野菜比率を上げるには、経験と技術が必要です【前編】

発表!あの会社の気になるランキングNo.1!/ 日興フロッギー編集部

シリーズ全体の年間売上300億円超え! 1995年に誕生したカゴメ『野菜生活100』は「野菜ジュース=飲みづらい」というイメージを一変させ、日本人の野菜不足解消に貢献してきました。26年連続国内野菜飲料のブランドシェアNo.1に君臨するブランドの「売れ続ける理由」とは? 同社マーケティング本部の土岐晃彦さんに伺います。

カエル先生のデータバンク

今回は、カゴメ株式会社の主力ブランド別売上収益ランキングを発表!
※2023年12月期決算説明会資料P37 主力ブランド別売上収益より

第3位 野菜一日これ一本(127億円)
30品目の野菜を350g分使用した濃厚トマト味が特長。2004年の発売当初から野菜本来のおいしさと野菜摂取感のある味づくりに拘り続けている一本です。”保存できる野菜”でもあり、賞味期間は360日。万が一の際でも、野菜本来のおいしさをお届けするのだそう。
第2位 トマトジュース(156億円)
1933年にカゴメが日本で初めてトマトジュースを発売してから90年以上が経っています。発売当初からジュースに適したトマトの品種改良や技術革新を重ね、契約農家とともに安定的な栽培に取り組み、時代が変わっても、変わることのない、おいしさと健康価値を守っています。
第1位 野菜生活100(374億円)
トマトの会社というイメージが強いカゴメですが、実は1位は、「野菜生活100」でした。

発売当時より原料の人参がおいしくなっています

ーー1995年に発売した「野菜生活100」は野菜ジュースの先駆けとのことですね。開発の背景をお聞かせください。

スタート地点は「摂りたいけれど、なかなか摂れない野菜不足の解消」でした。一日分の生野菜を食べるのは大変ですし、1990年代当時の野菜飲料といえば、飲みやすいとはいえないトマトジュースやニンニクを効かせた野菜ジュースでした。健康でいたいし、野菜をもっと摂りたい、でも難しいーー。そのギャップをおいしく解消できたら喜ぶ人がたくさんいるのではないか、という声が社内で上がったんですね。

その数年前、弊社は人参100%ジュースを発売しており、フルーティで飲みやすいと評判でした。ここに果実を加えれば、多くの方にとっておいしく飲みやすい野菜ジュースになるのではないか、との案から開発がスタートしました。当初含まれていたのは、8種類の野菜と3種類の果実でした。また1本で1食分の野菜、というコンセプトではなく、「野菜不足をおいしく解決できる」をメッセージにした「野菜生活100」が誕生しました。

1995年発売。発売当初は缶入りでした

発売翌年にはカゴメ創業100周年を目前に、「野菜飲料を国民健康飲料に」というミッションを掲げています。イメージしたのは、冷蔵庫を開けると牛乳の隣に野菜ジュースのパックが並んでいる光景です。以降、シリーズは定番4種だけではなく季節限定商品やスムージーなどラインナップを拡充してきました。

ーー定番のリニューアルは10回以上されたとか。当初は「野菜:フルーツ」の比率は50%ずつでしたが、やがて野菜比率60%になり、昨年には同70%にアップ。野菜比率を上げるために苦労もあったのでは?

「野菜生活100」の歴史は、野菜と果実の比率やブレンドを鍵に、「時代にあった”みんなにおいしい”」を追求してきたと言えるのかもしれませんね。味の中心になる人参の原料は、そのクセになるにおいが少ないものを選ぶために、世界各地で採れる人参を分析したり、香味を評価しています。産地や土壌の影響により、味わいは変わってきます。

人参は特徴的な青臭い香りを持ちますが、ジュースにすることでその成分を生人参に比べて99%減少させる技術も確立しています。野菜と果実をバランス良く組み合わせ、甘味やコクを心地よく感じられるに至るには、長年、試行錯誤してきた経験の蓄積があります。

マーケティング本部飲料企画部2グループ課長の土岐晃彦さん

もちろん、野菜比率の10%アップには繊細な作業行程が必要でした。

野菜をおいしく、という根底にあるコンセプトは変わりませんが、各野菜の比率を上げ下げすればOKという単純な話ではありません。たとえば、定番の一つである「野菜生活100 ベリーサラダ」は、紫野菜に葡萄をミックスしています。野菜比率を上げていく中で「果実の味わいが薄れてしまうと、何の味だかわかりづらくなってしまう点に苦労しました。野菜と果実のバランス、口の中で絶妙に広がる地点を目指すのですが、これが難しいんです。

今まで飲んだことがない方にも喜んでいただけるように、またヘビーユーザーの方のご期待も裏切ることのないようにーー。思い描くお客様を丁寧に分ける形で、味覚調査を3度繰り返しました。「リニューアル前の方がよかった」という声が上がることのないよう、慎重に取り組んでいます。

ーー味そのものはこの30年間で少しづつ変わってきているのでしょうか?

