株式市場で「石油開発・精製」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均騰落率は3.6%と、東証株価指数(TOPIX、2.4%下落)に対して逆行高となりました(4月5日までの5営業日の騰落)。関連5銘柄とその背景について解説します!
原油価格が5カ月ぶり高値
石油開発・精製関連株が買われたきっかけは原油価格の上昇です。中東情勢の緊迫を背景に、ニューヨーク・マーカンタイル取引所で原油価格の指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の先物価格が一時1バレル=87ドル台と、約5カ月ぶりの高値を付けました。
石油元売り会社は、石油備蓄法によって多くの石油を備蓄しているため、期末の在庫評価額が利益を大きく左右します。原油価格が上昇すると在庫評価益が計上されるほか、ドル建てで取引されているため円安に振れても利益が増えることになります。現状の原油価格と円相場の水準は業績面でプラスに作用するとみられます。
出光興産が筆頭株主に【富士石油】
騰落率首位は石油元売りの「 富士石油 」です。3月中旬に石油元売り大手の出光興産が、富士石油の株式を取得して筆頭株主になると発表。住友化学の保有する富士石油株をすべて取得し株式保有比率が13.04%(従来は6.58%)に上昇しました。
富士石油は資本関係の強化を踏まえ、出光興産との既存燃料油事業の競争力強化および2050年のカーボンニュートラル時代を見据えた取り組みの協業深化に関する協議を進めるとしています。
保守的な前提【INPEX】
上昇率2位は資源開発最大手の「 INPEX 」です。2024年12月期の連結業績予想の前提は、油価は北海ブレントが1バレル=73ドル、為替は1ドル=138円となっています。北海ブレントは主にイギリスの北海にあるブレント油田から採鉱される硫黄分の少ない軽質油ですが、価格はWTIとの連動性が強く、約半年ぶりに90ドル台を回復しました。
同社の油価が1ドル上昇した場合の影響度は60億円の増益要因、為替が1ドル=1円円安に振れた場合は24億円の増益要因となっています。会社側の保守的な前提を踏まえると、現状の水準が続けば業績の大幅な上振れが期待できそうです。
業績上振れ期待
その他の企業の24年3月期の諸前提は、「 石油資源 」はWTIが1バレル=75.6ドル、為替は1ドル=141.42円。「 出光興産 」はドバイ原油が1バレル=83.6ドル、ブレント原油は1バレル=83.2ドル、為替は1ドル=140.50円。「 ENEOS 」はドバイ原油が1バレル=84ドル、ブレント原油は1バレル=85ドル、為替は1ドル=141円です。いずれも、現在の相場は会社前提を上回っており、業績上振れが期待されます。
原油高はしばらく続く可能性
イエメンの反政府勢力「フーシ」による紅海での商船への攻撃などもあり、年初から原油価格の上昇基調が続いています(『原油高で収益上振れ期待 「石油開発・精製」関連株が上昇』)。そのなか、イスラエルがイランなどに対する軍事行動の強化を示唆したことを受けて中東で紛争が拡大し、原油供給に影響が広がるとの懸念が強まっています。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は、サウジアラビアなどによる日量220万バレルの減産目標を維持する方針を示していることを踏まえると、原油高はしばらく続く公算が大きいとみられ、石油開発・精製関連企業の動向が注目されそうです。