世界トップ投資家の共通言語

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

日本が飛躍できないのは「共通言語」を知らないから!? 世界トップ投資家がよく使うフレーズから世界基準を学ぶ本。現場のビジネスパーソン向けですが、大化けする企業の見極めるヒントにもなりそう。

「日本企業のもったいなさ」を解消する29のフレーズ

「日本は技術もブランドも人的資産もあるのに、世界基準から見るとズレている。ファンドマネージャーは『腑に落ちない何か』を感じ、投資を見送ってしまう」。国内外の名だたるファンド(投資家から資金を募って運用する金融商品)で運用者側のキャリアを築いてきた著者2人は、口をそろえてそう言います。理由は、日本の経営者が世界トップ投資家たちと「共通言語」で話せていないから。

ファンドマネージャーは、投資対象を分析する際、経営者と対話することが多いのですが、その対話の場面で、質問の真の意図を理解できず、彼らの望む答えから乖離する。結果、事業を正しく評価をされることもなく投資してもらえる機会を逃してしまう、というのです。

「日本はもったいなさすぎる!」ーーそんな思いを抱えた著書が渾身の力を込めたのがこの一冊。世界トップ投資家がよく使うフレーズの隠れた意図をわかりやすく言語化します。

たとえば、投資を決める際に、ファンドマネージャーがよく使うフレーズに「What is the time horizon(時間軸は)?」があります。スケジュールを聞いている体(てい)ですが、深読みすべきは「時間の価値をわかっているよね?」という点。

日本企業はここで中期経営計画の策定を持ち出したり、内外部のステークホルダーと話し合う必要性を語ったりで、長期の時間を伝えがち。が、こんな回答では投資話は流れてしまうのです。実現が数年先であるならば、今すぐ投資する価値はないからです。

グローバル投資家のコンセンサスは「日本のビジネス文化は付加価値のないプロセスを重視する=決定に時間がかかりすぎること」。その待ち時間に、もっとスピーディーな案件でリターンを得よう、となるのは当然なのかもしれません。

耳の痛い話も多いですが、鍵になりそうなのが、本書の「はじめに」と「おわりに」で触れられる「コマーシャルな人」というフレーズ。

馴染みのない言葉ながら、グローバルでは「研究室に閉じこもるだけの学者ではなく、市場ニーズを理解して研究をビジネスに役立てている人」といった”誉め”のニュアンスで使われているのだとか。

日本に欠けている部分であり、逆に言えばこの「コマーシャル」な視点を持ちさえすれば、短期での世界攻略も十分ありうると感じました。