株式市場で「経営コンサルティング(経営コンサル)」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は2.3%と、東証株価指数(TOPIX、0.2%高)を上回りました(8月23日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
政府が規模の拡大を目指す中小企業を育成
経営コンサル関連株が上昇した背景は、経済産業省による中小企業育成策の推進です。
8月下旬、同省が「2025年度の税制改正で100億円以上の売上高など規模の拡大を目指す中小企業の設備投資に対し、有利な税額控除を受けられるよう要望する」との一部報道がありました。対象となる企業の経営者が達成のための計画を国に提出し、国が認定する仕組みなどを検討しているようです。
売上高100億円以上の企業(100億円企業)を目指すうえでM&A(合併・吸収)は有力な選択肢の1つと言えます。25年の税制改革で100億円企業を目指す企業に対する政府の支援が決まれば、M&Aなど中小企業を支援する経営コンサルタントの需要が増加していくとの期待が広がりました。
AIを活用したM&A支援【M&A総研ホールディングス】
上昇率首位の「 M&A総研HD 」はAI(人工知能)などを活用した完全成功報酬制のM&A仲介やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など業務効率化コンサルティングなどを手掛けています。独自のAI技術で最適な買収相手を導き出すシステムが強みです。成約した場合のみ費用が発生する料金体系も特徴です。
6日に発表した23年10月~24年6月期の連結決算では純利益が前年同期比85%増と好調でした。M&Aアドバイザーを106名採用し、成約件数は78%増の187件となりました。政府が税制改正で100億円企業を増やす政策に取り組めば、同社のM&A成約の拡大が見込めます。
本社移転で経営者との接点増【船井総研ホールディングス】
上昇率2位の「 船井総研HD 」は経営コンサルティングを中心に、M&AやDXのコンサルティングなどを手掛けています。定期的に訪問する「月次支援」サービスが主力で、同じ業種の経営者が情報共有する経営研究会も運営しています。M&Aは業種専門のコンサルタントが担当し、業界の動向を見ながら支援します。
8日に発表した24年1~6月期連結決算は純利益が前年同期比30%増と好調でした。本社移転効果で経営者の来客が増え、経営研究会の会員が増えたのが寄与しました。
海外進出のためのM&Aも
「 M&Aキャピタル 」は、オーナー経営者が得た株式譲渡対価に対して算定を行う成功報酬型の料金体系が特徴です。大型案件の減少で7月30日に24年9月期の業績見通しを下方修正したものの、連結純利益は前期比で増益を確保する見込みです。
「 フューチャーVC 」は子会社のFVCアドバイザーズがM&Aのアドバイザー業務を担っています。
「 フロンティアM 」は国内のM&Aや海外とのM&A、M&A後の経営統合のアドバイザリー業務などを手掛けています。
いずれの企業も経営コンサルティングやM&Aのアドバイザリー業務を手掛けており、税制改正の要望が実現すれば、計画立案やM&Aなどの需要増加が成長の追い風になりそうです。
中小企業の規模拡大は日本経済にプラス
日本の企業約337万社のうち99.7%が中小企業であり、その多くの未上場の中小企業は、後継者不足を背景とした廃業などを余儀なくされています。
技術力や販路などをもった中小企業が統合やM&Aを通じて規模を拡大し存在感を高めることは、日本経済や産業にとっても大きなプラスとなります。中小企業を支援する経営コンサルの役割は重大で市場での注目度も高まりそうです。