軽くて曲がる太陽電池 「ペロブスカイト」関連株が上昇

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株式市場で「ペロブスカイト太陽電池」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は2.1%と、東証株価指数(TOPIX、1.6%安)に対して逆行高となりました(3月29日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

再生可能エネルギー拡大で「次世代の有望技術」

「ペロブスカイト太陽電池」は再生可能エネルギー拡大に向けた「次世代の有望技術」として注目度が増しています。室内などの弱い光でも発電でき、軽くて曲がるのが特徴で、従来の太陽電池と比べて生産コストの抑制も期待されています。 

世界の市場規模が2035年には1兆円に達するとの予測もあり、現在は国内外の企業が実証実験などを進めている段階です。市場の関心が徐々に高まりつつある中で、3月28日のテレビ番組でペロブスカイト太陽電池を発明した桐蔭横浜大学の宮坂力教授が国産品の販売を来年中に始める意向を示し、早期の実用化に向けた期待が高まりました。

電池主原料のヨウ素を手掛ける【伊勢化学工業】

上昇率首位の「 伊勢化学工業 」はペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素の生産販売を主力事業としています。同社はヨウ素を約20カ国に供給し、同社のヨウ素の生産量のシェアは国内で45%、世界で15%を誇ります。ペロブスカイト太陽電池の実用化に伴うヨウ素の需要増加で収益が拡大するとの期待が高まっており、3月29日まで上場来高値を連日で更新しました。

ヨウ素のほか、株主還元強化にも注目【K&Oエナジーグループ】

上昇率2位の「 K&Oエナジー 」も主力事業の一つとして、ヨウ素の生産販売を手掛けています。ヨウ素のシェアは国内で15%、世界で5%を占めています。伊勢化学工業と同様にK&Oエナジーグループの株価も上昇基調にありますが、PBR(株価純資産倍率)は1倍に届いておらず、株主還元の強化など資本収益性の向上に向けた経営戦略が今後示されるかも注目されそうです。 

太陽電池部材メーカーにも注目高まる

トヨタ自動車グループの「 アイシン 」は自動車部品が主力ですが、ペロブスカイト太陽電池の実用化にも取り組んでおり、25年の実証実験に向け開発を進めています。「 フジプレアム 」も京都大学と連携し、ペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでいます。「 積水化学工業 」もペロブスカイト太陽電池を、ビルなどの外壁に設置する実証実験を23年4月から始めています。いずれもペロブスカイト太陽電池が普及すれば、収益の拡大が見込めるとの期待が高まりました。

強固なサプライチェーンの構築が鍵に

ペロブスカイト太陽電池は中国などの海外企業も実用化や量産を急いでおり、競争の激化が見込まれます。ペロブスカイト太陽電池のサプライチェーン(供給網)構築に向けて、経産省は24年度予算案に計548億円を計上し、日本勢の生産体制の確立を後押ししています。ペロブスカイト太陽電池の製造に関わるメーカーがライバルとなる海外勢との競争に対して強固なサプライチェーンを構築できるかどうかが、収益拡大に向けた鍵を握りそうです。