株式市場で「コンテンツ」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.5%と、東証株価指数(TOPIX、0.6%安)に対して逆行高となりました(6月7日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
政府が「新たなクールジャパン戦略」を発表
株価上昇のきっかけは、政府が4日に発表した「新たなクールジャパン戦略」です。アニメや映画、ゲーム、音楽などのコンテンツビジネスを基幹産業として位置付け、日本発のコンテンツの海外市場規模を2033 年までに20兆円とする目標を掲げました。
世界的な動画配信サービスの普及などに伴い、日本のアニメや漫画は海外での人気が高く、ゲームのキャラクターを活用した映画も大ヒットしています。実際、日本のコンテンツビジネスの海外展開(輸出額など)は4.7兆円と半導体産業の5.7兆円に迫る大きなビジネスに成長しています(2022年)。
政府の後押しによる、さらなる業績拡大への期待から人気作品など有力IP(知的財産)を持つ企業の一角が物色されました。
「ハローキティ」だけじゃない!?【サンリオ】
上昇率首位の「 サンリオ 」は24年に50周年を迎えた「ハローキティ」が主力キャラクターで、北米やアジアなど海外展開も好調です。
直近ではハローキティに依存しない体制の構築に注力しています。複数キャラクター戦略により、物販事業とライセンス事業の売上総利益に占める割合をみると、ハローキティは14/3期の75.7%から24/3期は30.4%へ減少。一方、ミックスキャラクターは1.6%から19.2%、その他キャラクターは22.7%から50.4%へと急上昇しています。
この複数のキャラクター戦略の他、国内外からの客数増による物販の好調、構造改革によるコスト構造の改善などが寄与し、24年3月期の連結営業利益は過去最高の269億円、25年3月期も増益の見込みです。中期経営計画の最終年度となる27年3月期には400億円以上を目標に掲げており、今後も順調な収益の拡大が期待されます。
「東京リベンジャーズ」に期待【JVCケンウッド】
上昇率2位の「 JVCKW 」は従来からエンターテインメント事業を手掛けていましたが、25年3月期を最終年度とする中期経営計画で、新たにゲームやアニメの強化に注力する方針を示しました。
第一弾として人気アニメ『東京リベンジャーズ』のゲーム版をニンテンドースイッチやプレイステーション5など向けに24年内にも発売する予定です。同ゲームは発売日が延期されるなど先行きへの懸念はありますが、アニメやゲーム事業が軌道に乗り海外展開などが視野に入ってくれば、収益の拡大に寄与するでしょう。
海外強化を掲げる企業が目立つ
「 マーベラス 」は人気の「ポケモン」を題材にしたキッズアミューズメントマシン「ポケモンメザスタ」などが国内外で好調です。後継機も7月から稼働します。同社は海外シェアを拡大し、収益の成長を目指しています。
「 バンダイナムコ 」はデジタルやトイホビー事業などで海外展開を強化しています。主力キャラクター「機動戦士ガンダム」のプラモデルは海外での売上高比率が50%を超えました 。
「 東映 」も映画の海外版権収入などが業績の伸びに寄与しています。傘下の東映アニメーションは「ワンピース」や「プリキュア」、「ドラゴンボール」などの人気作品を数多く手掛けています。いずれの企業も政府のクールジャパン戦略は追い風になりそうです。
インバウンドへの寄与にも期待
一言でコンテンツといっても、ゲーム(『ニンテンドースイッチに後継機? 「ゲーム」関連株が上昇』)、アニメ、マンガの他、映画、音楽など多岐にわたります。そのなか、日本が世界に誇るアニメ、マンガなどは海外展開による自社の業績拡大だけでなく、インバウンド(訪日外国人)誘致にも寄与しています。訪日客が作品に登場した場所や原作者の出身地などを訪問する「聖地巡礼」も盛んです。
8月には毎年20万人以上の人々が訪れるコスプレイベントが愛知県で開催されます。日本が誇る成長産業の「コンテンツ事業」が政府の戦略によって一段と発展できるかどうか、今後も世界中から注目されそうです。