実際に足を運ぶからわかるJ-REITの魅力

ここでしか聞けない!ファンドマネージャーの本音/ 石田 真澄日興フロッギー編集部

日経平均株価が34年ぶりの高値を付けるなか、値動きに力強さが見られないJ-REIT。そうした状況だからこそ、むしろ投資妙味が出てきたという見方もあるようです。今回は「 J-REIT・リサーチ・オープン 」のファンドマネージャーである石田真澄さんにJ-REIT市場の状況や面白さについてお話をお伺いしました。

投資対象は多様化、より分散効果が効いた金融商品に成長

――まずはじめに、J-REITについて簡単に教えてください。

J-REITは不動産投資信託のことで、多くの投資家の方から集めた資金を商業施設やオフィスビル、マンションなどの複数の不動産に投資するものです。そこで得られた賃料収入等をもとに投資家に分配します。
不動産投資信託は、もともとは米国で1960年代に誕生したのですが、その後、日本でも法律が改正され、2001年9月に市場が創設されました。現在では58銘柄(2023年12月末現在)が上場し、時価総額は15兆円まで拡大しています。

――ありがとうございます。いま、J-REIT市場全体に対してどのように考えていらっしゃいますか。

昔のJ-REITと今のJ-REITを比べるとだいぶリスクが減っていると感じています。J-REITが始まった頃は、投資割合の100%近くをオフィスが占めていたのですが、最近ではオフィスは40%を切るぐらいで、あとは物流や住宅、商業などが占めています。つまり、比率が大きく変わってきているのです。そういった意味では、分散の効果が昔よりもきちんと効いている金融商品になってきたと感じています。

足元の価格という面で見ると、市場全体として配当の減配はなく、不動産価格も上がっている、とプラスの要素が多いのですが、J-REITは安くなっているんですね。日経平均が市場最高値を更新しましたが、東証REIT指数はコロナ禍の前の水準ですら回復していないのです。これは、金融政策やオフィス需要に対する漠然とした不安などが相まって、この結果になっているかと思います。ですが、実態はイメージと大分違う状況なので、J-REITの実力からするとコロナ禍前の水準に回復する可能性は十分にあると考えています。

NAV倍率とは、J-REITの1口当たり投資口価格が1口当たり純資産額に対して何倍かを示すものです。NAVとは純資産額を意味する英語のNet Asset Valueのこと。J-REITに投資する際に、投資口価格が純資産額と比較して割高か割安かを判断する指標の一つとして利用されています。当倍率が1.0以上であると純資産価値でみて割高、1.0未満であると割安との目安になります。過去の平均値は1.14倍(2003年12月~2024年1月の平均値)となっています。

J-REITの面白さ

――J-REIT投資の面白さについて、伺えますか。

J-REITの市場はすごく大きくなっていて、持っている不動産の金額で言うと23兆円(2023年12月末現在)あるんですね。日本各地にJ-REITの物件がありますが、エリアでいえば東京や大阪、名古屋に集中していて、その他一定数が地方の政令都市や県庁所在地にあるような感じです。つまり、人が集まっているエリアにJ-REITの物件が存在していて、自分がそのオーナーと思えるところが面白さで、またそう考えればJ-REITってそんなに悪いものではないと思えるのではないでしょうか。

また、J-REITは投資法人が続く限り、半永久的に大家さんとして運営を続け、その収益を分配するスキームになっています。ですから需要の低い場所に物件を持つと長い目で見て続かない、そういったリスクを感じられるのもある意味面白さと言えるのではないでしょうか。例えば、JAPAN-REIT.COMが運営している「REIT DB – 物件検索」というwebサイトがあって、J-REIT物件を簡単に検索できるんですよ。駅名を入れて徒歩何分圏内にある物件を調べると、それがネットの地図上に表示される。そうした情報を見ると僻地にはJ-REITの物件はないことから、J-REITの物件はしっかりと考えられて選択されていることを感じられると思います。

実際に足を運ぶからこそ得られる情報がある

――「J-REIT・リサーチ・オープン」の特徴はどういったところにあるのでしょうか。

J-REIT・リサーチ・オープンは、国内の取引所に上場しているREITだけを投資対象としているファンドです。運用の特徴として、ミクロとマクロ、双方の観点から銘柄を選定している点があります。

ミクロ的な観点では、ファンドマネージャーによる実地調査をきちんと行うことを心がけています。J-REITの銘柄選定についても、その実地調査を踏まえた上で配当や収益、今後どういったパフォーマンスになるのかといった分析のもとで判断していますね。

