マリオが再び世界へ!相乗効果見込むキャラクタービジネス

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3月10日、米アカデミー賞で宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞を受賞。日本の漫画やアニメ、ゲームといったソフトパワーが改めて注目を集めました。

漫画やアニメ、ゲームの中の登場人物は、世界のキャラクタービジネスの舞台でも主役を演じています。今回は、トレードマークの口ひげでお馴染みの人気ゲームシリーズ「スーパーマリオ」を制作している任天堂を中心に、キャラクタービジネスを展開する各社の取り組みをご紹介します。

カエル先生の一言

漫画やアニメ、ゲームは、内容・中身という意味で「コンテンツ」、文化的に相手を魅了する力があるという意味で「ソフトパワー」ともいわれ、それらを制作する産業が「コンテンツ産業」です。コンテンツに登場する人物やモノが「キャラクター」で、知名度や人気のあるものは「IP(知的財産)」と位置付けられます。IPに裏付けられ、ライセンス契約や商品化をする事業が「キャラクタービジネス」です。

ゲームを飛び出すキャラクター、「マリオ」は映画でも稼ぎ頭

米動画配信大手のネットフリックスが「ONE PIECE(ワンピース)」に続いて「幽☆遊☆白☆書」の制作に乗り出すなど、日本の漫画作品の実写化が相次いでいます。コンテンツ配信で各社がしのぎを削るなか、魅力的な作品作りは欠かせません。視聴者を引きつけるのに知名度の高い漫画やアニメ、ゲームはIP(知的財産)の宝庫となっています。

こうした中、「 任天堂 」は3月10日、スーパーマリオの新作映画を2026年4月に公開する予定だと発表しました。スーパーマリオの映画といえば、2023年に公開した「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が大ヒット。ゲーム原作作品として世界興行収入が過去1位となりました。

ヒットを支えたのがゲームの世界観を大事にした映画作りです。スーパーマリオの生みの親で同社代表取締役フェローの宮本茂氏が映画作りに参画し、マリオファンの期待を裏切らない世界観の実現につながりました。

スーパーマリオは、映画の人気だけでなく、業績面でも貢献しています。23年4~12月期の任天堂の連結売上高は1兆3947億円、このうち「モバイル・IP関連収入等」の売上高は752億円とごくわずかですが、前年同期と比べた伸び率は93%増と急拡大しています。

「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」のヒットを受け、任天堂は23年11月に「ゼルダの伝説」の実写映画化を発表しています。現時点では公開時期は未定ですが、プロデュースには引き続き宮本氏が参画。マリオのヒットではゲームの旧作が売れるなどの波及効果もあり、「ゼルダの伝説」の成否は今後のIPビジネスの成長を占う試金石にもなりそうです。

日本には有力IP企業が豊富、事業戦略の中核にも

ゲーム以外でも日本のコンテンツ産業は世界的に人気が高い作品がたくさんあります。「 バンダイナムコホールディングス 」が手掛ける「機動戦士ガンダム」、「 IGポート 」の「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」と海外でも認知度が高い人気IPを保有する企業が多く存在します。また、「 TBSホールディングス 」と「 松竹 」は資本業務提携でアニメ制作やキャラクター開発を強化していく方針を1月に発表しました。

コンテンツそのもののヒットと版権で一石二鳥が狙えるキャラクタービジネスは今後も盛り上がりが期待でき、エンターテインメント企業の事業戦略の中核を担う存在になっていきそうです。