地球を守る次世代燃料 水素ステーションの存在感高まる

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次世代燃料の一つとして期待が集まる水素。水素を動力源とする自動車や鉄道の開発が進み、近年は「水素ステーション」の設置が増えています。今回は水素供給に力を入れるENEOSホールディングスを中心に関連企業をご紹介します。

カーボンニュートラル社会実現で注目の水素ステーション

水素は燃焼時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しません。このため、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」社会を実現するエネルギーの一つとして注目されています。

実際、日本政府は、『水素基本戦略』(令和6年)で、2030年の水素の供給量を年間最大300万トン、40年には約1200万トン、50年には2000万トン程度まで引き上げる目標を掲げています。

水素を活用するインフラとして注目されるのが水素ステーションです。

「水素ステーション」の主な設備
・『圧縮機』 気体の水素を高圧に圧縮する
・『畜圧機』 圧縮した水素ガスを一時貯蔵
・『プレクーラー』 水素を冷却
・『ディスペンサ』 水素を充填

国内にある水素ステーションは、主に愛知県を中心とする中部圏と東京などの関東圏で整備が進んでいます。計画中のものを含めると160ヵ所超あるといわれており(2024年5月時点)、政府は30年までに1000ヵ所の整備を目指しています(23年6月6日時点)。

一方、水素ステーションは、設置費用が高く、FCV(燃料電池自動車)も高額なため設置が進まないという課題があります。日常生活や産業活動で水素をエネルギー源として使う事例が増えれば、水素ステーションの普及を後押ししそうです。特に、トラックやバスなど商用の大型車向けに対応できるかが今後のカギとなりそうです。

ENEOSが「東京晴海水素ステーション」を開所

今年3月、ENEOSホールディングス 」傘下で石油元売り最大手のENEOSが、「東京晴海水素ステーション」を開所したとのニュースが流れました。

この水素ステーションは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会後の選手村跡地で、車両向けや街区向けに水素を供給する施設です。

同社は、FCVやマンションなど集合住宅への水素供給拠点となる水素ステーションの整備・運営(水素の製造・貯蔵・供給)を担います。

ENEOSは関東圏を中心に38ヵ所の水素ステーションを展開(2024年4月1日時点)。2040年に国内需要の約50%に相当する水素の供給を目指しています。

また、トラックに対応した既存の大型ガソリンスタンドを有効活用するとしています。ガソリンスタンドを利用することでコスト抑制も期待できそうです。

一般乗用車以外で利用進む

4月にコスモエネルギーホールディングスとの資本業務提携を発表した 岩谷産業は国内53ヵ所で水素ステーションを運営。同月、トラックやバスといった大型のFCV向けに、物流倉庫が集まる東京都大田区平和島地区に共同運営の水素ステーションを開所しました。

2025年国際博覧会(大阪・関西万博)では、同社が国内初となる水素燃料電池船を旅客運航(実際の運航は京阪ホールディングスの大阪水上バスに委託)する予定です。

水素活用の流れをビジネスチャンスと捉えて海外企業と協力するケースもあります。 川崎重工業は6月12日、ドイツのダイムラー・トラック・ホールディングAGと欧州で水素ステーションの構築を目指し協力すると発表しました。

鉄道業界では車両の動力源を水素に切り替える検討も始まっています。 JR東日本は2030年度にも水素ハイブリッド電車を導入する方針を発表しました。

JR西日本三菱電機トヨタ自動車と連携し燃料電池車両の開発に取り組んでいます。車両向けの水素ステーションは一定の敷地が必要となるため、各社で模索が進むとみられます。

このように水素を動力源とする輸送用機器も多様化しています。これに伴い水素の供給体制を整備する動きが加速することが見込まれます。地球環境を守る次世代燃料として、水素、それを供給する水素ステーションの増加は利便性向上につながり水素社会を後押ししそうです。