決算まとめ! ポジティブな会社計画を発表した企業に注目

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は、2024年3月期の決算振り返りと今期の業績見通しについて解説します。

カエル先生の一言

2024年3月期は好調な決算発表が相次いだ一方、2025年3月期の会社計画は保守的な予想が目立ちました。保守的な予想となった背景をひも解きながら、そのなかでもポジティブな会社計画を発表した企業に注目してみましょう。

5月の日本株市場

5月31日の日経平均株価は3万8487円、前月末比82円高でした。

ゴールデンウィーク期間中に政府・日銀による為替介入が行われたとみられ、一時ドル円は大幅な円高方向に進みました。また国内では、3月期決算企業の本決算と今期(2025年3月期)会社計画の発表が本格化。好調な決算発表が相次いだ一方、会社計画については保守的な予想が目立ちました。22日には米半導体大手のエヌビディアが市場予想を上回る好決算を発表。関連銘柄が大きく値上がりする場面もありましたが、全体的には企業の慎重な業績見通しや為替再介入への警戒感などから、上値の重い展開となりました。

2024年3月期は値上げやインバウンド需要が利益を押し上げ

TOPIXに採用されている3月期決算企業の2024年3月期営業利益は、前期比18.3%増と2ケタ増益となりました。

業種別では、自動車は北米での販売が増えたことや値上げ効果で増益、旺盛なインバウンド需要により鉄道や空運も収益が改善されました。一方、コロナ禍による物流網の混乱が落ち着きコンテナ船運賃が下落した海運、資源高の恩恵が薄れた商社などは減益となりました。

TOPIXに採用されている3月期決算企業の2025年3月期営業利益は、前期比3.3%増と伸びが大きく鈍化する見込み(会社予想)で、内需業種は減益見通しとなっています。

なぜ保守的な業績予想なの?

そもそも日本企業の期初計画は、期中の業績下方修正を避けるために例年保守的な発表になりやすい傾向があります。今期については、会社計画の前提となる2025年3月期の想定為替レートは、大半が1ドル=145円前後。足元のドル円が155円前後で推移していることに鑑みると、かなり控えめな業績予想であることが伺えます。

この背景には、日米金融政策の方向性の違い(これから日本では金利を引き上げようとする一方、アメリカでは金利を引き下げようとしている)があります。日米の金利差が縮小し、ゆるやかに円高に進む可能性が想定されることから、想定為替レートを慎重に設定せざるをえないという事情があります。

このまま足元の為替水準が続けば、今後業績の上方修正が行われる余地はあります。しかし、4月以降の急激な円安や為替介入で変動を読むのが一段と難しくなっていることも踏まえると、銘柄選びは、より業績面の部分を見ていくことが重要になりそうです。

ポジティブな会社計画を発表した企業に注目

3月期決算企業の2025年3月期の営業利益計画は、前期に比べて全体的に保守的な計画となりましたが、個別銘柄を見ていくと75%超の企業が増益の見通しを発表しています。また、30%超の企業は事前の市場予想を上回る増益計画となっています。

三越伊勢丹HD 」は、2024年3月期決算で営業利益、経常利益ともに過去最高益を達成。インバウンド需要で百貨店事業が好調に推移することや経費構造改革による経費削減の効果などを見込み、2025年3月期も営業利益、経常利益ともに過去最高益更新を予想しています(会社予想)。

多数の事業を展開する総合化学企業の「 旭化成 」は、自動車、電子機器、半導体市場などの緩やかな回復を背景とした「マテリアル」の業績改善や、「住宅」および「ヘルスケア」の堅調な成長を見込み、2025年3月期は全セグメントにおいて増収、増益を見込んでいます(会社予想)。

市場予想を上回る増益計画を発表した企業は、相対的な安心感から注目が集まるかもしれませんね。

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