株式市場で「ゼネコン」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は4.8%と、東証株価指数(TOPIX、0.6%高)を上回りました(3月8日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します。
大林組が株主還元を拡充
ゼネコン関連株が買われるきっかけになったのは、大林組が3月4日に発表した資本政策の見直しです。ROIC(投下資本利益率)を中期的に5%以上とする目標を達成するため、資本効率性を重視した戦略的な株主還元などで、2026年度までにROE(自己資本利益率)10%の達成を目指すとしました。また、配当については目安としてDOE(自己資本配当率)を3%程度から5%程度に引き上げました。
DOEとは企業が自己資本に対して、どのぐらいの配当を支払っているかを示す指標です。配当の目安としては、純利益に対する配当額の割合を示す配当性向が一般的です。ただ、純利益は変動が大きいため、業績が下振れすると減配リスクが大きくなるという特徴があります。一方で、DOEでは変動が小さい株主資本を基準にするため、減配リスクなどを小さくすることができる利点があります。
大幅増配で配当性向8割超へ【大林組】
上昇率首位は「 大林組 」です。株主還元方針の変更に伴い、2024年3月期の期末配当を51円(従来予想は21円)へと大幅に引き上げ、DOE5%に相当する年72円配(前期実績は年42円配)としました。業績予想に基づく配当性向は87.5%にも達する見込みです。
配当性向25%程度、中長期的には30%も【大成建設】
上昇率2位は「 大成建設 」です。配当政策に関しては、長期的な安定配当を基本方針としつつも、業績が好調な時は特別配当などにより株主に利益を還元するとしています。中期経営計画(2021〜23年度)の配当性向は25%程度、中長期的に目指す「TAISEI VISION 2030」では配当性向25〜30%を掲げています。
飛島建設は総還元性向50%以上を目指す
「 飛島建設 」は2024年10月に持株会社体制に移行する計画と併せて、中長期経営ビジョンを発表。安定的な配当と継続的な自社株買いで総還元性向50%以上(2028年度)を目指す方針です。 「 鹿島 」は中期経営計画(2021〜23年)で配当性向30%を目安に、業績や財務状況などを勘案し、自社株買いなどで機動的に株主に利益を還元することを基本方針としています。「 清水建設 」は中期経営計画(2019〜23年)で安定配当(普通配当20円)の維持を基本方針としつつ、成長により得た利益を連結配当性向30%を目安に還元する方針を示しています。
新中期経営計画での株主還元方針に注目
ゼネコンは横並び意識が強い業界とされ、大林組が株主還元の拡充方針を示したことで同業他社も何らかの動きがあるのではないかと期待されています。2023年を中期経営計画の最終年度に設定していた企業は、4月末からの決算発表以降に新たな中期経営計画を打ち出すとみられます。既存の中期経営計画で掲げてきた配当性向を引き上げるのか、大林組のようにDOEを新たに設定するのか注目です。建設コストの増加などで業績下振れリスクへの警戒感が強まりつつあるだけに、積極的な株主還元に踏み切る企業が相次ぐと、さらに好感されそうです。