連続して増配する企業の株は、すべて「買い」なのか?

投資がもっと楽しくなる!日興フロッギー選書/ 配当太郎クロスメディア・パブリッシング

投資や資産形成をもっと楽しくするためにピッタリの書籍を、著者の方とともにご紹介する本連載。今回は、「配当株投資」において利益を大きく積み上げていく考え方について、著者の配当太郎さんと見ていきましょう。[PR]

「取得利回り」を上げるための2つのアプローチ

配当株投資の一番の楽しみであり、最大の醍醐味となるのが配当金の「増配」です。増配とは、ご存じの通り、「企業が持ち株数に応じて株主に還元する配当金を、前期よりも増額すること」をいいます。新NISAを活用して、非課税の恩恵を受け続けるためには、「いかに増配を手に入れるか?」が大事なポイントとなります。

配当株投資によって雪ダルマ式に利益が積み上がるイメージを、私は「配当金ダルマ」と呼んでいます。配当金ダルマを大きく育てるためには、「取得利回り(株の購入額に対する配当金の割合)」を上げることが大切ですが、そのためのアプローチには2つの方法があります。

一つは、安定感のある企業の株を買って持ち続けることによって増配の恩恵を受けること。もう一つは、業績が堅調で株主還元も積極的な企業の株を、世界経済の影響などの外的要因によって株価が下がったときに買うことです。こうしたケースでは、配当利回りが跳ね上がる可能性が高いため、十分に増配の恩恵を受けることができます。

取得利回りが上がるのは、「増配の恩恵を受け続ける」か、「株式市場の需給の関係で株価が下がったときに買う」のどちらかですから、配当金ダルマを大きく育てるためには、淡々と株を買い進めることによって、この2つを上手に取り込んでいくことが大切です。

長期的に株を買い続けていくと、株価が大きく下がるような局面に遭遇することになります。そのときは「一段ギアを上げて買うこと」を意識していれば、配当利回りの恩恵を即座に受けることができます。

配当株投資を始めると、「できるだけ株価が安いときに買いたい」という気持ちが芽生えますが、株価が下がるのを待っている間に、企業が増配して、株価がさらに上がってしまう……というケースは意外によくあります。

利回りを上げて配当金ダルマを大きく育てるためには、株価の値動きばかりに目を奪われるのではなく、「自分が買えるときに買う」→「買って持ち続ける」→「その過程で株価が下がったら、さらに多く買う」……という意識を持つことが大切です。

大事なのは「1株益の伸び」に注目すること

増配する企業には、大きく2つのパターンがあります。たとえば花王のように、「配当性向が高くなってもいいから、増配を続ける」というパターンと、「1株配の大事な原資となる1株益が、緩やかであっても、きっちりと上昇することで増配する」というパターンです。

どちらが安定的な増配が見込めるか、といえば、これは一目瞭然で後者と考える必要があります。花王の場合は、「安定的・継続的な配当」という配当方針を掲げるなど、配当に対する意識が非常に高い企業ではありますが、1株益が上昇しない状態で増配を続けているため、配当性向が高い水準で推移しており、このまま増配が続くかどうかは、注視していく必要があります。

なぜ、注視する必要があるのかといえば、「キヤノン」(7751)や、日本たばこ産業「JT」(2914)のような前例があるからです。

この両社は、どちらも日本を代表する有力企業として、多少の凸凹はあっても増配か維持を続けてきましたが、為替の円高傾向や市場の変化もあって、1株益が上昇せず、キヤノンは2020年12月期に30期以上も続いた増配をストップさせ、JTも2021年12月期に、1994年に上場してから初めての減配をしています。この時期はコロナ・ショックの真っ最中であったため、大きなニュースになったことも記憶に新しいところです。

JTとキヤノンは、共に事業のグローバル展開に積極的で、きっちりと利益を出してきた企業ですから、為替の円安傾向もあり、現在は利益が回復して、1株益も上昇するなど、その後は復活傾向にあります。

これは私の個人的な見解ですが、JTとキヤノンがコロナ禍に減配したことは「英断」だと思っています。業績が芳しくなく、市場が「いつ減配するのか?」と疑心暗鬼になっている状況の中で、無理をして増配を維持する必要はなく、減配という形で一度「膿(うみ)」を出したことは、企業として「健全」である証拠と受け取っています。

配当株投資の対象となるのは、長期的に見て1株益が増加しており、それに伴って1株配も増加している企業です。

新NISAを活用して、配当金を増やしていくためには、連続増配に目を奪われるのではなく、「1株益の伸び」に注目することが大切です。1株益が増加していなければ、「その投資がリスクになる可能性がある」と考える必要があるでしょう。

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