資産運用の王道とも呼ばれる「分散投資」。リスクを下げて、安定的な運用ができると言われていますが、そもそも「リスク」とは……?分散するのは投資先だけでいいの? こうした前提をおさらいしつつ、分散投資の真価を確認しましょう。
リスクはなぜ下げるべき?
なんとなく、つかみどころのない「リスク」という言葉。日常生活において「リスク」は、「危険が起こる可能性」を指しますが、投資の世界での「リスク」とは、「リターンの振れ幅」のこと。つまり、頻繁に耳にする「リスクを下げましょう」という言葉は、「リターンの振れ幅を小さくしましょう」ということなんです。
一方で、リターンをなるべく大きくしたいはずなのに、なぜリスク(リターンの振れ幅)を下げることがこれほどまでに重要視されているのでしょうか? リスクを下げる方法を確認する前に、心得ておきたい投資の大前提を、大きく2つご紹介します。
前提その① 大きな下落は巻き返しが難しくなる
まず1つ目に、一度大きく下落すると巻き返しが難しいことが挙げられます。当たり前じゃない? と思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください。たとえば、値動きの激しい株を買ったとしましょう。買ったあとすぐに50%下落し、そのあと50%上がったとします。これだけ聞くと「損失なんてないんじゃないか」と錯覚するかもしれません。でも実際には、最初に買った時に比べて75%の水準にしか戻っていないのです。
このように、リスク(リターンの振れ幅)が大きいと、思わぬ損失につながってしまう可能性があるんですね。
前提その② 「損」は「得」より大きく見える
2つ目に、値動きが大きいと、投資していることに対して疲弊してしまうことが挙げられます。「自分はメンタルが強靭だから関係ない」という人もいるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?
下の図は、損失と利益が出たときの感じ方を表したものです。人は同じ金額でも、損失と利益で感じ方が大きく異なります。損失の悲しみは利益の喜びよりも2倍以上大きいと言われているのです。人は損を避けたいあまりに、利益がほんの少ししか出ていないのに売却したり、損失が出てしまったものを塩漬けにしたりと、合理的な判断ができなくなってしまうのです。
分散投資を活用しよう
ここまで、心得ておきたい投資の大前提を確認してきました。次は、リスクを下げる方法の1つである「分散投資」を一緒に見ていきましょう。
「卵は1つのカゴに盛るな」という投資格言を、聞いたことがある方も多いと思います。卵を1つのカゴ(※投資先)で運ぶと、転んだ拍子にカゴからこぼれ落ちて全部割れてしまいますが、いくつかのカゴに分けて卵を持ち運べば、割れる卵は少なくて済みます。
このお話が実際の資産別の騰落ではどうなっているか、見てみましょう。
下の表は、1年ごとに資産別の上昇率を分けて表したものです。1つの資産だけに投資をすると、年によって上がったり下がったり、変化が激しいことが見てとれます。儲けたい! と思っても、毎年上昇する資産は異なり、当て続けることは非常に難しそうです。すべての資産に投資をする「6資産分散」は、毎年だいたい真ん中くらいのパフォーマンスとなり、「大きく損する」ことがないことがわかります。
今すぐできる分散投資、4つの切り口
「分散投資=1つの資産に集中せず、分けて投資する」ということがわかったら、実践あるのみです。具体的にどう分散したら効率的にリスクを下げられるのでしょうか。4つの切り口をご紹介します。
1.地域分散
さまざまな国や地域にわけて投資をする、これが地域分散です。「日本」「アメリカ」「フランス」などの国や、「アジア」や「ヨーロッパ」などの地域に分けて投資先を選びます。これは、各国の経済は必ずしも同じ方向に動くわけではないこと、また、自然災害や戦争などが起こったときのダメージをできるだけ減らすために取る方法です。
2.通貨分散
「円」だけでなく「ドル」や「ユーロ」など、通貨を分けて投資する方法です。通貨を分けることで、為替による値動きの影響が抑えられます。「円安」という言葉がニュースで毎日のように聞こえてきますが、これをできるだけ避けるのも通貨分散です。
3.資産分散
「有事の金」という言葉を聞いたことはありますか? 金は、金融危機が起こったときや戦争などの地政学リスクが高まったときに「安全資産」として買われることが多いので、このように言われるようになりました。下のグラフは、日本の株式(TOPIX)と金の価格を示したもの。どちらも上昇傾向にありますが、よく見ると動きが少し異なっています。この値動きの違いを利用して、株式だけでなく債券や金など、さまざまな資産に投資をするのが、資産分散です。
4.時間分散
株や投資信託は、上がるか下がるかしかありません。上がったら嬉しいけれど、下がったら指をくわえて見ているだけ……。そんなとき、下落をチャンスに変えるのが、時間分散です。
何回かに分けて買い付けを行うことで、購入金額がならされ平均化されて、高値づかみを避けることができます。この時間分散を最大限活用する方法が「つみたて投資」。毎月決まった金額で、安いときはたくさん、高いときは少量の買い付けを行うので、平均購入単価を下げることができます。最近つみたて投資が人気なのは、手軽にリスクが下げられるからなんですね。
「『投信つみたてプラン』で貯蓄から投資への流れに乗ろう!」を読む
投信ならば1本で分散も可能!
いざ自分で分散投資をしようと思うと、考えることが多すぎて混乱してしまいますよね。そんなときに便利なのがバランス型の投資信託。バランス型の投資信託は、それ単体で資産分散や地域分散が叶う優れモノ。色々な資産を選んで投資をしていることから、インデックスファンドより少しコストがかかってしまいますが、それを差し引いても十分に魅力的。バランス型投資信託に投資をすれば、自分で考えるのは時間分散だけでよくなりますし、誰でも簡単にリスクが下げられるんです。
バランスファンドでつみたてしよう
日興の投信NISAの取り扱いファンドにも、バランス型の投資信託があります。その名も、「 三井住友・DCつみたてNISA・世界分散ファンド 」。このファンドを購入すると、間接的に、世界の株式、債券、REIT(不動産)に投資ができます。組み入れ資産は以下の通り。まるでケーキのようで、分散の様子が一目でわかると思います。
運用が開始されてからの価格推移も堅調で、思わず分散投資の真価を感じてしまいますね。
このファンドを1つの足掛かりとして、分散投資の初めの一歩を踏み出してみましょう!