以前紹介した日経平均株価のほかに、実はもう一つ日本株を代表する株価指数があります。それがTOPIXです。
日経平均株価よりなじみが薄い気がしてしまうかもしれませんが、実は皆さんが知らないうちにお世話になっているんです。
Tokyo Stock Price Index
TOPIXは”Tokyo Stock Price Index”の略で、「東証株価指数」と呼ばれます。
東京証券取引所(以下:東証)が毎営業日に1秒間隔で算出・発表している株価指数で、日経平均株価と同じように日本経済の動向を表す重要な株価指数です。
「単純平均か加重平均か」という区分では、加重平均指数です。TOPIXは、昭和43年1月4日における東証一部全体の時価総額を「基準時価総額」として、現在のTOPIX構成銘柄の時価総額がどれくらい増減しているのかを示す値でしたね。
なお、TOPIXを算出する際に使われる時価総額は「浮動株比率」が考慮されたものです。「浮動株比率」は市場で実際に売買される可能性の高い株式数が発行済み株式総数に占める割合のことです。市場での流動性を考慮した時価総額が用いられるということです。
構成銘柄の違い
日経平均株価に採用される銘柄は、東証プライム市場に上場している銘柄から、売買の活発さとセクターバランスを考慮して選ばれた225銘柄でした。一方TOPIXは、ちょっとややこしい状況です。かつては原則として東証一部に上場している銘柄すべてで構成されていました。東証は2022年4月4日に市場区分を「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」に再編しました。これに伴い、TOPIXの構成銘柄の条件は以下のようになっています。
2022年4月4日以降:選択した市場にかかわらず、2022年4月1日時点の構成銘柄は継続採用。ただし、流通株式時価総額100億円未満の銘柄については、「段階的ウエイト低減銘柄」として、2022年10月末から2025年1月末まで四半期毎に構成比率を引き下げる。
・プライム市場へ新規上場または市場区分変更をした場合
・TOPIX構成銘柄を旧会社とするテクニカル上場の場合
・整理銘柄に指定された場合や上場廃止した場合
・特別注意銘柄に指定された場合
10%
2022年4月の東証の市場再編では3つの市場の上場維持基準も変更されました。これに伴い、東証一部に上場していた企業でも、2022年4月4日以降はスタンダード市場所属を選んだ企業などがあります。このような企業がTOPIXに占める割合は2022年10月末から少しずつ減少しており、2025年1月まで減少が続きます。
耳慣れない言葉が一つありますね。「流通株式時価総額」です。「浮動株ベースの時価総額」に概念は似ていますが、厳密には計算の方法が違います。ここでは敢えて細かく触れないことにします。「流通株式時価総額」は、市場で流通している株式数で算出した時価総額だと理解してください。1銘柄当たりの構成比率に上限が設けられていますが、現時点でその水準に達している銘柄はありません。構成銘柄に変化が起きているものの、TOPIXは約2,000銘柄で構成されているので、1銘柄で10%以上を占めるような銘柄はないのです。
日本株の「ベンチマーク」としては、TOPIXの方がポピュラー
「日本株の株価指数といえば日経平均株価の方が有名だよね!」と思っていらっしゃる皆さん。それは決して間違いではありません。普段見聞きするニュースなどで真っ先に挙げられる日本株の株価指数は確かに日経平均株価です。
しかし、資産運用の世界では違った見方もできます。
前回、年金積立金管理運用独立法人、略称「GPIF」の資金運用について触れました。資産別に配分割合が概ね決まっていましたね。バッファーはありますが、4つの資産を均等に運用するのが基本です。
この、4つの資産クラスにはそれぞれ「ベンチマーク」が設定されています。国内株式のベンチマークは「TOPIX(配当込み)」です。
世界屈指の資金規模を持つ運用主体がベンチマークとして「TOPIX(配当込み)」を採用しているからでしょうか。他の日本株運用でもベンチマークとしては「TOPIX(配当込み)」を用いることが多いようです。頭の片隅に「運用の世界ではTOPIXの方がポピュラー」だと覚えておいてくださいね。
2024年7月、34年ぶりの高値をつけた
こちらは、1980年からのTOPIXの推移です。
TOPIXは1989年12月18日に付けた取引時間中の最高値2886.50をずーっと超えられずに時間が経過していました。
当時はいわゆる日本のバブル経済下にあり、株式市場が非常に好調でしたが、その後は低迷し、2012年には700を割る水準まで下がりました。この頃は、東日本大震災、超円高、欧州債務危機などが重なり、日本に限らず世界の株式市場が芳しくない時期でもありました。
それから約12年。アベノミクスや脱デフレ、空前の円安進行などの影響で、2024年7月についに最高値を更新しました。34年半ぶりのことです。1989年12月、筆者は大学1年生でした。その筆者は今50代半ばに差し掛かっています。ずいぶん長い時間が経過したものだと改めて感じさせる期間で、感慨深いです。その後8月に入ってからは乱高下しています。近いうちにまた「最高値更新」という言葉を聞きたいですね。
「TOPIX」資金の買いが期待されたから
前述したとおり、「TOPIX」はプライム市場に上場している銘柄が構成銘柄となる株価指数です。
日経平均株価やS&P500と同様に、TOPIXに連動して運用されている資金は多額です。そのような資金は新たにTOPIX構成銘柄になったものを買います。それは浮動株ベースの時価総額の規模に依るので、買いの規模はまちまちですが、プライム市場以外に所属していた銘柄たちなので、それまでは取引ボリュームがそれほど多くなかった銘柄がほとんどです。それが急にTOPIX資金が買う対象になるわけで、一時的には大きく株価が上昇することがしばしばありました。
かつて、筆者も「東証一部上場基準」とにらめっこしながら、東証一部に鞍替えしそうな銘柄をピックアップしていたものです。
遠くない将来に「人となり」が変わろうとしている
さて、そんなTOPIXですが、そう遠くない将来にルールが変わることが2024年に入ってから発表されています。
次回の記事ではそのルール変更と想定される影響について触れます。