明るい見通しと株主還元 「総合商社」関連株が上昇

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株式市場で「総合商社」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は6.4%と、東証株価指数(TOPIX、2.4%高)を大きく上回りました(5月2日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

成長見込みの「非資源分野」

株価上昇のきっかけは、5月初めに行なわれた2024年3月期の決算発表です。エネルギー価格の下落などで資源分野は低調だったものの、自動車生産の回復などで非資源分野が伸びるとして、明るい見通しを示しています。同時に積極的な株主還元策を発表した企業が相次いだことも投資家に好感されました。

成長と還元の両立に期待【双日】

上昇率首位の「 双日 」は5月1日、2025年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比9%増の1100億円になりそうだと発表。年間配当金も150円(予想)と、前期の135円から引き上げました。 

同時に示した27年3月期を最終年度とする新しい中期経営計画(中計)では、株主資本に対する配当の割合を示す株主資本配当率(DOE)を4.5%とする累進的な配当方針を開示。株主還元に積極的な姿勢が好感されました。 

今期500億円規模の自社株買い【住友商事】

上昇率2位の「 住友商事 」も27年3月期連結決算(国際会計基準)を最終年度とする新中計で、総額7000億円を株主還元に充てると発表し、総還元性向40%以上や累進配当の導入を目標に掲げました。還元の一環として、25年3月期に500億円規模の自社株買いを予定しています。

同社を巡っては、4月28日、アクティビスト(物言う株主)の米エリオット・マネジメントが数百億円規模で株を取得したと伝わりました。株主還元の強化などに期待した買いが入り、決算発表前から株価が上昇していました。 

先行き期待で物色

丸紅 」は2日に、前期比2%増の4800億円となる25年3月期の連結純利益(国際会計基準)予想とともに、500億円規模の自社株買いを発表しました。「 伊藤忠商事 」は25年3月期の総還元性向50%をめどとする方針を4月に発表しています。「 豊田通商 」は25年3月期連結純利益(国際会計基準)6%の増益を見込んでいます。いずれも明るい見通しや株主還元の姿勢が好感されました。 

資本効率の改善進む

総合商社は、著名投資家ウォーレン・バフェット氏による5大商社株の保有や、東証による「資本コストや株価を意識した経営」の要請などを背景に、資本効率の改善を目指す動きが鮮明です。住友商事や丸紅の社長は決算説明会で、ROE(自己資本利益率)を高める姿勢を改めて強調しました。 

その中、株価は20年8月のバフェット氏による株式取得の公表や、22年の資源価格の高騰による業績好調期待などで上昇(『最高益更新も!エネルギー高で「総合商社」が上昇)、その後PBR(株価純資産倍率)は多くが1倍超に上昇し、割安感が薄れてきています。総合商社が成長投資と株主還元のバランスをどのように取っていくのか、動向を注視しながら投資先を見極めたいですね。