マイナス金利解除も買い安心感 「総合不動産」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株/ QUICK

株式市場で「総合不動産」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は14.1%と、東証株価指数(TOPIX、5.7%高)を上回りました(3月22日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

日銀利上げも、「緩和的な金融環境」維持の見込みで安心感

日銀は3月19日まで開いた金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決定し、17年ぶりに政策金利を引き上げました。日本の金融政策は正常化への道を歩み始めたものの、当面は緩和的な金融環境が続く見込みが大きく、長期金利は安定しています。一般的に有利子負債の比率が高いとされる不動産業にとっては、支払金利の負担増加に対する過度な警戒感が後退し、買い安心感が広がったようです。

3期連続最高益見込み、インド事業にも期待【住友不動産】

上昇率首位の「 住友不動産 」は、首都圏を中心にオフィスビル賃貸やマンション販売を手掛けます。2024年3月期の経常利益は前期比6%増の2500億円と3期連続で過去最高を更新、10期連続での増配を見込んでいます。

近年は経済成長が著しいインドの再開発事業に積極的で、総投資額は23年10月時点で約7000億円にのぼります。ムンバイ中心部のワーリー地区に約8万平方メートルの土地(総延床100万m2を超える”超高層複合都市開発プロジェクト”)を取得しており、30年代までに施設の全面開業を目指しています。

「ポイント進呈」の株主優待制度新設を好感【三井不動産】

上昇率2位の「 三井不動産 」は、3月1日に株主優待制度の新設を発表しました。25年より、3月末を基準日として100株以上保有する株主を対象に商業施設や公式通販サイトで使える「三井ショッピングパークポイント」を付与します。長期保有者には追加ポイントを付与する方針です。株主還元の強化などを好感した買いも入り、22日にかけて連日で上場来高値を更新しました。

 オフィス回帰の動きが追い風に、海外事業の拡大

このほか「 東急不動産HD 」は23年12月に開業したオフィスや住宅を含む複合施設「Shibuya Sakura Stage」をはじめ、渋谷区周辺の再開発事業が好調です。

オフィス仲介の三鬼商事によると東京ビジネス地区のオフィス空室率は2カ月連続で平均5%台と約2年半ぶりの低水準が続き、東京駅周辺などにオフィスビルを保有する「 東京建物にも買いが優勢となっています。

野村不動産HD 」は31年3月期までの中期経営計画で海外事業の着実な成長を掲げ、3月18日には英国・ロンドン中心部のオフィスビルを取得したと発表しました。これらの銘柄も買われています。

 「インフレヘッジ」として高まる不動産需

日銀が大規模金融緩和策を修正した背景の1つには、日本経済のデフレ脱却期待があります。22日に総務省が発表した2月の全国消費者物価指数(CPI)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比2.8%上昇し、23カ月連続で日銀の物価目標である2%以上で推移しています。インフレ時に価格が上昇し、「インフレヘッジ」としての効果が見込める不動産の需要は今後も高そうです。

不動産関連では、昨年も空室率の上昇一服に加えインフレ定着期待を背景にオフィスビル関連株が上昇しました(『空室率に改善の兆し 「オフィスビル」関連株が上昇)。「総合不動産」関連株の投資にあたっては、政府の「デフレ脱却宣言」など国内経済の先行きに対する見方が焦点となりそうです。