなかで、一番人気はアルパカだ。
一方、塩原温泉の「八汐荘」は昔ながらの温泉旅館。25年間続いてきたが、2021年に廃業した。ここのオンリーワン戦略は「『ほったらかしの宿』というコンセプト。『何もおもてなしをしない』が一番の魅力だと思います」(エリア支配人・岡野睦)。

かつては1泊2食付きのよくあるスタイルだったが、接客や料理をなくし素泊まり一泊1人4500円~と料金を下げた。するとキャンプで一泊した後にわざわざ立ち寄ったという夫婦など、以前は来なかった客を呼び込んだ。

山本は既存の施設を活かしながらアイデアを駆使。極力コストをかけずに各地のホテルを再生してきた。

10年で3倍に急拡大~マイステイズ驚きの再生術

東京・六本木にあるマイステイズ・ホテル・マネジメントの本社従業員はホテルのスタッフを含め7000人余り。売り上げは1200億円に上る。親会社はアメリカの投資会社「フォートレス・インベストメント」。マイステイズは「フォートレス」が取得したホテルを再生し、運営している。手がける施設は増え続け、この10年で3倍に膨れ上がった。149棟は国内5位にあたる。

〇マイステイズの再生術1~自前の「リノベーションチーム」

マイステイズには一級建築士を中心としたリノベーションチームがある。だから例えば会議室を客室に変えるといったこともどんどん実現できる。低コストかつスピーディな改修が可能なのだ。

茨城・つくば市で今年4月リニューアル・オープンを目指す「つくばグランドホテル」。筑波山の麓で71年続いた老舗だが、経営不振に陥り、2023年に売却を決めた。その改修を「リノベーションチーム」のリーダー・西澤翔吾が託された。

「屋上にインフィニティ露店風呂をつくろうとしています」(西澤)

インフィニティバスとは縁のない浴槽のこと。もともとある露店風呂を、幅もワイドに広げて、関東平野と境目なくつながる絶景風呂に変えようとしているのだ。

〇マイステイズの再生術2~知られざる名物を発掘

「つくばグランドホテル」の視察後、山本たち一行は居酒屋「庄助」へ行き、この地域の名物料理を片っ端から頼んでいく。茨城名産の「あん肝」や、日本酒のあてに人気の珍味「ゆずみそ」は柚子の中に味噌を詰めて干したもの。極めつきは「きのこ鍋」だ。こうして客を喜ばす隠れた名物を探しだすのだ。

「グルメが何なのかイメージが湧かない地域で特長を出すには、もう一歩踏み込んで実地調査をして、面白いネタを見つける必要があるかなと」(山本)

続いて行った定食屋「ダイニングまつば」では、トンカツの上に水戸納豆が乗った「納豆カツ」に遭遇した。
後日開かれたビュッフェメニューの試食会。地元で見つけた料理の中に「きのこ鍋」や「納豆カツ」もあった。ただしビュッフェで取りやすいよう、トンカツではなく「納豆メンチカツ」に。

「ビュッフェで出すには、糸を引くと汚いのでもう少し研究したいね」(山本)などと改良は必要だが、この2品は4月のグランドオープンで提供することが決定した。

〇マイステイズの再生術3~集客の目玉をつくる

山本が今、特に力を入れているのが全国にブランド展開している「亀の井ホテル」。もともとは日本郵政が簡易保険加入者のために始めた「かんぽの宿」だが、赤字続きで32施設を売却。そのうち29施設をマイステイズが手がけることとなったのだ。

熊本・阿蘇市、阿蘇のカルデラの中にある「亀の井ホテル阿蘇」。このホテルの再生で山本が始めたのは中庭でのプロジェクション・マッピングだ(月2回開催、無料)。表現しているのは阿蘇の四季。夜の中庭に出てもらい、大自然の中にいることを感じてもらう。これで新たな客を呼び込んだ。

目玉には地域性もとり込んでいく。水濠の町、福岡・柳川市にある「亀の井ホテル柳川」ではロビーを出てすぐの場所に船着場を設置。柳川観光の名物、どんこ舟による川下りをホテルのサービスに組み込んだ。
こうした目玉作戦で平均稼働率はかんぽ時代の58.1%(2019年)から78.5%(2023年)と20%アップした。

「各地域の特長は必ずあるので、こういうロケーションや設備はオンリーワンだなと、『泊まらなきゃ損』というくらいの面白さを提供しなくてはいけない」(山本)

原点は学生時代の一人旅~ビジネスホテルにも個性を

山本の自宅の本棚には旅の本がぎっしり。書店が立ち並ぶ東京・神保町にも月に一度は足を運ぶという。

「世界のホテルの本などを読むと、改装のインスピレーションになったりします」(山本)

1996年、早稲田大学法学部に入学した山本は、夏休みや冬休みになると海外に出かけ、行く先々で出会った個性的なホテルに心を奪われたという。

「ヨーロッパを旅すると個人経営や小さいチェーンの個性の強いホテルがいっぱいあって衝撃を受けました」(山本)
卒業後、JPモルガンなどの外資系証券会社で働いたが、「いつか自分でホテルを作ってみたい」という夢は持ち続けた。そんな山本をヘッドハンティングしたのがフォートレス・インベストメント。ホテル事業を始めるにあたり、山本に白羽の矢を立てたのだ。

