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統合報告書2023
2023年度決算説明会資料
2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
2024年度 第1四半期決算説明会 資料
2025年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
第53回定時株主総会招集ご通知の補足資料
今回取り上げるのはファナック株式会社です。
事業内容と業績のポイント
それでは早速事業内容を見ていきましょう。
ファナックの部門は以下の4つです(統合報告書2023 P4参照)。
②ロボット部門:CNCとサーボの基本技術を応用して、アームを自由に制御する事で多様な作業を自動化するロボットを提供
③ロボマシン:CNCとサーボの基本技術を応用して、小型切削加工機(ロボドリル)、電動射出成形機(ロボショット)、ワイヤ放電加工機(ロボカット)などを提供
④サービス:①~③の製品の保守サービスなど
ファナックは日本の民間では初めてNC(Numerical Control)とサーボ(速度と位置を制御する製品)の開発に成功した企業であり、そのCNCやサーボは、世界中の工作機械に搭載されています(統合報告書2023 P7参照)。
さらに、その技術を応用することでロボットやロボマシンとしても提供している企業です。そしてCNCやロボット、ロボドリルやロボショットなどは世界トップクラスのシェアです。
2024年3月期時点でのそれぞれの部門別の売上構成は以下の通りです(2023年度決算説明会資料 P6参照)。
②ロボット:47.9%
③ロボマシン:13.0%
④サービス:16.4%
どの事業も一定の規模があり分散した構成ではありますが、ロボット事業が主力です。
全て工場の自動化を支える製品ですから、工場の自動化などの設備投資需要による影響を受けやすい企業だと分かります。
続いて市場別の売上構成は以下の通りです(2023年度決算説明会資料 P7参照)。
②米州:28.6%
③欧州:21.2%
④中国:21.6%
⑤アジア(中国以外):14.1%
⑥その他:1.3%
最大規模は米州市場ですが、各国で分散した構成です。海外比率は86.8%ですからグローバル市場動向の影響を受けやすいことが分かります。また、円安が進む中では好影響が期待されますので、為替の動向にも注目です。
続いてファナックの業績を見ていくと、2024年3月期の営業利益は1419億円なのに対して経常利益は1818億円と営業外利益が大きくなっています。その要因は、受取利息や配当金が計68億円ほどある事も影響していますが、それ以上に大きいのは持分法による投資利益が275億円あるためです(2024年3月期 決算短信 P10参照)。
主要な持分法適用会社は北京と上海ファナックです。主力市場の1つである中国市場では、大きな規模で事業を行う北京と上海のファナックの利益の一部が持分法による投資損益として計上されているため、それを含んだ経常利益や純利益の動向が重要ということです(第53回定時株主総会招集ご通知の補足資料 P5参照)。ファナックの業績を見る際は、持分法による投資損益を含んだ「経常利益」や「純利益」が重要です。
それでは、近年の業績の推移を見ましょう(2023年度 決算説明会 資料 P3参照)。
2017年度以降の業績の推移を見ると、2017年度~2020年度までは減収減益傾向が続いています。
それ以降は2022年度までは増収増益が続いていますが、利益面では2017年度には及ばない水準で推移していて、2023年度に関しては減収減益です。
ではその原因を見ていきましょう。2017年度~2018年度の業績悪化の要因は米中の貿易摩擦です。米中の対立が激化する中で、主力の中国市場が苦戦したことで業績は悪化傾向になりました。そして2019年度では、米中貿易摩擦に加えて中国市場でいち早く新型コロナの影響が出始めたことで業績はさらに低迷しています。しかし、2020年度以降は中国経済の回復が早かったことで業績は改善傾向となり、その後は他国の市況も改善する中で、2022年度までは業績の改善が続いています。
とはいえ半導体不足によるファナックの生産面への悪影響、主要顧客の1つである自動車関連市場でも生産の低迷、社会情勢不安によるサプライチェーンの混乱などが続く中で、利益面は2017年度の状況には及ばない状況で推移しました。それでも業績改善は進んでいましたが、2023年度に関しては改めて減収減益となり、業績の回復は停滞しています。
