株式市場で「水道」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は2.5%と、東証株価指数(TOPIX、0.8%安)に対して逆行高となりました(6月21日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
水道の施設整備関係予算が増額、設備投資額も増加
水道関連銘柄が買われたきっかけは、内閣府と財務省が13日に発表した2024年4〜6月期の法人企業景気予測調査の結果です。調査は5月15日時点で、全国の1万1111社から回答を得ました。24年度の設備投資額は前年度比12.1%増の見込みで、特に電気・ガス・水道業が前回調査の15.5%増から50.2%増と、大きく上方修正されたのが寄与しました。
これまで上水道の整備や管理は厚生労働省が担っていましたが、4月1日から下水道の整備や管理を担ってきた国土交通省に移管しました。24年度の水道施設整備関係予算を前年度から18%増やし、上下水道の施設再編や耐震化などに関する事業の創設を受け、関連施設の整備に向けた機運が高まっていました。
法人企業景気予測調査で設備投資額が増えたのが確認されたのを受け、将来的な業績の拡大が期待できるとの見方から、関連銘柄の一角が物色されました。
水道施設の老舗企業【水道機工】
上昇率首位の「 水道機工 」は東レ子会社で、24年に創業100年を迎える老舗企業です。浄水場など上下水道施設の設計や工事を主力としており、設備投資が増加すれば収益拡大が期待できます。足元では設備のメンテナンスや運転管理にも注力しており、売上高に占める割合を24年3月期の約4割から、31年3月期には6割まで拡大する方針です。同社は浄水場水処理設備の施設更新の市場規模を年間で約1000億円と試算しており、メンテナンス関連事業の業績への寄与が期待されます。
水道管の製造に強み【日本鋳鉄管】
上昇率2位の「 日本鋳鉄管 」は水道管やガス管、関連部品などの製造、販売を手掛けています。主力製品のダクタイル鉄管は国内の水道の主要な管材として使用されています。国や自治体は水道関連の耐震化の推進施策を検討しており、将来的な工事受注の増加に期待が掛かります。さらにダクタイル鉄管の生産は26年をめどにクボタと合弁会社を設立し、クボタが販売する一部の鉄管をOEM(相手先ブランドによる生産)します。協業による生産効率の向上やOEMによる収益への寄与が見込まれます。
海外での実績がある企業も
「 前沢工業 」は上下水道用機器や水処理装置の専業メーカーです。取引先は主に全国の諸官公庁ですが、海外への輸出実績もあります。
「 クボタ 」は農機や建機などが有名なメーカーですが、水道管の製造や水処理施設の建設などを手掛け、世界の水インフラを支えています。
「 オリジナル設計 」は上下水道事業施設の設計や工事発注、施工監理などのコンサルティングをしています。
水道は老朽化対策が課題
国内の水道は、道路と同様(『老朽化対策待ったなし 「道路建設」関連株が上昇』)、老朽化への対策が喫緊の課題となっています。老朽化の目安となる40年以上使われている水道管は20%を超え(21年3月末)、今後も増加が見込まれています。
一方、耐震化や水道管路の更新は現時点で思うように進んでおらず、インフラである水道管や関連施設の工事が今後、段階的に増えていくのが確実です。半導体などに比べると大きな成長は見込めないかもしれませんが、底堅い業績の推移が期待できそうです。