マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は、日米の金融政策と、足元で業績の改善が期待できる銘柄について解説します。
月初から大荒れの展開となった8月の日本株市場。日米の金融政策をめぐる思惑などから為替も大きく変動し、ドル円は急ピッチで円高方向に進みました。それぞれ政策の方向性を確認しながら、今後のマーケットを見通していきましょう。
8月の日本株市場
8月30日の日経平均株価は3万8647円、前月末比454円安でした。
7月31日に日銀が利上げを決定し急速に円高が進行したことや、7月の雇用統計を受けて米景気の後退が懸念されたことから日経平均は大幅続落。5日の終値は前週末比4451円安の3万1458円と、過去最大の下げ幅となりました。ただ、翌6日には3217円高と過去最大の上げ幅を記録し、売られすぎによる買い戻しの動きが広がりました。
14日には、岸田首相が自民党総裁選への不出馬を表明しました。それにより、10人以上が立候補への意欲を示す乱立状態となっています。総裁選は9月27日(金)に投開票が予定されていますが、金融政策運営については各候補で利上げに前向きか慎重かのスタンスが異なるため、誰が総裁に選ばれるのか、注目が集まりそうです。
日米の金利差縮小で円高ドル安が進む
23日には主要中央銀行の首脳や経済学者が集う経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開かれ、パウエルFRB議長が講演で「政策を調整すべき時が来た」と発言。9月の会合で利下げに踏み切る考えを示唆しました。利下げが米景気を下支えするとの見方から、米主要株価指数は揃って反発しました。
また同日、日銀の植田総裁は衆参両院の閉会中審査に出席し、今後も追加の利上げを進める姿勢を示しました。日米の金利差が縮小するとの見方から円高・ドル安が進み、26日の円相場は一時1ドル143円40銭台を付けました。
なお、米の利下げペースについて、市場では2024年内に0.25%pt換算で4回強と、やや性急な利下げペースが織り込まれている点には注意が必要です。これは米景気の後退懸念が高まったことが背景にありますが、今後利下げペースが修正される場合は、市場に相応のインパクトを与える可能性がありそうです。
円高や国内消費の高まりが追い風となる銘柄は?
円安が一巡したことで、今後国内では輸入物価の上昇によってもたらされたインフレが沈静化していくことが予想されます。また、6月の実質賃金(労働者が受け取る賃金から物価上昇分を除いたもの)は前年比+1.1%と27ヵ月ぶりに増加しました。実質賃金プラス化の定着には時間がかかる見通しですが、賃上げの波が広がることで、国内消費の回復にも期待がかかります。
輸出関連企業の多い日本株は、円高により業績の伸びしろが縮むことが意識されるため、短期的には上値の重い展開となりそうです。ただ個別銘柄を見ていくと、円高で恩恵を受けそうな銘柄もあります。国内首位の家具・インテリア製造小売りチェーンの「 ニトリHD 」は、実勢レートよりも円安の想定で商品設計をしているため、円高進行が業績にプラスとなる可能性がありそうです。また輸入品を加工する「 ニチレイ 」や「 日本ハム 」などの食料品株も、業績への恩恵が期待できそうです。
エービーシー・マート
セリア
アダストリア
クスリのアオキHD
ラウンドワン
リゾートトラスト
パン・パシフィック・インターナショナルHD
円高で輸入コストが低下する小売業や食品、国内消費の高まりが追い風となるサービス業など、外部環境の変化が業績にプラスとなりそうな企業はチェックしておきたいですね。