原型を残しつつ、時代の流れを取り入れています。2023年のリニューアルを例に挙げると、飲料全体のトレンドが「すっきり無糖」の方に流れてきているんです。食事中に飲んでも邪魔にならない飲みごたえがありつつも、すっきりとした味わいが理想です。「甘いから野菜生活100はちょっと……」とならないように、野菜と果実の味わいのバランスを整えています。

ただ、「野菜生活100」は果実のおいしさも支持される大事なポイントです。甘さを気にしすぎて果実の存在を削り過ぎるとリピーターの方が離れてしまう。「前と違う」と違和感を持たれるようではダメです。ここは本当にさじ加減で、開発に苦労するところです。

この春も期待の新商品が目白押し

野菜ジュースは健康飲料のトレンドに影響を受けやすい!?

ーー時代の流れとのことですが、野菜ジュースはブームの影響を受けやすいそうですね。

「家族全員が気軽に楽しめる手軽な健康方法」として、体調管理や食事バランスへの関心が世の中で高まると、需要の受皿になりやすいです。特に「野菜生活100」は、果実がミックスされているため野菜が苦手な方や、お子様でも飲みやすく、最初に手に取りやすい商品だと思います。ここ数年は在宅期間が増えたこともあり、1リットルのファミリーサイズの売上が伸びました。

一方で受皿が広い分、健康意識が高い方は「野菜100%」の方を選ばれます。また気分転換が重視される風潮になると、別のカテゴリーが選ばれるようになるーーと、トレンドの影響を受けやすいブランドでもあります。

健康領域の中でも、どこにトレンドが向くかでブームが来たり、遠ざかったり……。それを繰り返しながら成長してきた、というのが現場の体感です。ひと昔前でいえば”野菜ジュース”という土俵の上での勝負だったのが、昨今では”健康”という括りの中で、野菜飲料以外のカテゴリーと綱引きをするような感覚でいます。

また、飲み心地にもブームがあります。最近では、室内でこもることが多かった環境から解放されたい反動なのか、気分爽快になりたいというムードですね。たとえば炭酸飲料のようなキリっとした後味が今は嗜好されています。

また、弊社ではこのところトマトジュースがすごく伸びていますね。健康意識で選んでくださっている従来からのお客様に加えて、糖質が少なく飲み心地はすっきり、体内を綺麗にしてくれる、と美容の観点からも注目されています。

ブームの波を受けつつトップシェアを誇る「野菜生活100」

とはいっても「野菜ジュース100」がカゴメのトップブランドであることは変わりません! シェアは年々大きくなっています。野菜飲料市場での金額シェアは35%、もう少し間口を広げ野菜果実ジュース全体では、68%に上っています。

「野菜一日 これ一本」とはユーザー層が異なる

ーーカゴメには「野菜一日 これ一本」などほかにも人気の野菜ジュースがあります。どのように棲み分けていますか?

ユーザー層が異なるんです。

「野菜生活100」は、10代から60代の幅広い層にご支持いただいています。それに対し「野菜一日 これ一本」は、「人間ドックで引っかかってしまった」「ダイエットを考えなきゃ」など具体的な健康不安をきっかけに飲み始め、習慣化していただく方が多いですね。年齢層では中高年が中心でしょうか。

飲み心地も「野菜一日 これ一本」の場合、トマトの濃厚な味わいで一日分の野菜を使用している、という摂取感があります。人によっては飲みづらさを感じるでしょうが「これくらいじゃないと摂っている感がしないんだよね」というユーザーさんも多いです。

一方、「野菜生活100」は野菜ジュースのエントリーモデルという立ち位置です。ラインナップも幅広く、その時々の好みでチョイスしやすい。まずは気軽に飲んでもらおうという狙いがありますね。購入率でいえば「野菜一日 これ一本」が10%程度であるのに対し、「野菜生活100」は30%とより多くの人に飲まれていることがわかります。

「野菜生活100」特有の現象としては、一旦離れても再び飲み始めてくださる方が多いこと。子ども時代に飲んでいたけれど、青年期になると炭酸やコーヒーなど他の飲料に流れてしまう方もいます。けれど、一人暮らしを始める頃に野菜不足を感じ再び手に取ってくださったり。さらに、家族ができて「子どもに飲ませよう」と今度は大容量サイズを購入してくださったり。一人ひとりの野菜生活に寄り添い、大きくなってきたブランドだと感じています。

カゴメで味のバリエーションも一番多いブランドですので、後編ではフレーバー開発の裏側をお話したいと思います。

カエル先生のデータバンク

カゴメの創業は1899年。農業を営んでいた創業者・蟹江一太郎氏が西洋野菜の栽培に着手、最初のトマトの発芽を見たことに始まります。以来、「自然の恵みである農産物の価値を活かして、人々の健康に貢献したい思い」を商品に込め、トマトソースからはじめた調味料、ジュース等を消費者に届けてきました。100年を超えるその歴史は、時代のニーズに応えるためにこれまでなかった商品を開発しつづける「技術革新」の歴史でもあります。

土岐 晃彦(とき あきひこ)さん
マーケティング本部 飲料企画部 2グループ(「野菜生活100」のMGR)。2006年に食品メーカー入社(マーケティングを中心に担当)し、2019年にカゴメに入社。「野菜生活100(レギュラー)」「野菜生活100 Smoothie」「野菜生活Soy+」「野菜生活100Care+」の商品企画とプロモーション戦略立案を経て、新領域である植物性ミルクの企画を担当。2023年10月より現職。
カゴメ
次回は5月21日(火)配信予定です。