株式市場で「都市鉱山」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は14.5%と、東証株価指数(TOPIX、8.8%高)を大きく上回りました(8月16日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
決算発表をきっかけに大幅高
「都市鉱山」とは、リチウムイオン電池や使用済み家電などリサイクルできる金属資源が残されている廃棄物の集まりです。都市にある鉱物資源の山になぞらえて「都市鉱山」といわれています。
都市鉱山関連株が上昇したきっかけは、8月8日から9日にかけて行われた決算発表や業績予想の上方修正です。好調な業績の背景は値上げの浸透や取扱数量の増加。世界的な物価上昇が取り扱っている非鉄金属にも波及、また、国内経済の回復により取扱数量が増加しているようです。
都市鉱山を巡っては、8月初めに、「政府がレアメタル(希少金属)の回収と再利用を企業に義務付ける」との報道がありました。レアメタルの海外流出を防ぎ、希少資源を国内で確保する狙いとみられます。リチウムイオン電池などの廃棄品である「都市鉱山」に関わるリサイクル事業などの需要拡大が期待されます。
通期業績の上振れにも期待【TREホールディングス】
上昇率首位の「 TREホールディングス 」は9日に発表した2024年4~6月期連結決算が大幅な増収増益となりました。資源リサイクル事業の取扱量増加や、能登半島地震の災害廃棄物の受け入れ、値上げの浸透などが寄与しました。現時点で25年3月期は純利益41%増を見込んでいるものの、能登半島地震の復興支援事業に関する業績への寄与は7~9月期以降に本格化する見通しで、上振れが見込めそうです。レアメタルの回収などが義務付けられれば、同社の事業拡大が見込めます。
自社株買いも好感【イボキン】
上昇率2位の「 イボキン 」は生産工程や建設現場から発生する廃棄物や使用済みになった機械類などを回収し選別・加工したうえで、再生資源として販売しています。小型電子機器や家庭用電気製品などの金属系産業廃棄物のリサイクルも手掛けています。9日に発表した24年1~6月期連結決算は純利益が前年同期比91%増と好調でした。風力発電所解体工事など、大型事業の進捗が寄与しました。併せて自社株買いを発表したことも好感されました。
業績予想上方修正+増配の動きも
「 三井金属鉱業 」は非鉄金属事業を主力に、製錬やリサイクル事業を手掛けています。主力製品の値上げなども業績を押し上げる公算が大きく、足元の業績も好調で、25年3月期連結業績や配当の見通しの上方修正を8日に発表しました。
「 松田産業 」はデータセンターのサーバーや大型コンピュータ、スマートフォンなど都市鉱山のリサイクル事業に注力しています。9日発表の24年4~6月期連結決算は売上高、純利益ともに前年同期比25%超の増収増益でした。貴金属リサイクルの取扱量が増加し、金相場が堅調に推移したのが収益を押し上げました。
「 エンビプロ・ホールディングス 」も金属やプラスチック、リチウムイオン電池などのリサイクル事業を手掛けています。人件費の増加に加え、火災の影響などで特別損失を計上したのが響き、9日に発表した24年6月期の連結純利益は減益となったものの、25年6月期は増収増益を見込んでいます。金属・廃棄物リサイクルを手掛ける主力の資源環境事業は集荷力を強化し、各事業が軒並み好調に推移する見通しです。
いずれの企業も今回伝わった政府の方針が実現すれば、成長に大きな追い風となるでしょう。
25年にも資源有効利用促進法を改正へ
中国商務省と税関総署は15日、半導体の材料や自動車、電子機器などの難燃剤に使われるレアメタル「アンチモン」や関連製品などを9月から輸出規制の対象にすると発表しました。日本はレアメタルのほとんどを輸入に頼っており、国際政治や経済情勢の変化によって、価格や供給量に変動が生じやすいという懸念を抱えています。
レアメタルの回収や再利用が義務化されれば資源の安定確保につながるため、「都市鉱山」関連銘柄の業績拡大のみならず、自動車や電子機器メーカーなどのコスト低減が期待できます。
経済産業省は25年の通常国会でレアメタルの回収や再利用の義務付けの根拠となる資源有効利用促進法の改正を目指すそうです。日本の産業全体に大きな影響を与える可能性が高いため、日々のニュースで最新動向をチェックして、投資判断に役立てたいですね。