空飛ぶクルマ「eVTOL」 軽量化のカギ握るモーターに脚光

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「空飛ぶクルマ」の商用化に向けた動きが加速しています。日本では2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)での導入が予定されており、目玉の1つとして注目されそうです。今回は、空飛ぶクルマに搭載されるモーターの中核企業であるデンソーを中心に、関連企業の取り組みをご紹介します。 

電動モーター軽量化で注目されるデンソー

昨年11月14日、ドイツのベンチャー企業Lilium(リリウム)が、同社の開発する「eVTOL(電動垂直離着陸機)」である『Lilium Jet』の開発で、「 デンソー 」から技術支援を受けると発表しました。

リリウム社が手掛ける『Lilium Jet』は、飛行効率の高さで注目されており、その高い飛行効率を可能にしている基幹部品が電動モーターです。

多くのeVTOLは、1つのローター(回転翼)が故障しても残りのローターで安全に着陸できるよう複数装備されています。複数のローターを装備するため、ローターの数に応じて増えるインバーターや電動モーターなどを組み合わせた電動推進ユニットを軽量化することが航続距離を延ばすカギとなります。

『Lilium Jet』に搭載される電動モーターは、デンソーと米航空機装備品大手ハネウェル・インターナショナルが共同開発。モーターの主要部品に熱伝導性の高い素材を使って冷却性能を高めるなど工夫を凝らして軽量化に取り組んでいます。他社製品比10倍以上ともいわれる1キログラム当たり25キロワットの出力密度を実現して業界を驚かせました。

11月に発表されたリリウム社との技術支援では、『Lilium Jet』向け部品の大規模生産の最適化や、大量生産のための自動化を行なうとされています。

他の自動車関連企業でも開発や技術提携が本格化

その他にも、自動車製造でノウハウを持つ日本企業の間で、eVTOLの開発や提携に取り組む動きが本格化しています。

トヨタ自動車 」が出資する米ジョビー・アビエーションの「S4」はスペック値や飛行実績でエアタクシー向けeVTOLの本命と注目されています。

本田技研工業 」は「ホンダジェット」など航空エンジン開発に関連する知見を活用。ガスタービン発電機とバッテリーによる電力でモーターを駆動させる「ハイブリッドeVTOL」を開発し、航続距離の長期化を目指しています。

航空機製造を祖業とする「 SUBARU 」は「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」でコンセプトモデルを公開しており、実用化も視野に検討を進めています。

スズキ 」は3月、SkyDrive(スカイドライブ、愛知県豊田市)と万博への提供を予定している空飛ぶクルマの機体の製造を開始したと発表。製造に加え、インド市場の開拓でも協業する計画です。

ニデック 」は23年にブラジルの航空機メーカーのエンブラエルと合弁会社を立ち上げ、モーター開発に着手。

大阪・関西万博での導入をきっかけに商用化が予想される「空飛ぶクルマ」eVTOL。中核部品の一つであるモーターに強みを持つデンソーを中心に、日本の自動車企業が取り組みを本格化させており、成長市場として注目されます。