三菱商事【8058】最も影響を受ける資源とは? の話と今後重要な事業の話

日興フロッギー版 妄想する決算/ 妄想する決算

カエル先生の一言

音声メディア「Voicy」で、「10分で決算が分かるラジオ」を毎日配信中の「妄想する決算さん」が、日経225・グロースコア・スタンダードコアの企業を1社ずつ取り上げる人気連載を日興フロッギー版としてスタート! 読むだけで、知らず知らずのうちに主要な株価指数に採用されている企業についてわかるようになる決算解説。日興フロッギー版ならサクっと5分でチェックできます!

統合報告書2023
三菱商事が分かるショートムービー(youtube.com)
2022年度決算及び2023年度見通し 説明会資料
ホームページ「会社概要」
個人投資家セミナー(大阪)(2023年12月18日)説明会資料
2023年度決算第3四半期決算説明会資料
2018年度決算(IFRS)公表補足資料
2024年3月期第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結)
2022年度決算第3四半期決算説明会資料

※以下の解説で使用したスライド及びデータは、三菱商事株式会社の「統合報告書2023」「三菱商事が分かるショートムービー」「2022年度決算及び2023年度見通し 説明会資料」「ホームページ 会社概要」「個人投資家セミナー(大阪)(2023年12月18日)説明会資料」「2023年度決算第3四半期決算説明会資料」「2018年度決算(IFRS)公表補足資料」「2024年3月期第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」「2022年度決算第3四半期決算説明会資料」より引用しています。

今回取り上げるのは、5大商社の1つで、その中でも最も売上規模が大きい三菱商事株式会社です。

事業内容と業績のポイント

それではまず事業内容から見ていきましょう。
三菱商事の主力の事業セグメントは以下の通りです(統合報告書2023 P135参照)。

①天然ガスグループ:LNG関連など
②総合素材グループ:鉄鋼関連や機能素材など
③化学ソリューショングループ:石油化学や基礎科学分野など
④金属資源グループ:原料炭や銅関連など
⑤産業インフラグループ:船舶・宇宙航空機や産業機械など
⑥自動車・モビリティグループ:いすゞ自動車や三菱自動車、三菱ふそうなど
⑦食品産業グループ:鮭鱒養殖など
⑧コンシューマー産業グループ:ローソンなどの小売りやアパレルやヘルスケア、食品流通・物流など
⑨電力ソリューショングループ:発電所など電力関連
⑩複合都市開発グループ:都市開発関連

多様な事業を展開している事が分かると思います。

これまでの事業の変遷を見ると、商社のイメージの通りで、もともとは資源のトレーディングの事業で成長してきました(統合報告書2023 P22、23参照)。2000年代に入りバリューチェーンの変化が進む中で、鉱山なども含め多様な事業投資を行う企業へと変化し、積極的な投資を行うようになりました。そして2018年以降は投資だけでなく、積極的にその事業の中に入り、主体的に価値を創造し成長していく事業経営に力を入れています。

こうした中、事業内容も多岐にわたります。約90ヵ国に120を超える拠点と約8万人の従業員を有するグローバル企業です(三菱商事が分かるショートムービー(YouTube.com)参照)。投資先も非常に多く、子会社の傘下の企業も含めて数えると、計460社で(2022年度決算及び2023年度見通し 説明会資料 P22参照)、全体では1815社の連結対象会社があります(ホームページ会社概要参照)。そのうち、黒字会社が341社で74.1%、赤字会社が119社で25.9%です。
今回は全事業の概略をおさえていきたいと思います。

2022年度のセグメント別での「一過性要因を除いた純利益」の構成比率は以下の通りです(2022年度決算及び2023年度見通し 説明会資料 P17参照)。

①天然ガスグループ:15%
②総合素材グループ:5%
③石油・化学ソリューショングループ:4%
④金属資源グループ:40%
⑤産業インフラグループ:3%
⑥自動車・モビリティグループ:13%
⑦食品産業グループ:6%
⑧コンシューマー産業グループ:2%
⑨電力ソリューショングループ:5%
⑩複合都市開発グループ: 4%
⑪その他:3%
※構成比率は執筆者の妄想する決算氏が算出したデータ

金属資源グループが4割を占める主力事業で、それに続くのは天然ガスグループです(個人投資家セミナー説明会資料 P9参照)。この2事業で利益の5割以上を占め、資源系事業の利益の規模が大きいことが分かります。

三菱商事2023年度3Q決算説明会資料より

三菱商事2023年度3Q決算説明会資料より

また、いすゞ自動車や三菱自動車、三菱ふそうなどを抱えている自動車・モビリティグループも一定の規模を持っています。海外比率も高いですからグローバルでの自動車市場の影響も受けます。

三菱商事2023年度3Q決算説明会資料より

その他にも一定の利益の規模がある食品産業グループは、鮭鱒養殖などを主力としていて、水産相場の影響もあります

主力事業の金属資源グループについては、原料炭や鉄鉱石、銅やアルミの鉱山にも出資していて、その後のトレーディングや加工・製造まで事業を行っています(統合報告書2023 P24参照)。トレーディングを除くと、現在の収益構造で大きいのは原料炭で、3/4ほどを占めています(統合報告書2023 P85参照)。それに次いで規模が大きいのは銅で、そこから鉄鉱石と続きます。原料炭の相場に特に業績が左右されやすい構成です

