日銀の「マイナス金利解除」から読み解く次の投資テーマ

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は、日銀の「マイナス金利解除」と、その背景から読み解く「個人消費関連銘柄」にスポットを当てます。

カエル先生の一言

半導体株の上昇などにより4万円台を回復した日経平均。そんな中、日本銀行はマイナス金利の解除に踏み切りました。金融政策がどう変わったのか、これからどんな銘柄が相場の主役になりそうなのかを紐解きます。

3月の日本株市場

3月29日の日経平均株価は4万369円、前月末比1203円高でした。3月19日に日本銀行がマイナス金利を解除し、政策金利を0〜0.1%程度に引き上げました。大企業を中心に賃上げなどが進んだことから、17年ぶりの利上げに踏み切った日銀。ただ、「当面緩和的な金融環境は継続する」と植田和男総裁が発言したことで、その後のマーケットは円安・株高トレンドが続いています。

日銀が修正した「3つの政策」

3月の日銀金融政策決定会合で決められたのは政策金利の変更だけではありません。大規模な緩和策の代表的なものである長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール=YCC)と呼ばれる政策も終了しました(ただし、長期国債の買い入れそのものは継続)。

また、「量的緩和」の象徴的な追加策でもあったETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)などリスク資産の買い入れも終了することが決まりました。

これら政策は、金利を低位安定させることで資金を調達しやすくしたり、投資家のリスク許容度を引き上げる効果がありました。

実質賃金は夏にプラスに転換?

日銀がマイナス金利解除に踏み切った理由の1つに、「実質賃金」のプラス転換が見えてきたことが挙げられます。実質賃金とは、企業が従業員に支払う「名目賃金」から物価(インフレ率)の影響を取り除いたものを指します。

消費者物価指数(除く生鮮食品)は2023年1月をピークに、鈍化傾向にあります。一方で、名目賃金はプラス圏を維持し、足元のベア(賃上げ)により、今後さらに上向くことも想定されます。そのため、長らくマイナス圏が続いている「実質賃金」がプラス圏に浮上する可能性が高まってきているのです。

実質賃金のプラス圏浮上は、すなわち家計に余裕資金が生まれ、消費に還元される可能性が高まることを示唆します。GDPの約6割を占める個人消費に回復の芽が出るならば、まずは国内の個人消費関連銘柄に恩恵が及ぶことが想定されます。

国内消費関連銘柄

国内の消費に関連する企業の中でも、すでに「インバウンド銘柄」として業績が好調な銘柄があります。たとえば、「 三越伊勢丹HD 」や「 高島屋 」、「 Jフロント 」などの百貨店です。こうした企業が取り扱うサービスは、国内の個人消費の受け皿になります。また、「国外+国内」の両輪で消費を取り込めることから、多くの関連銘柄の株価がすでに上昇しています。

他にも、材料費高騰などによりコストが上昇した分を価格転嫁し先んじて値上げを実行している企業などでは、すでに業績に好影響がもたらされている企業もあります。そうした企業の製品・サービスは、値上げをしても代替するものが少なかったり、ブランドが確立されていることが多いため、今後さらに値上げをする可能性があります。個人消費の盛り上がりにより、さらに売れ行きが好調となれば、こうした企業の業績も上積みされる可能性があります。ぜひ身の回りの製品やサービスなどから、関連企業を探してみてください。

アサヒグループHD
キリンHD
サッポロHD
東洋水産
日清食品HD
味の素
オリエンタルランド
マクドナルドHD

半導体株への期待から4万円台を回復した日経平均。次の相場の主役となるのは、今回ご紹介したような個人消費関連銘柄かもしれませんね。