1,000兆円超の債券市場から銘柄を厳選する「泰平航路」

ここでしか聞けない!ファンドマネージャーの本音/ 三好 紀子日興フロッギー編集部

インフレが落ち着き始め、海外の金融市場では金利に下がる余地が出てきました。こうしたなか「 コーポレート・ボンド・インカム(為替ヘッジ型/1年決算型)(為替ノーヘッジ型/1年決算型)  愛称:泰平航路1年決算型(以下、泰平航路)」は米ドル建ての社債に特化して投資をしています。今回は、チーフ・インベストメント・オフィサーでファンドマネージャーの三好紀子(みよし のりこ)氏にその運用の特徴や想いをお伺いしました。

債券投資の仕組みと魅力

――債券投資の仕組みと魅力についてまず教えてください。

債券は国や自治体、民間企業などが資金を調達するために発行する有価証券のことです。債券を購入すると、発行体が倒産しない限り、元本が戻ってくるほか、発行体から利息(クーポン)が支払われます。企業が発行する社債は、一般的に国が発行する国債等に比べて信用力が低いため、金利が上乗せされ相対的に高い利回りが期待されます。

債券は発行体がデフォルト(債務不履行)しない限り、利息と元本の支払いが約束されているという点で、株式に比べてリスクが低い投資商品だと考えられています。株式投資のように大きな値上がり益は期待できませんが、相対的に安全性が高く、安定した利息収入が得られるのが債券の特徴です。

最近では日経平均がバブル時の最高値を更新したこともあり、株式などのリスクが高めの資産にご関心を持っている方も多いと思います。しかしながら、何らかの金融ショックが起きた場合、リスク資産が崩れ株式の保有だけでは大きな損失を招く可能性があります。そのため安全に資産を形成する上で、株式と債券に分散して投資することはとても有効な手段だと思います。通常、株式市場が崩れるような相場環境では、金利が低下して債券価格が上昇しやすくなります。債券を持つことによって、資産運用に対する安心感が増えるのではないかと考えます。

投資適格級の社債に特化した運用と、きめ細かい企業分析

――本ファンドの特徴について教えてください。

私たちが運用している泰平航路は格付機関からA(シングルA)と格付けされた社債を中心に、BBB−(トリプルBマイナス)以上の投資適格級の社債を組入対象としているのが大きな特徴です。また、それぞれの社債も償還まで持ちきるのではなく、信用リスクとその時々の金融環境や、保有債券の相対的魅力度、ファンド全体のリスクの増減などによって入れ替えます。さらに、組み入れる債券の残存年数についても重視しており、例えば2023年の米国の利上げ局面では金利が上昇しやすい環境であったため、保有債券の残存年数を少し短くして金利変動リスクを低減させました。

ちなみに債券の格付けとは、発行体の信用度などに応じて、第三者の格付け機関がランク付けしたものです。以下の例でいうと、AAA(トリプルA)が最も信用度が高く、C(シングルC)が最も信用度が低い格付けということになります。

――個人投資家に馴染みやすい銘柄も多く含まれているように感じました。

はい。泰平航路では、エスティローダー、マクドナルド、アップル、ウォルト・ディズニーなど、馴染みのある企業の社債も多く含まれているほか、全発行体を開示をしているので「自分のお金がどういった社債に投資しているのか」を把握しやすくなっています。月次レポートや運用報告書を見ていただければ、投資先もご理解いただきやすいのではないかと思います。

※2024年3月末現在の当ファンドの保有銘柄に言及していますが、今後も保有し続けるとは限りません。また、当該銘柄を推奨するものではありません。
――業種としてはどういったところを中心に組み入れているのでしょうか。

5割以上を「安定業種」に投資しています。現在「安定業種」として選定しているのは消費、公益、通信の3つの業種です。この商品設計により、相対的に安定したパフォーマンスが見込まれるというメリットがあります。また、米国企業だけではなく、米ドル建てで社債を発行している国際企業も投資対象に含めているのも特徴です。

――個別企業に対する情報収集はどのように行っていますか。

今投資している発行体について、当社の内外の拠点にいるクレジットアナリストがしっかりと分析を行っています。具体的にはクレジット市場および業種分析や、個別銘柄分析を行います。また、発行体と面談するなど現地調査をなるべく実施することを心がけています。その際に、発行体が借金(負債)を返済できるかどうかといった能力面はもちろん、発行体の経営陣に「返す意思」があるかどうか、健全な財務戦略を行っているかも分析します。

投資先の企業が健全な経営戦略を持っていないと体力以上にお金を借りてしまい、返済能力が低下してしまいます。ちゃんと返そうと思っていれば、むやみに借金だけ膨らますことはないですよね。発行体の負債返済能力と意思をきちんと分析するようにしています。

そもそも米国の社債に投資するメリットとは

――日本人が国内ではなく米国の社債に投資するメリットについて、教えてください。

米国の社債に個人投資家の方が投資するメリットとしては、大きく以下の3つが挙げられます。

・金利水準の高さ
・流動性の高さ
・銘柄数の多さ

欧米金利は日本よりも相対的に高いことから、社債の金利水準も高い傾向にあります。つまり、国内の債券に投資するよりもインカム収入を多く得られることになります。

そして、米国は社債市場規模が大きいことも特徴です。日本の事業債市場が約90兆円であるのに対し、米国は約1,113兆円と12倍以上の規模があります(2023年12月末時点)。世界中から市場参加者が集まる流動性の高い市場であることはもちろん、様々な業種・分野の企業の債券が取引されています。

2024年こそ債券の年

――いま、米ドル建ての社債に投資する意味や、メリットについて教えてください。

インフレを抑制するために行われていたFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げサイクルが終了し、FRBもECB(欧州中央銀行)も利下げに転じることが予想されます。利下げに転じれば、保有債券の利回りが低下することで社債価格が上がり、基準価額の上昇余地が高まります。ただし、為替についてはリスクがあるので、ご自身のポートフォリオでどういった為替リターンを追求したいかによって、投資家の皆様が為替ヘッジのあり・なしを選択できるように、泰平航路では双方をそろえております。

――ありがとうございます。最後に、債券投資にチャレンジしようと思っている人に対して何かメッセージを頂けますでしょうか。

これから日本が短期金利を引き上げたとしても、米国との金利差が大幅に縮小するとは考えにくく、潜在成長率の高さや、新しいビジネスが創造されやすい米国の魅力は変わらないのではないかと思います。したがって、米ドル建て社債の相対的な魅力は、今後も継続すると思います。

企業のビジネスモデルが多様化する中、私たちは”柔軟な対応を行える持続可能な企業”であるかどうかに重点を置いて調査、選別をしているため、末永く安心してお持ちいただけるファンドと考えております。皆様の大切なご資産の「安定運用」の一助となれば幸いです。