三菱商事2023年度3Q決算説明会資料より

主要な投資先としては、原料炭はオーストラリア、銅はチリやペルーです。

三菱商事2023年度3Q決算説明会資料より

2番目に大きな利益の規模を持つ、天然ガスグループで取り扱うのはLNG(液化天然ガス)で、アジア民間企業では最大のLNGプレイヤーです(個人投資家セミナー説明会資料 P10参照)。現在もカナダでは建設中の新規プロジェクトもあり、生産能力の拡大も進んでいます。LNGの相場にも業績が左右されやすいということです。三菱商事の業績は原料炭や銅、LNGなどの相場に大きく影響される事が分かります。

三菱商事は各国で投資と回収を繰り返しながら事業を行っているため、どのような資産を抱えているかということも重要です(統合報告書2023 P138、139参照)。主要なカントリーリスクの内訳を見ると、リスクマネー残高が大きいのは、金属資源グループ関連の投資先があるペルーやチリなどの中南米やLNGの投資先があるインドネシアなどのアジアです。

リスクマネーの規模を見ても、資源関連の投資先が大きく、資産面からも資源関連の動向が重要な企業だと分かります。もちろん現在は非資源系の事業にも力を入れていますが、今後に関しても資源系の事業で大きな成長を目指しています。

2024年度までの中期経営計画の投資計画を見ていくとEX(エナジートランスフォーメーション)関連が1.2兆円で最大で、銅や天然ガス、再エネや次世代エネルギーなどへの積極的な投資を計画しています(個人投資家セミナー説明会資料 P16参照)。

特に今後拡大を目指すのは銅です。主力の金属資源グループでは将来的には、銅含め電化関連(電力関連)の金属の事業の比率を半分まで上げていこうとしています(統合報告書2023 P85参照)。というのも銅は、金属の中で銀の次に電気を通す一方で、安価であることから、モーターや変圧器、電線など多様な電力関連の用途に使われています。

今後、脱炭素など「グリーン化」が進む中で、再エネやEVの普及など電力の活用が増えていく事が見込まれています。これに伴い、銅の需要の拡大も見込まれています。国際銅協会によると、世界の銅供給は2035年まで年間26%増え、リサイクルの拡大を考慮しても供給不足となる事が見込まれるとしています。市場の大きな成長が見込まれますから、そういった中で銅関連の事業を拡大していけるかに注目です。

また、2024年度までの中期経営計画の投資計画ではDX・成長投資関連も8000億円ほどを計画し、注力しています(個人投資家セミナー説明会資料 P16参照)。

スマートシティの運営や、地域インフラ整備なども進めていこうとしていますので、こういった取り組みにも注目です。

長期的な業績の推移を見ていくと、2000年代後半からは利益を拡大させ、その後は増減ありつつ横ばい傾向でした。そして、コロナ禍では一時的に業績を悪化させていますが、ここ2年は非常に好調で過去最高益を2年連続で更新しています(統合報告書2023 P22、23参照)。

2023年3月期のセグメント別の純利益の額と、コロナ禍前の2019年3月期→2023年3月期での変動は以下の通りです(2018年度決算(IFRS)公表補足資料 P4、2022年度決算及び2023年度見通し 説明会資料 P13参照)。

①天然ガスグループ:1706億円(+563億円)
②総合素材グループ:620億円(+267億円)
③石油・化学ソリューショングループ:450億円(+92億円)
④金属資源グループ:4393億円(+4284億円)
⑤産業インフラグループ:319億円(+881億円)
⑥自動車モビリティグループ:1275億円(+303億円)
⑦食品産業グループ:634億円(+535億円)
⑧コンシューマー産業グループ:230億円(▲85億円)
⑨電力ソリューショングループ:619億円(+288億円)
⑩複合都市開発グループ:1233億円(+909億円)
※参照資料を基に執筆者の妄想する決算氏が、増減を算出

事業全体で成長していて企業としても拡大が続いている事が分かりますが、特に大きな成長を見せたのは④金属資源グループです。そして利益の規模が大きい①天然ガスグループも大幅増益と、資源系事業が好調になっています。その要因はやはり相場変動による影響です(2022年度決算及び2023年度見通し 説明会資料 P15参照)。

2024年3月期の市況の変動による業績への影響の見通しは、以下の通りです。

ドル円:1円あたり50億円
原油:1バレル1ドルあたり15億円
銅地銀:1トン100ドルあたり29億円
原料炭:非開示
鉄鉱石:1トン1ドルあたり6.9億円

原料炭は非開示ですが、金属資源グループで最も事業規模が大きいです。原料炭価格が上昇する中で金属資源グループは2019年3月期比で大幅増益となっていますから、その影響は非常に大きいと考えられます。事業も拡大が続き、さらに円安も進み、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などもあり資源相場が高騰する中で市況の後押しがあり、2022、2023年の3月期は非常に好調だった事が分かります。

