二酸化炭素(CO2)の排出削減への取り組みが世界的に注目されるなか、実質的にCO2の排出量をマイナスにする「カーボンネガティブ」を目指す技術が実用化段階に入っています。今回はコンクリートでカーボンネガティブに取り組む鹿島建設を中心に、企業の動きを紹介します。
鹿島が大阪・関西万博で環境配慮型コンクリートドームを建設
今年3月、「 鹿島 」が2025年国際博覧会(大阪・関西万博)で環境配慮型コンクリートドーム「CUCO-SUICOMドーム(クーコスイコムドーム)」を建設すると発表しました。
万博は「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」をコンセプトに、「持続可能な開発目標(SDGs)達成」を目指しています。鹿島はCO2を削減する新たな技術をもって参画します。
実はCO2排出量が多いコンクリート
建設業は建造物を造成する際に大量のコンクリートを使用します。そのコンクリートは、砂利と砂に、セメント、水を加えて作られます。主要材料であるセメントは、製造時に石灰石などの原料を高温で焼成するため、大量のCO2が発生。セメント産業からのCO2排出量は、建設資材全体の30%、日本全体でみても3〜4%を占めるといわれています。コンクリートから発生するCO2の削減は重要な課題です。
コンクリートのCO2削減には主に3つの方法があります。1つ目はセメントの使用量抑制によるコンクリート製造時のCO2削減。2つ目はコンクリート材料によるCO2の吸収、そして3つ目はコンクリートでできた構造物によるCO2の吸収です。
①セメントの使用量を抑制しコンクリート製造時のCO2を削減する。
②コンクリート材料によってCO2を吸収する。
③コンクリートでできた構造物によってCO2を吸収する。
技術開発を通じSDGs、カーボンニュートラル社会の実現に貢献
大阪・関西万博のドームで使われる環境配慮型コンクリートには、低炭素型コンクリートと、カーボンネガティブコンクリートの2つが採用されました。
低炭素型コンクリートは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトにおいて、鹿島などが共同開発。上記のコア技術①にあたり、一般的なコンクリートに比べ製造時に排出されるCO2を60%程度低減します。
カーボンネガティブコンクリートは、NEDO「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」のコンソーシアムで、鹿島が「 デンカ 」や竹中工務店と共同開発。②に該当し、従来のコンクリートと比べ、CO2を107%削減します。
鹿島は、「持続可能な開発目標(SDGs)達成」、「2050年カーボンニュートラル」社会の実現に貢献すべく、さらなる技術開発を進めていく方針です。
消波ブロックなどにも応用、専用プラントも
鹿島はカーボンネガティブコンクリートを軸に他社との協業も展開しています。
「 不動テトラ 」と共同でカーボンネガティブコンクリートの技術を活用した消波ブロックを製造。神奈川県熱海のビーチラインに設置され、海洋生物との親和性を向上させています。
また、「 日工 」や「 北川鉄工所 」などと共同でカーボンネガティブコンクリートの製造と実証を目的とした専用の製造プラントを建設し、運用を始めています。
その他、他社グループによるカーボンネガティブコンクリートの開発などの動きも活発化しています。
「 アサヒグループホールディングス 」傘下のアサヒ飲料は自動販売機で回収したCO2を使ったカーボンネガティブコンクリートを「 西松建設 」と共同で開発しました。
コンクリートがCO2を排出する存在から、CO2削減の大きな受け皿に変わる日も近いかもしれません。