おいしさと野菜摂取感の両立がカゴメの凄さです【後編】

発表!あの会社の気になるランキングNo.1!/ 日興フロッギー編集部

シリーズ全体の年間売上300億円超え! 1995年に誕生したカゴメ「野菜生活100」は「野菜ジュース=飲みづらい」というイメージを一変させ、日本人の野菜不足解消に貢献してきました。27年連続国内野菜飲料のブランドシェアNo.1に君臨するブランドが「売れ続ける理由」はどこにあるのか? 同社マーケティング本部の土岐晃彦さんに伺います。
野菜比率を上げるには、経験と技術が必要です【前編】を読む

果物が収穫できない? ピンチの時の社内会議

企業のランキング1位商品を生み出す現場を徹底取材する「発表! あの会社の気になるランキングNo.1!」。今回は、カゴメ株式会社の「野菜生活100」。後編では、数ある野菜ジュースの中で、なぜカゴメの商品が選ばれるのか、さらにその理由に迫ります。

ーー「野菜生活100」はカゴメの中でも最多のラインナップ数ですよね。今まで開発した商品は100を超えるそうですね。

そうですね、マイナーチェンジも含めると、100以上あります。現在、「野菜生活100」は定番商品のほかスムージーや季節限定品など、35種類以上の商品を展開しています。ただし、原点である野菜摂取感と果実のおいしさは不変です。

「野菜生活100」はバリエーションも35以上ある

売上は定番4種(オリジナル、ベリーサラダ、マンゴーサラダ、アップルサラダ)で半数を占めていますが、中でも2006年に発売した紫色の「野菜生活100 紫の野菜」は話題になりました。

当時、紫人参は色素用の原料しかなく飲料用に使ったのはカゴメが国内外でも初めてでした。今では紫の野菜飲料は美容にいいというイメージも定着し、女性に人気がありますね。一方、「野菜生活100 アップルサラダ」は野菜嫌いのお子さんにと、定番でも想定するターゲットは少し異なりますね。

課題は、パッケージに果物を大きく出しているからか「オリジナルより野菜摂取量が劣るのでは?」と思われてしまうこと。定番4種はすべて「一食分の野菜」を使用しています。これは声を大にして言いたいですし、しっかりと訴求していきたいところですね。

定番商品はすべて一食分の野菜を使用している

ーー「野菜生活100」は地方創生にも熱心です。季節限定シリーズがきっかけで、注目されるようになった地方名産品もあるそうですね。

2012年に発売した「野菜生活100 瀬戸内レモンミックス」ですね。立ち上がりから好調で、広島ではその後レモンブームが起きました。季節限定シリーズは楽しみにしてくれている方も多いんです。「青森りんご」のように毎年恒例で出す商品もありますし、その他年に1~3種は新しいフレーバーを送り出しています。

農家さんやサプライヤーさんとやりとりする中で、「このフルーツ果汁で『野菜生活』を作りませんか?」など、現地発の提案も頂いています。まさに今、2025年のラインナップを詰めている最中なんですよ。

とはいえ、収穫の時期は本当にハラハラします。農家さんは、生果用の出荷量をみながらジュース用を検討します。不作のため「ジュース用の果汁まで手が回らなくなってしまった」というケースも起こりうる。

また、カゴメ社内には「野菜生活100」以外にも複数の果汁飲料があります。そうなると、社内で取り合いではありませんが、お客様への影響を考慮しつつ「使用ブランドを絞る」「別の果汁に差し替える」等の話し合いが始まります。

実を言えば、この秋冬のブドウや柑橘系は綱渡り状態でした。調達量に不安がある場合には、たとえば、同じブドウの中で複数の品種をリストアップしておきます。その状態で搾汁量の結果を待つ。この時期は本当にハラハラしますね。

ひやひやする場面もありますが、これまで「野菜生活100」のラインナップに穴が空いたことはありません。調達力もカゴメの強みの一つ。長い時間をかけ、サプライヤーさんと信頼関係を築いてきたのが重要なベースになっていると感じますね。

「味の想像がつかない」商品は手に取ってもらえない

ーーシリーズとして発売はしたものの、不発に終わった商品はありますか?

2008年に発売した「野菜生活100 野菜とヨーグルト」というフレーバー、こちらの撤退は早かったですね。ちょうどヨーグルト市場が伸びてきた時期で「朝食にヨーグルトと野菜を同時に摂ろう」という着眼点から開発しました。が……、売れませんでした。

味には自信がありましたが、蓋を開けると味がどうという以前の問題でした。「混ぜ合わせになじみがない」「味の想像がつかない」ものは消費者に手に取ってもらえないことがよくわかったケースです。

ちなみに、この逆の例でいえば豆乳とフルーツをミックスした「シルキーソイ」というフレーバーがありました。こちらは発売時期が震災と重なり生産が続けられない状況になってしまいましたが、豆乳と果物は混ぜ合わせて食べる方も多い。「味の想像がつく」ということで手に取ってもらえた商品でしたね。

