53年不動の一位「モスバーガー」に強敵の新定番現る?【後編】

発表!あの会社の気になるランキングNo.1!/ 日興フロッギー編集部

袋から滴りそうなミートソースとジューシーなパティのコンビネーションがたまらない「モスバーガー」。1972年の発売以来、モスの商品ランキングで53年間連続一位です。「持ち帰っても崩れない、キャストさんが作りやすいなどソースの粘度まで計算しているんですね」。商品開発のプロ、モスフードサービスの濱崎真一郎さんにおいしさの秘密をお伺いしました。
3年前より今が一番おいしい「モスバーガー」【前編】を読む

100種以上のラインナップで圧倒的№1はやはり「モスバーガー」

ーー「モスバーガー」は売上においても創業以来、不動の1位だそうですね。年間の商品ランキングを教えていただけますか。

年間1位が「モスバーガー」、2位が「テリヤキバーガー」、3位が「チーズバーガー」です。「モスバーガー」は圧倒的に強いですね。このランキングには「白いモスバーガー」などアレンジ商品も含まれますし、期間限定ならキャンペーン商品などが上回ることもあります。が、年間では53年間不動の1位です。食のトレンドが移り変わる中で創業から売上構成比も販売個数も大きく変わらないという、長年のファンに支えられた商品だと思っています。

モスには商品が100種類以上ありますが、単品の売上構成比でも「モスバーガー」は約5%と一番高いんです。メニューが10種類程度のラーメン屋さんならば1つの商品が半分を占めるかもしれませんが、100種の中での5%を維持し続けることはモスの中ではすごいことなんですね。

濱崎さんの個人的なベスト3は「テリヤキチキンバーガー」「スパイシーモスチーズバーガー」「ロースカツバーガー」だそう

ランキングのトップ3はしばらく変動がなく4位以下で「テリヤキチキン」「モス野菜バーガー」と続きます。テリヤキチキンはテリヤキバーガーのチキン版なんですけど女性ファンが多いですね。モス野菜バーガーはパティを使う商品なんですが野菜がたっぷり入って、こちらも一定層に人気があります。

ーー台湾で大人気の「モスライスバーガー」は日本のランキングには入ってこないのですね。

台湾のモスバーガーはトップ3すべてがライスバーガーで日本以上に人気があります。ライスバーガー自体の種類も多く、トップ10で半分くらいを占めていますね。台湾のお客様が日本の『モスバーガー』に来ると「ライスバーガーが少ないね」とおっしゃられますよ。なお、海外展開では台湾がもっとも多く約300店舗あります。

ともあれ、ライスバーガーはモスが元祖です。日本にも濃いファンの方はいらっしゃいまして2023年にはオンラインで「モスライスバーガー専門店」を開設しました。過去に販売した商品であったり、海外店舗限定商品のアレンジ品など、ここでしか味わえないラインナップで構成しています。

「白モス」で具材の順番を変えました

ーー不動の№1である「モスバーガー」のアレンジ「白いモスバーガー」が今夏も期間限定発売されました。過去に700万食以上売り上げたヒット作なのだとか。

同じ定番でもテリヤキバーガーに比べるとモスバーガーのアレンジは難しいのですが「白いモスバーガー」は3回目の発売になります。パティの下にもチーズソースが入っていて、前回よりチーズソース4割増しでの自信作ですね。

看板商品「モスバーガー」をアレンジし、4種のチーズソースをかけた「白モス」

ハンバーガーは組み合わせの食なんです。具材を乗せる順番をビルドといいますが「白いモスバーガー」はトマトの位置をあえて変えている。「モスバーガー」では一番上がトマトですが「白モス」はトマトが真ん中です。チーズソースとの相性や全体の味のバランス、同時にチーズの白さがバーガー全体を覆うといったビジュアルも商品設計に組み込んでいますね。トマトが上だとチーズソースが目立たなくなりますから。