他方でマクロ的な観点で言うと、そうした地道な作業だけでは「木を見て森を見ず」といった事態にもなりかねないということで、不動産に特化したシンクタンクである三井住友トラスト基礎研究所の投資顧問部から、マクロ的な観点や個別銘柄の分析について、投資助言としての情報提供を受けています。ちゃんと自分の目で見ること、そしてマクロ的な観点がミックスされているのがこのファンドの特徴です。

――他のファンドとの違いについて、教えてください。

そうですね、やはり実際に物件を見に行くことを重視している点です。見ることで不動産の固有の特性が把握できるというのはあると思います。その上で、銘柄の持つ不動産が適切な価格で取得できているかどうか、競争力の長期の維持が可能かどうか、この観点で考えることを意識しています。長い目で見て競争力が落ちていく可能性が高い、つまりリスクが高いものに関しては、そういうものをそもそも持たない。そういった姿勢が長期的にプラスの効果に繋がると思っています。

それから、もうひとつ挙げるとファンドの特徴として「割安感」を重視しているという点は言えると思います。主に配当利回りが相対的に高いものを狙い、インカム収益性の面を強く見ていいますね。

逆に言うと良い銘柄であっても割高な、つまり過度に人気化していて配当利回りが低い銘柄は持たないようにしています。悪い銘柄は持たないし、過度に買われている銘柄も持たない。そうした銘柄は減らしていって割安なものに入れ替えていく、そういった運用を意識しています。

駅から物件までの間に何があるかを見る

――先ほど実地調査を大切にするというお話がありましたが、そのことに対する想いをお聞かせいただけますか。

そうですね、このファンドに対して「ちゃんと物件を見てほしい」という期待があると思っています。「住宅」を例にして説明しますと、自分が住むマンションを買うときは、専門家に頼んでマンションを探したり評価してもらったとしても、それだけで買うことはおそらくないと思います。自分なりに納得した上で購入を決めますよね。ただ、今やJ-REITは4600以上の物件から構成されています。この確認をファンドマネージャーに代わりにやってもらう、そして銘柄選定に活かしてほしいという期待がお客様にはあると思っています。

私自身、チームのメンバーも含めて一度物件を見に行き、長い時間をかけて理解を深めてその運用を引き継いでいくといったことを意識しています。

――特にどういったところに重きを置いて実地調査を行っているのでしょうか。

やはり紙で見ただけでは捉えられない情報が実地調査によって得られます。具体的にいえば、その町や地域がどのような成り立ちなのか、どのような人が住んでいるのか、産業の集積の程度はどれぐらいなのか。さらに個別では、隣の建物や道路の状態、坂の有無、メインテナンス状況など、こうしたことは地図からではわかりにくいんですよね。

それから、本当に些細な気づきなのですが、駅から徒歩5分以内なのにコンビニなどの利便施設がひとつもない、などの情報は実際に足を運ばないと意外と気づかないものです。ですから地道に調べること、できればそこに住んでいる方の生の声、情報を聞いてさらに調べるという部分が大切だと思っています。

――今後どういったファンドに成長させていきたいと思っているか、ファンドに対する想いを教えてください。

市場の平均のインデックスを持つよりJ-REITのアクティブファンドを、そしてその中でも、現地、現物、現実の3現主義をモットーとするこのファンドが長い目で見てもプラスになって来ているということを、より多くの方にお伝えして、J-REITを持つならこのファンドだと思ってもらえるようにしていきたいと考えています。

また、J-REITの市場が結構変わってきていることもお伝えしたいです。2001年の市場創設当時のJ-REITと比べて大きく異なっているんです。具体的には内部留保をはじめ、制度の変更に伴って自己投資口の取得ができるようになったこと、そして何より20年経過したことで含み益をちゃんと持っている状態にあることが、一番の違いと思っています。これらを踏まえて、各REITの運営は昔に比べて相当自由度が高くなっていると思います。我々はその点も踏まえて銘柄選定をしていくことが大切ですし、象徴となるようなファンドに成長させていくチャンスはあると感じています。

――最後に、どんな人にJ-REITにチャレンジしてほしいですか。

今で言うと、株がすごく堅調だと思うんです。そういった中で、株に対して「ちょっともういい頃合いにきたかな」とお考えの方におすすめしたいです。REITはインカムゲインを主体に長い目で収益が積み上がるといった性質がある一方、株式投資はインカムが少なくて売却益を狙うといった部分に重きを置いているので、その点で切り替えを検討している方には向いていると思います。

いまJ-REITの運営はそれほど悪くない中で、J-REITの利回りは4%台にあります(東証REIT指数加重平均利回り4.73%(2024年2月16日現在))。そういった中で新NISAもスタートしました。REITは大家としての感覚で考えるとじっくり、長い目でNISAを利用してお任せでやっていこうと考えている方にはおすすめと思います。