株式市場で「百貨店」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は8.2%と、東証株価指数(TOPIX、2.7%高)を上回りました(7月5日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
訪日外国人旅行者3ヵ月連続300万人超
百貨店関連株が買われたきっかけは、インバウンド(訪日外国人)需要拡大などによる好調な業績や月次売上高です。
日本政府観光局(JNTO)などによると、5月の訪日外国人旅行者数は前年同月比60%増の304万100人と、3ヵ月連続で300万人を超えました。中国からのインバウンドは新型コロナウイルス禍前の2019年比では28%減ですが、前年同月比で4倍になるなど回復が鮮明となっています。
インバウンドの増加を背景に、百貨店売上が好調です。全国百貨店協会が6月末に発表した5月の売上高概況によれば、インバウンド売上高は円安などを背景に、3ヵ月連続で過去最高を更新し、コロナ禍前の19年5月比でも2.3倍に拡大しました。
さらに、高単価の美術・宝飾・貴金属の売上高は前年同月比で37%の大幅増となりました。地域別では京都(24%増)、大阪(32%増)など関西地区の伸びが目立っており、関西に強い地盤を持つ百貨店の業績拡大が期待されそうです。
今期業績予想を上方修正【J.フロント リテイリング】
上昇率首位は、大丸と松坂屋を運営する「 J フロント 」です。6月28日に発表した2024年3~5月期連結決算(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前年同期比9%増の1014億円、営業利益は161億円と59%の大幅増益となりました。中核である百貨店事業、ショッピングセンター事業で、国内売り上げが堅調に推移したほか、インバウンドの増加で当初想定以上に免税売り上げが伸長したことが寄与しました。
同時に25年2月期の業績予想で売上収益を前期比4%増の4245億円(従来予想は4215億円)、営業利益を4%減の415億円(同375億円)に上方修正しました。会社側は決算説明会でインバウンド需要について「インバウンド売上高の年度予想は当初計画から変更していない」とし、「上乗せをしっかりとはかっていく」と意気込みました。
主力3店舗がコロナ前を上回る実績【三越伊勢丹ホールディングス】
上昇率2位は「 三越伊勢丹HD 」です。7月1日に発表した6月の国内百貨店事業の売上速報によると、三越伊勢丹の月別売上高は前年同月比24%増え、5月実績(23%増)から伸びが加速しました。
主力3店舗(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店)を中心に、高付加価値商品が伸びており、3店舗は12ヵ月連続でコロナ禍前の18年度を上回る実績を示しています。今後の業績拡大が期待されそうです。
好調な月次売上高、業績予想上方修正、自社株買い
阪急百貨店と阪神百貨店を運営する「 H2Oリテイル 」が7月1日に発表した6月の売上速報によると、全店合計の売上高は前年同月比26%の大幅増でした。
「 高島屋 」は6月28日に24年3~5月期決算と同時に25年2月期の業績予想の上方修正を発表しました。
「 丸井グループ 」は7月1日に6月中に自社株を15億5780万円取得したと発表し、積極的な株主への利益還元策も好感されたようです。
高付加価値商品で更に収益改善も
これまでもインバウンドの回復期待から百貨店株が物色される場面はありました(『水際対策緩和でインバウンド期待 「百貨店」関連株が上昇』)(『インバウンド急回復 「百貨店」関連株が上昇』)。一方、足元では、インバウンド回復による収益寄与が鮮明になってきています。
インバウンド需要の拡大と高付加価値商品の伸びは収益率の改善にもつながりやすく、百貨店の業績には追い風が吹いているといえそうです。