マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は、日本取引所グループ(JPX)が公表したTOPIXの新たな見直し案について解説します。
TOPIX(東証株価指数)は、東京証券取引所に上場する企業を対象として算出、公表する株価指数です。日本経済の動向を示す代表的な経済指標として用いられるほか、ETFなど金融商品のベンチマークとして利用されています。
6月の日本株市場
6月28日の日経平均株価は3万9583円、前月末比1095円高でした。13、14日に行われた日銀金融政策決定会合では、国債の買い入れ規模を減らす方針を決定。今月の会合で具体的な計画を示すことを明らかにしました。会合の結果はマーケットに大きな影響はなかったものの、欧州の政治不安の広がりなどを背景に、一時日本株も大幅に下落する場面がありました。
TOPIXの新たな見直し案が公表
TOPIXの計算を行うJPX総研は、6月19日にTOPIXの選定基準についての見直し案(第二段階の見直し)を公表しました。この見直し案ではプライム市場だけでなく、スタンダード市場、グロース市場の上場銘柄も選定基準の対象にするとしています。
また、売買回転率は年間20%以上、浮動株ベースで東証の時価総額の96%を占める上位銘柄となるよう2026年から段階的に絞り込みを実施。2028年には1200銘柄程度にまで減らし、その後は毎年10月末に銘柄入れ替えを行う方針です。
「売買回転率」は、取引対象である上場株式数の何割が実際に売買されたかを示す指標です。流通市場の規模や活発さを表す指標に「売買高」がありますが、「売買高」は上場株式数の増加とともに増加する傾向があります。上場株式数の変動による影響を補正したものが「売買回転率」です。「浮動株」は、一般の投資家等が市場で日々売買する株式のこと。一方で、上場されている株式でも、創業者一族や大株主などが常時保有し、市場に流通しない株式は「特定株」や「固定株」と呼びます。
2022年4月の東証再編を契機に、すでにTOPIXの見直し(第一段階の見直し)は始まっています。ただ、これまでの採用銘柄はプライム市場がほとんどでした。今回の案が実現すれば、新興市場の銘柄も採用される可能性が高まります。
また、これまでTOPIXに採用されている企業は、TOPIX連動の投資信託を運用するファンドなどが一定の割合で株式を保有してくれるという恩恵がありました。しかし、今後株価が低迷してTOPIXの構成銘柄から除外されると、株式も売却されることになります。現在TOPIXに採用されている企業にとっては、株価上昇へのプレッシャーとなりそうです。
「新TOPIX」に採用される可能性のある銘柄とは
今回は見直し案の内容をもとに、今後新たにTOPIXに採用される可能性のある銘柄をいくつかご紹介します。
日本マクドナルドHD
ハーモニック・ドライブ・システムズ
ナカニシ
住信SBIネット銀行
フェローテックHD
セリア
ジーエヌアイグループ
トライアルHD
ヨネックス
アトム
TOPIXなど、指数に連動する投資信託を運用するファンド(パッシブファンド)は、指数の構成銘柄が変わるときに、自分のポートフォリオも調整します。TOPIX連動の投資信託なら、ある銘柄がTOPIXから削除される日にその銘柄を全部売却し、ある銘柄がTOPIXに採用されるときにその銘柄を購入します。仮にTOPIXパッシブファンドが全部で100兆円あり、TOPIXに組み入れられたときのウェイトが0.1%になるのであれば、TOPIXパッシブファンドの購入金額は合わせて1000億円(=100兆円×0.1%)となります。これが「フロー(金額)」です。今回はTOPIXパッシブファンドの金額を浮動株時価総額の20%、約110兆円あると仮定して計算しています。