転職した山本が担当したのは「ウィークリーマンション東京」の買収。その前身は「ツカサのウィークリーマンション」。80年代、1週間単位で部屋を借りられる新しいビジネスモデルで話題になった会社だ。

フォートレスはウィークリーマンションを次々とホテルに変え、ホテル運営の会社も立ち上げた。それがマイステイズ・ホテル・マネジメントだ。

7年前、その会長に抜擢された山本はウィークリーマンションに続き、各地の経営不振に陥ったビジネスホテルの再生に取りかかった。

千葉市の「ホテルマイステイズ蘇我」はどこにでもあるようなビジネスホテルだったが、「何か“ウリ”を」とロビーに作ったのがケーキ店「SONIA COFFEE&CAKE」。専属のパティシエも雇い、オリジナルのケーキや焼き菓子を売り出した。

実はこの周辺にはケーキを食べられるカフェがあまりなかった。そこで毎月、新作のケーキを出すと、近隣からスイーツ目当ての客が来てくれるようになった。ケーキが話題になってホテルの宿泊客も増えたという。

「『またこのケーキが食べたい』と来館する宿泊のお客様もたくさんいるので、カフェがあることによって宿泊にも影響があると思います」(矢内賢太郎マネジャー)

山本のオンリーワン戦略はビジネスホテルから始まった。その一つが札幌市の「ホテルマイステイズプレミア札幌パーク」。市内の中心地にあるホテルだが、ロビーの奥へと進むと、そこには森のような空間の「Farm to Table TERRA」が。人気アウトドアブランドの「スノーピーク」とコラボしたグランピング・レストランだ。
「ローストビーフと温泉卵のピラフ」はアウトドアの定番、熱々のスキレットで出てくる。街中でもグランピング気分を味わってもらおうという趣向だ。

こうして、どこにでもあるビジネスホテルに新名所が生まれた。

223人のシェフが参加~独自の人材活用術

2023年10月、東京・日暮里にあるマイステイズのホテルで山本肝いりのイベントが開かれた。マイステイズのグループホテルのシェフたちが腕を競い、ナンバーワンを決める「料理コンクール」だ。全国から223人がエントリー、予選を経て8人のシェフが決勝の舞台に立った。
今回のテーマは社会課題を組み込んだ「フードロス軽減に向けたメニュー」。魚のヒレや内臓など、ふだんは捨ててしまう部位を使った創作料理が出揃った。審査にあたるのはホテルの常連客や山本を含めた役員たち。味だけでなく見た目やアイデアも吟味する。

優勝したのは、鯛の皮で作った竜田揚げや兜焼きなど、身を使わない「鯛三昧」。他にも評価が高かった料理は今後、各ホテルで提供していくという。
ふだん接点のない料理人たちを交流させるのもイベントの狙いの一つ。競い合い、切磋琢磨する場を作ることでやる気を引き出そうとしているのだ。

また山本は2023年、独自の人材育成の場として「成田・ホスピタリティ・アカデミー」を開設した。

教室に集まったのは外国人。日本のホテルサービスを学びにきた外国人技能実習生だ。これまで製造業などに偏っていた外国人技能実習生をホテル業界に呼び込もうと、始めた。ここで日本語やホテルサービスの基本などを1カ月にわたって学び、現場へ配属される。

3週間前にフィリピンから日本にやってきた、ペラルタ・ダーウィン・タティルさんは「ホテルやレストランのビジネスをしたいです」と言う。日本で3年の実習を終えたら、母国でホテルビジネスを始めるのが夢だ。

12月、マイステイズが運営する静岡・東伊豆町の「熱川オーシャンリゾート」で、ダーウィンさんが働いていた。このホテルでは5人の実習生が夢を追いかけている。

※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

山本さんは学生時代、欧州の小さな宿によく泊まった。庭先に鶏が放し飼いにしてあり、翌日その数が減っていたらしい。料理となったのだが、そのホスピタリティは強い印象に残った。かんぽの宿を加えると、マイステイズの運営受託件数は149物件に。全国のさまざまな立地、施設形態、部屋タイプの需給状況を見られる。つまり今どのようなホテルがどの価格で売れているのか、という情報が膨大にある。だが、その情報の根底にあるのは「放し飼いの鶏」だ。マイステイズ・ホテルのホスピタリティのいちばん底に「鶏」がいる。

山本俊祐(やまもと・しゅんすけ)
2000年、早稲田大学法学部卒業後、外資系証券会社に入社。2005年、オシンホテルズグループ入社。2011年、フォートレス・インベストメントグループ入社。2012年、マイステイズ・ホテル・マネジメント会長就任。

ほかの経済ニュースに興味がある方はこちらでご覧いただけます。

画像提供:テレビ東京