データセンターで使われるサーバー冷却装置の需要が世界的に高まっています。冷却装置は生成AIの普及に伴い拡大が見込まれます。今回はサーバー冷却装置の増産を発表したニデックを中心に関連企業を紹介します。
ニデックがサーバー用冷却装置の大幅増産決定
4月中旬、「 ニデック 」がサーバー用の水冷式冷却装置の生産能力を、2024年6月までに月200台から2000台に拡大すると発表しました。
急速に普及している生成AI(人工知能)サーバーは、大量のデータ処理で中核部品の画像処理半導体(GPU)の消費電力や発熱量が多いという特徴があります。
これまでのファンによる空冷式の冷却装置では大量のAI向けサーバーを冷却しきれないと予想され、今後はより高い冷却能力を持つ水冷式の冷却装置が主流となる見込みです。
・空冷式…従来型。ファンなどで空気を循環させて排熱する。
・水冷式…冷媒となる液体を循環させて排熱する。空冷式より効率的。
・液浸冷却…サーバーを直接液体に浸して冷却する。水冷式より効率的だが、費用面など課題もある。
同社の水冷式冷却装置は、ポンプや電源、回路基板などの重要ユニットが冗長性(余裕)を持つことでシステムの信頼性を確保していることに加え、ホットスワップ機能(保守時にシステムを停止することなくユニットの交換が可能な機能)を備えていることが特徴です。
今回、同社の水冷式冷却装置が米AIサーバーメーカーであるスーパー・マイクロ・コンピューターに採用されたことで生産能力拡大に踏み切りました。将来的には生産能力を月3000 台以上へ拡大することも検討しているとのことです。
ニデックは同関連製品の市場規模を2023年度100億円、2024年度には800億円以上と予想 しています。
各社が冷却装置などを展開
冷却装置には液浸冷却と呼ばれる絶縁性のある液体にサーバーなどを浸す方式もあり、より効率的に冷却できます。
「 三菱重工業 」と「 NTTデータグループ 」は「ラック型液浸冷却システム」を共同で開発しました。運用に課題があった従来のタンク型と異なり、空冷式の冷却システムと概ね同じ運用が可能なほか、省エネも実現できるなどのメリットがあります。
「 大成建設 」はタンク型の二相式液浸冷却システム「爽空sola」をRSI(東京・品川)と篠原電機(大阪市)と共同開発しています。
「 ENEOS 」は液浸冷却液「ENEOS IXシリーズ」を発売すると2月5日に発表しました。3つのラインアップでグローバル展開を狙うとしています。
米国では冷却装置関連企業の業績が拡大
生成AIの本場である米国では、サーバー向け冷却装置を生産する企業の業績拡大が話題になりました。米バーティブ・ホールディングスは4月24日の2024年1~3月期の決算発表でサーバー冷却装置など既存事業の受注が前期比で60%増加したと開示。決算発表資料で同社のジョルダーノ・アルベルタッツィCEO(最高経営責任者)は「AI主導の需要加速などが寄与した」と説明しました。
AIの急速な普及によるデータセンター需要の高まりで、冷却装置の市場も拡大し、国内関連企業の業績拡大にも寄与することが期待されます。