ーーファンの多いスムージーも、2015年のスタート当初はラインナップに試行錯誤があったとか。

スムージーは当時、海外の専門店で流行っていて、そのトレンドを持ってきたものです。「自宅で気軽に飲めるような習慣を根付かせたい」というのが着手のポイントでしたね。

当初は、大きな柱に育つとまでは想定していませんでした。最初に、カップタイプで「マンゴー&ピーチ」を試験的に発売し、その後「ベリー」と続けましたが、手ごたえは「まぁまぁ」程度。「野菜生活100」のレギュラーシリーズとは異なる若年層に受けている兆しはありましたが、爆発的なヒットになるとは誰も思っていませんでした。

しかしその後、米国本場のスムージーで支持されている素材を研究したり、さらに健康価値を訴求したことで、「豆乳バナナ」「グリーン」が大ヒットしました。

キャップ付きの容器との相性も良く、「ヘルシースナッキング」(編集部註:普段の食事を軽めにして、健康的な間食を適度に摂ることで、極度の空腹状態を作らず食べすぎを防ぐ、という新習慣)という、野菜飲料では新しいポジションを築くことに成功しました。こうして最終的に『野菜生活100』の二本目の柱になるようなシリーズに成長しました。

「野菜生活100」第二の柱であるスムージー

先ほどお話しした「野菜とヨーグルト」も味に問題はありませんでしたが、早々に撤退を決めました。一方で、スムージーはなぜ再トライしたのか?

それは、ほんの一部でも”拾い上げるべき声”があるかどうかですね。売上はイマイチだったとしても「この声を太くするにはどうするか?」という角度で考える。定量的にお客様の声を拾い、SNSの商品チェックは欠かさない。そうやってマーケットで伸びそうな可能性をいつも探っています。

第三の柱を作れ! 今年は大人の「野菜生活100」を訴求

ーー先日、大人の「野菜生活100」という裏テーマの商品が新発売になりました。このアイデアは土岐さんも関わっているそうですね。

2019年に「野菜生活100」の担当になりましたが、先人たちが築いた圧倒的な基幹品なので身が引き締まる思いでした。同時に自分の代で新しい「野菜生活100」を作りたかった。第一の柱が定番の「野菜生活100」で、第二の柱はスムージー。続く第三の柱でユーザーの幅を広げたい。「野菜生活100」は「甘いから飲まない」と敬遠する方もいますが、そうした方たちにも飲んでもらえるような商品を開発したいんです。

3月に発売した「野菜生活100 レモンサラダ」は糖質30%OFFでスッキリ甘くない「野菜生活100」です。皮ごと搾っていて苦味も感じられる仕上がりです。唐揚げに絞るレモンのように、食事にも合うように味覚設計をしています。大人の「野菜生活100」というイメージで作っています。

また、同時期に「野菜生活100 グリーンサラダ」という、葉野菜を軸にした商品も発売しました葉野菜メインのおいしいジュースは難しく、これまでも葉野菜の摂取感と飲みやすさのバランスをどう取るのかで苦戦してきた歴史があります。

かつては「良薬口に苦し」の路線でえぐみを売りに出したのですが、その時はリピーターがつきませんでした。そんな反省を活かし、新商品では洋梨と白ブドウの組み合わせで華やかな味わいに仕上げました。

食事にも合う「野生生活 レモンサラダ」と「野菜生活グリーンサラダ」

2024年の「野菜生活100」の売上予測ですか?

もちろん、No.1は食事にも合う大人の味の「野菜生活100 レモンサラダ」です(笑)。No.2はこちらも新商品で立ち上がりから好調な「野菜生活100 ベリー&ざくろスムージー」。No.3は「野菜生活100 グリーンサラダ」でしょうか。今年は「野菜生活100」の新章が始まる幕開けの年になると思っています。

ーー他社の野菜ジュースにはない、カゴメならではの強みを改めてお聞かせください。

他社さんの野菜ジュースもよく飲みんで、研究しています。手前味噌ではありませんが「フルーティーさ」と「野菜の摂取感」を両立できているのは、カゴメだけだと思いますね。甘さか摂取感か、どちらかに振っているものが多いんです。甘さを重視するあまり野菜を摂っている感が乏しかったり、逆に摂取感が強すぎて飲みづらかったり。

フルーティでありながら野菜摂取感がコクという形で結実しているのはカゴメだけだと思います。この点が、「野菜生活100」の購入率やリピーターの多さなど、数字に大きく効いているポイントだと考えています。

カエル先生のデータバンク

カゴメは、2025年のありたい姿を「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」と定めています。農業から生産・加工・販売と一貫したバリューチェーンを持つ、世界でもユニークな企業として、健康寿命の延伸、農業振興・地方創生、そして持続可能な地球環境に取り組むことを目指しています。「トマトの会社から、野菜の会社に」というビジョンを掲げ、野菜をとることの大切さや上手な野菜のとり方を広めるとともに、トマトはもちろん、さまざまな野菜の価値を活かした幅広く革新的な商品を次々と届け、人々の健康に貢献することで、持続的な成長につなげていきます。

土岐 晃彦(とき あきひこ)さん
マーケティング本部 飲料企画部 2グループ(「野菜生活100」のMGR)。2006年に食品メーカー入社(マーケティングを中心に担当)し、2019年にカゴメに入社。「野菜生活100(レギュラー)」「野菜生活100 Smoothie」「野菜生活Soy+」「野菜生活100Care+」の商品企画とプロモーション戦略立案を経て、新領域である植物性ミルクの企画を担当。2023年10月より現職。
カゴメ