「まいたけ」が肉に変身 代替肉の新たな主役か

フォーカス!押さえておきたいテーマと企業/ QUICK

増大する世界の食料需要。解決策の1つとして話題となった「代替肉」ですが、普及は足踏み状態のようです。こうしたなか、きのこを原料とした代替肉が登場。新たな主役に躍り出る可能性がでてきています。今回は、雪国まいたけを中心に関連銘柄をご紹介します。

期待の新顔、きのこ由来の「代替肉」とは

人口増加などを背景に世界の食料需要が増大する見通しです。農林水産省によると、世界の食料需要量は2050年に10年比で1.7倍になると想定されています。増大するたんぱく質資源などの需要への対応が大きな課題となっています。

解決策の1つとして話題となって久しい「代替肉」。しかし、米代替肉大手のビヨンド・ミートは需要の減速に直面しているほか、価格の高さが普及のハードルとなっています。また、 現在の代替肉の主流である「大豆ミート」は大豆特有の匂いがあり、一部には苦手という声があるのも実情です。

そういった従来の代替肉の問題点を克服し、新たな代替肉普及の主役となりそうな製品が日本で登場しました。

2023年6月、きのこ製造大手の「 雪国まいたけ 」が発表したきのこ由来の代替肉です。

きのこは、糖質や脂質が少ない一方、植物繊維やたんぱく質のほかビタミンやミネラルも多く含まれヘルシーな食品として親しまれています。最近では、免疫調整や病気の予防に有効という可能性も指摘され、健康づくりに役立つ食材の一つとしてあらためて注目度が高まっています。

きのこ由来の代替肉としては、きのこなど菌類を発酵させて作る「マイコプロテイン」が海外にもあります。しかし、雪国まいたけが開発したきのこ由来の代替肉は、きのこをそのまま代替肉にした点が大きな特徴で、世界的にも珍しい取り組みといわれています。

また、代替肉の原料となるきのこの生産にあたっては、間伐材から出たおがくずを培地とし、地下伏流水を使っています。このため、製造時の環境負荷が少なく、自社生産のため、大規模かつ安定的な材料の調達や供給も可能です。

そして肝心な「味」。きのこ由来の代替肉は繊維質が肉に似た食感を作り、また出汁にも使われるようなうまみ成分を持っていることから、素材としてのポテンシャルの高さが期待されています。 

「きのこ肉」の強み
・低脂肪・高タンパク質のため代替肉のなかでも栄養価が高い
・成長スピードが速いため量産化に適している
・植物性タンパク質より環境への負荷が小さい

なお、同社は5月21日、2025年4月1日から社名を「ユキグニファクトリー」に変更すると発表しました。海外への進出や代替肉の開発など事業領域が広がっており、持続的な成長を見据えてとのことです。

代替肉に加え培養肉も、製品が多様化し市場拡大へ

代替肉への企業の取り組みは本格化しています。「 日本ハム 」は大豆ミート食品に加え、代替たんぱくの開発技術を活かして魚を使用しないフィッシュ商品を販売。

双日 」を軸に「 松屋フーズホールディングス 」など食品関連の12社は植物由来の代替肉を開発する企業を設立。

代替肉だけでなく細胞培養によって肉を人工的に作る「培養肉」も研究が進んでいます。「 島津製作所 」は「 伊藤ハム米久ホールディングス 」などと「培養肉未来創造コンソーシアム」を立ち上げました。2025年国際博覧会(大阪・関西万博)に培養肉を出展する予定で、試食のイベントも検討しているそうです。

マルハニチロ 」はシンガポールの UMAMI Bioworks Pte Ltdと組んで培養魚肉に大豆たんぱく原料などをつなぎとして混ぜ、3Dプリンターで切り身のように成型する仕組みを考案しました。

回転ずしの「スシロー」を展開する「 FOOD&LIFE COMPANIES 」は米企業と業務提携し、クロマグロの培養魚肉を共同開発すると2022年に発表しており、続報が待たれます。食品に関わる川下から川上、異業種の製造業からも代替肉や培養肉分野への参入が加速しており、商機を模索しています。

価格も抑え食卓に乗る機会が増えれば「代替肉といえばきのこ」の時代が今後来るかもしれません。