テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、「無人物流網」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。
物流2024年問題、政府が対応策を公表
7月25日、政府は物流の2024年問題への今後の対応策を公表しました。ポイント還元で置き配の利用を促進し、再配達の削減を目指すほか、「送料無料」表示の見直しなども進めます。
また、今年10月からポイント還元実証事業を実施し、宅配の再配達率の半減(現在12%→年度内に6%へ)に取り組みます。宅配ボックスや置き配、コンビニ受け取り、ゆとりある配送日の指定などで再配達削減に協力した消費者へポイントを付与します。
送料の負担者を明記へ
実証事業は数ヵ月間行われる予定です。EC(電子商取引)事業者側からはアマゾン、「 楽天 」など、物流事業者側からは「 ヤマト運輸 」「 佐川急便 」、日本郵便( 日本郵政 )が参加する予定です。付与対象や付与額は事業者によって異なります。政府は原資として1配送当たり最大5円を補助する方針です。
さらに、ネット通販などで見られる「送料無料」表示を「送料込み」などの表示に改めることで、消費者の意識改革・行動変容を促します。「送料無料」の表示を行う際には、誰が送料を負担したのかを明記するよう求められることとなります。
2030年に物流の無人化
ほかに、物流の適正化に向けて悪質な荷主などを是正するため、国土交通省が創設した専門部隊である「トラックGメン」の機能を強化し、11~12月に集中監視を行うとのこと。トラックGメンを補助するGメン調査員の設置や荷主情報などのデータベース化に取り組む予定です。なお、政府では昨年7月に全国162人体制のトラックGメンを設置。これまでに計811件の法的措置を実施しています。
中長期では、無人化・自動化した物流専用の「自動物流道路」を10年後の2030年代半ばをメドに一部区間で実現することを目指します。その前段として、2027年度までに建設中の新東名高速道路の新秦野(神奈川県)~新御殿場(静岡県)間の路上で自動輸送カートを走らせる社会実験を行う予定。将来的には、物流の大動脈である東京~大阪間の長距離輸送を可能にする構想です。
物流関連企業にビジネスチャンス
物流現場で荷物を載せて運ぶパレット(荷役台)の利用に弾みがついているようです。パレットは商品や会社によって様々なサイズがあるため、これまでは荷物の積み替えの手間が生じていましたが、このほど国土交通省の有識者会議によって統一規格が設けられました。パレットのレンタル需要などがさらに増加することが期待されます。関連する企業は「 日本パレットプール 」「 ユーピーアール 」などです。
その他、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)では、WMS(倉庫・在庫管理システム)を展開する「 ロジザード 」、倉庫自動化システムの「 YE DIGITAL 」、また、空港・配送センターなど物流システムが主力で、EC向けが拡大中の「 トーヨーカネツ 」なども事業を展開しています。
(出典:日本証券新聞)