S&P500の中身を知ろう

あなたの知らない「インデックスの世界」/ おせちーず須山 奈津希

「S&P500ってどんな株価指数?」を読む

前回の記事では、S&P500がどんな株式指数なのか、採用条件は何かを解説しました。今回の記事では、S&P500の中身を見ていきます。前回の記事と今回の記事を「おせち料理」に例えて説明しますと、前回は入れ物である重箱で、今回は中身である料理みたいなものでしょうか。すこし「おせちーず」らしく説明してみました。

米国株のセクターとS&P500

S&P500は500社で構成されます。500社すべてに言及しようとすると、ものすごいボリュームの記事になりますし、逆にわかりにくくなりそうです。そこで、多くの投資家が株式指数の中身を把握するために利用する「セクター」について説明します。日本株であればセクターは「東証33業種」と呼ばれる、33の分類が使われることが多いです。

米国株では”GICS”が用いられることが多いです。Global Industry Classification Standardの略称で、日本語では世界産業分類基準と呼ばれます。1999年にS&P Dow Jones Indicesと機関投資家向けに指数や分析ツールを提供するMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が共同開発した産業分類のことです。世界の産業を11のセクター、24の産業グループ、69の産業、158の産業サブグループに分類しています。一番大まかな分類である11セクターを、S&P500に採用されている代表的な銘柄とともに確認しましょう。
よく耳にする銘柄もあれば、初めて知ったという銘柄もあったでしょう。おせち料理は様々な種類の料理が重箱に詰められていますが、S&P500はまさにおせち料理のように様々な企業の集まりであることがわかります

さてS&P500は、時価総額加重平均型株式指数です。ですから、セクターごとの銘柄数のバランスなどは考慮しません。結果として、S&P500に占めるウエイトはセクターごとに大きく違います。2024年3月28日現在のセクター別ウエイトは以下の通りです。

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全体の約3割を占めているのが情報技術セクターです。このセクターはソフトウェア及び情報技術コンサルティング、データ処理を提供する企業や、通信機器、携帯電話、コンピューター、電子機器、及び半導体などのテクノロジー・ハードウェア及び機器の製造・販売業者で構成されます。米国の花形産業と言っていいでしょう。金融とヘルスケアを合わせると、3セクターで全体の50%以上を占めます。

個別銘柄ウエイト上位10銘柄

セクター構成を理解したところで、もう少しブレイクダウンして個別銘柄上位10銘柄を見ていきましょう。こちらも、セクターウエイトと同様に2024年3月28日現在です。
「あれ?、なんでアルファベットが2つあるの? そもそもアルファベットって何?」と思われたかもしれないので、少し補足します。アルファベットはグーグルを傘下に持つ企業です。ですから、日本株の銘柄コードに当たるティッカーが「グーグル」っぽいのですね。そのアルファベットが2つある理由は、それぞれの「議決権」の違いです。「議決権」とは株主総会で投票できる権利のことです。

ティッカーGOOGの方には「議決権」がありません。どちらもマーケットで取引されていて、2つともS&P500のウエイト上位10銘柄に入る程度の時価総額があるということです。

他の銘柄にも少し触れておきます。マイクロソフトからメタまではご存知の方が多いでしょう。アマゾンやメタのサービスを使っているという読者さんがたくさんいらっしゃると思います。エヌビディアは2023年以降に大きく株価が上昇した、半導体設計メーカーです。生成AI需要を取り込んで、大きく成長しました。

バークシャ・ハサウェイは世界でも指折りの投資家であるウォーレン・バフェット氏がCEOを務める企業です。Bがついているのは議決権と株価の違いで、Aもあります。Aは日本円に換算すると1株9,000万円以上の株価で取引されている、主に機関投資家向けの銘柄です。Bは6万円程度で、個人投資家向けと理解すればいいでしょう。

イーライ・リリーは製薬会社です。肥満治療薬の売り上げが大きく伸びたことにより株価も大きく成長しました。ブロードコムは無線および通信インフラ向けの半導体製品、ソフトウェアなどを製造販売する企業です。

S&P500は米国経済の「いま」を表すもの

個別銘柄のウエイト上位10銘柄には2023年から2024年にかけて変化がありました。

数年にわたりウエイトの1位はアップルでした。2024年に入ってからマイクロソフトと順位を入れ替えています。エヌビディアは前述したように、2023年から株価が大きく上昇し、ウエイトのランキング3位に入っています。一方、去年は上位10位にランキングされていた電気自動車製造販売のテスラは2024年に入ってから株価が大きく下落し、トップ10圏外になりました。
S&P500は1年前と比較しても上位10銘柄に変化があるということです。ですから、常に米国経済の「現在」を表すものだと理解すればいいでしょう。また、構成銘柄に適度に新陳代謝があり、常に優秀な企業の集まりでもあります。ですから、上げ下げはありつつも長期にわたって上昇してきた株式インデックスです。

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