2024年3月期では、資源相場は高値圏を維持するものの、2023年3月期からは下落しています。

高水準の利益は期待できるものの、業績の悪化が予想されます。

また、投資やその売却を繰り返していますので、売却による好影響や反動も業績に影響を与えます。2024年3月期のセグメント別の業績の見通しを見ると、電力ソリューションでは海外発電事業の資産売却益による大幅増益を見込み、一方で複合都市開発事業では不動産運用会社の売却益の反動による大幅減益を見込んでいます(2022年度決算及び2023年度見通し 説明会資料 P14参照)。こういった事業や資産における投資や売却の状況を見ることも、商社の業績を見る際には重要です

ここまでのまとめ

・事業内容は多岐にわたり、そのセグメントは10種
・主力事業は、金属資源グループと天然ガスグループで、利益の5割以上を占める
・いすゞ自動車や三菱自動車、三菱ふそうなどを抱える自動車モビリティグループ、鮭鱒養殖などが主力の食品産業グループも利益に貢献
・EX(エナジートランスフォーメーション)関連で成長を目指し、銅や天然ガス、再エネや次世代エネルギーなどへの積極的な投資を計画
・DX・成長投資関連にも注力
・投資先のカントリーリスク、様々な事業で関連する相場環境等、業績に影響する変動要因は多数あり、幅広い
・事業ごとの資産における投資や売却の状況にも注目

直近の業績

三菱商事の概要についてある程度分かったところで、直近の業績を見ていきましょう。
今回見るのは、2023年度の第3四半期までの業績です。

売上高:14兆7056億円(▲9.7%)
税引き前利益:1兆52億円(▲25.2%)
純利益:6966億円(▲27.1%)※親会社の所有者に帰属する四半期利益

減収減益で業績は悪化しています(決算短信を参照)。

三菱商事2023年度3Q決算説明会資料より

セグメント別の純利益の前期比は、以下の通りです。

①天然ガスグループ:+135億円
②総合素材グループ:▲61億円
③化学ソリューショングループ:▲180億円
④金属資源グループ:▲1682億円
⑤産業インフラグループ:+56億円
⑥自動車・モビリティグループ:+12億円
⑦食品産業グループ:▲258億円
⑧コンシューマー産業グループ:+168億円
⑨電力ソリューショングループ:+169億円
⑩複合都市開発グループ:▲894億円

業績悪化が大きい複合都市開発グループでは、先ほど見たように不動産運用会社の売却による反動や、北米不動産市況の悪化があり大幅減益となっています。

三菱商事2023年度3Q決算説明会資料より

一過性要因を除いた、複合都市開発事業の純利益は前期比で▲116億円と悪化はしているものの、他の事業と比べると小幅です。また、一過性要因による影響は、前期比で計▲699億円となっています。事業売却の反動など一過性要因の影響もあり、前期比では大幅減益に繋がっていました。なお、純利益と「一過性要因を除いた純利益」で共に最も大きな減益となったのは金属資源グループです。

市況の前期からの変化は以下の通りです(前期のデータは、2022年度決算第3四半期決算説明会資料 P13を参照)。

ドル円:136.51円→143.33円
原油(バレル):97ドル→83ドル
銅地金(トン):8395ドル→8324ドル
原料炭(トン):323ドル→280ドル
鉄鉱石(トン):116ドル→108ドル

三菱商事2023年度3Q決算説明会資料より

円安の好影響は続いていて、銅地金は微減ですが、原油や、鉄鉱石、原料炭は大きく下落しています。

先ほど見たように、原料炭の影響は非開示で、金属資源グループの減益にも複合的な要因がありますので具体的な影響はさておき、その影響の大きさが分かります。また、銅地金相場は微減にとどまっています。銅市場が成長市場だということもあり、他の資源と比べると相場も堅調です。相場の安定する銅事業の拡大は収益の安定にもつながると考えられますので、銅関連事業の成長には、やはり注目です。

三菱商事2023年度3Q決算説明会資料より

業績は前期比では悪化していますが、それは前期が非常に好調だった反動で、純利益は過去2位となる高水準にあります。

資源相場も前期比では悪化するものの、高値水準で推移していますし、円安は続いていますので、通期でも三菱商事は高利益水準を維持する事が期待されます。今後の市況の変化には注目です。

※この連載は、ウェブサイト「note」で連載されている「妄想する決算」を日興フロッギー版として、一部を再編集して掲載しています。
※「日興フロッギー版」では、解説のポイントがわかりやすいようにマーカーを付けています。
※「日興フロッギー版」では、解説に使用したデータの参照元を記載しています。
※「日興フロッギー版」では、画像による説明は決算発表会資料に集約し、それ以外は、データの参照元を明記しています。
※「日興フロッギー版」では、用語解説を追加しています。
※「日興フロッギー版」では、「事業内容と業績のポイント」について「まとめ」を追記しています。
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