注目の新商品「新とびきりチーズ」がモスの首位を奪還するかも

ーーチーズといえば、今年4月に発売した「新とびきりチーズ」も絶好調です。不動の1位だった「モスバーガー」を脅かしそうな勢いだとか。

今年はいよいよ順位が入れ替わるかも? と社内で話題になっています。予想販売数を超える勢いでして、この数ヵ月は「モスバーガー」の販売数を上回っています。これまで期間限定商品で「モスバーガー」より売れる商品はありましたが、定番商品では初めて。

「新とびきりチーズ」は2年前から準備してパティと価格帯を変えて今春から販売をスタートしました。2008年に発売した「とびきりハンバーグサンド」シリーズの後継にあたり、国産牛100%のパティに和風バーベキューソースとゴーダ、チェダー、パルメザンなど複数の北海道チーズを組み合わせています。

今春、定番の仲間入りをした「新とびきりチーズ」。北海道チーズと和風バーベキューソースが食欲をそそる

ーー「新とびきりチーズ」がこれだけヒットしている理由は何でしょうか?

「新とびきり」シリーズは定番と同時発売でベーコンを加えた期間限定メニューも打ち出していました。話題性の意味で注目度が高くなったということが1つあると思います。

もう1つは価格帯ですね。当社のバーガーは300円~400円台のハンバーガーから600~700円台までと価格レンジをグラデーションで分けているのですが「新とびきりチーズ」は690円です。参考までに「モスバーガー」は440円。国産牛100%のパティを使用した「新とびきりチーズ」は以前であれば、高価格帯と言われるような商品ですが、昨今のインフレの影響もあり、消費者の価格に対する感覚が変わってきたように思います。提供する側として申し訳ない思いもありつつ690円という値付けが、適正価格であり手の届く範囲内になってきているのではないかと感じますね。この味ならば690円を出す価値はあると思ってもらえたのかな、と。

あえて二兎を追う!「モスバーガー」に続く定番を作る

ーー会社としての戦略もお聞きしたいです。圧倒的№1である「モスバーガー」を超えるものを作りたいという思いがあるのでしょうか。それとも、やはり「モスバーガー」を中心とした商品作りを意識していくのでしょうか。

両方ですね。創業当時30歳だった方は現在80代になっていらっしゃいますが、ありがたいことに今でも「『モスバーガー』が大好き」と言ってくださる方が非常に多いんです。ファンの方にご満足いただく味を今後も変わらず提供したいですし、これからもたくさん食べて頂きたいというのがわれわれの思いとしてあります。一方で、商品開発チームとしては「モスバーガー」だけに依存せず、それを超える新しい定番を作っていくことが必要だと感じてきました。目新しいことをやるといってもハンバーガーのイメージを崩しすぎてもいけませんし、定番を超える商品をなかなか生み出せないジレンマもありました。だからこそ、超える予感のある今、積極的に訴求していきたと思っています。「モスバーガー」を中心にしつつ、「モスバーガー」を超える定番も作る。二兎も三兎も追う勢いでやっていきたいですね。

カエル先生のデータバンク

モスフードは、中長期のビジョンを「『心のやすらぎ』『ほのぼのとした暖かさ』をお届けし、世界が注目する外食のアジアオンリーワン企業へ」と定めています。その実現に向けて、「Challenge & Support」をスローガンに、お客様のニーズに合わせた商品開発やマーケティング、地域に根差した店舗運営を推進しています。 “おいしさ”と“あんしん”にこだわった「MOS品質」や、モスバーガー独自のフランチャイズシステムと研修制度、世の中にマッチした革新的な商品は、50年を超える歴史の中で「モスの強み」に育っています。

濱崎真一郎(はまさき しんいちろう)さん
商品本部 商品開発部長。1995年の入社以来一貫して店舗連携に直接関わり、2018年にはチェーン内の教育機関「モスアカデミー」を設立するなど、店舗レベルと顧客満足度の向上に従事。2020年より商品開発部長に就任し、お肉が食べられない人でもハンバーガーを楽しめる「ソイパティ」のアップデートや、4種のチーズを使用した「白いモスバーガー」など画期的なヒット商品を連発。
モスフードサービス