ではどうして2023年度は苦戦していたのか、その要因をもう少し詳しく見ていきます。
2023年度の状況は、半導体不足による生産活動への影響は落ち着きを見せました。しかし、世界的なインフレや金利上昇による景気減速懸念などがあり、2022年度の下期からは在庫調整が続くことも影響を及ぼしている、としています(2024年3月期決算短信 P2参照)。
続いて部門別の売上の推移を見ると、主力のロボット部門は拡大したもののFA部門やロボマシン部門は減収です(2023年度決算説明会資料 P6参照)。
FA部門では、CNCの主要顧客である工作機械業界が世界各国で減速傾向が見られたことで苦戦しています(2024年3月期 決算短信 P2参照)。同じように工作機械などを提供するロボマシン部門でも、海外市場の低迷やIT関連向けの需要が落ち込み苦戦しました。唯一ロボット部門は好調でしたが、これは欧米が前期からの受注残によってEV関連と一般産業関連が増収になった影響が大きかったようです。
中国では、好調だったEV関連が若干下降気味で、インフラ関係や電子産業向けも低調でした。受注残の消化による増収の側面が大きく、ロボット部門も好調とは言えない状況だったことが分かります(2024年3月期 決算短信 P3参照)。
また、地域別の売上の推移を見ると、受注残が堅調に消化された欧米は増収となっていますが、国内やアジアが若干の減収となり中国市場が2456億円→1716億円までの大幅減収となっています(2023年度 決算説明会 資料P7参照)。工場が多く需要が大きい中国市場の景気低迷による苦戦が業績悪化の要因となっていたということが分かります。
しかしながら地域別の受注高の推移を見ると、中国からの受注は2023年度の第4四半期には前期比では▲39.2%と低迷が続くものの、前四半期比では+12.6%となり2023年度では第4四半期が受注額としても最大となっています。受注総額でも低迷傾向は続くものの、第4四半期は改善が見られており、底打ち傾向にはあることが分かります(2023年度 決算説明会 資料P11参照)。
このまま回復傾向が続くか、特に中国市況の動向には注目です。
また、堅調な状況が続く北米市場では、総額2億5000万ドルの積極投資を進めていて、2025年3月期も新拠点が竣工しています。投資を進める北米市場の動向にも注目です。
ここまでのまとめ
・ファナックは、FA、ロボット、ロボマシン、サービスの4部門で構成され、ロボット事業が主流
・売上高規模は米州が最大で、海外比率が86.6%。円安は好影響となるため、為替動向に注目
・中国市場の景気低迷が業績悪化の要因になっているが、2023年度は第4四半期で改善が見られ、底打ち傾向
・新拠点も竣工し、投資を進めている北米市場の動向に注目
直近の業績
それではファナックの状況が分かったところで、直近の業績を見ていきましょう。今回見ていくのは2025年3月期の第1四半期の業績です。
営業利益:330億円(+1.1%)
経常利益:411億円(▲1.3%)
純利益:288億円(▲5.0%)
減収で営業利益は増益となりましたが、ファナックの業績を見る際に重要な経常利益や純利益は減益と苦戦傾向が続いています。
四半期ごとの業績の推移を見ても、前四半期比でも減収減益と低迷傾向が続いていて、苦戦傾向が続いている事が分かります。
事業環境としても設備投資需要の回復の動きが見られるものの、リスクが高い状況は続いているとしています。在庫調整に関しても適正在庫状況に戻りつつあるものの、一部ではまだ在庫調整が継続しています(2025年3月期 第1四半期決算短信 P2参照)。市況改善の動きは見え始めているものの、十分な状況ではないということです。
もう少し詳しく部門別も見ていきましょう。売上の前年同期比は以下の通りです。
②ロボット:▲12.8%
③ロボマシン:+14.4%
④サービス:+12.2%
FA部門やロボットが苦戦した状況です。
FA部門に関しては、工作機械の需要は一部回復基調や堅調な市場があるものの、全体としては低調に推移していて、そういった市況の中で苦戦しています(2025年3月期 第1四半期決算短信 P2参照)。
ロボット部門では、国内では自動車向けで回復傾向が続き、欧米でも自動車関連は前期からの受注残で堅調だったものの、一般産業向けが若干低調、中国ではEV関連が下降気味で、インフラ関連と電子産業向けも低調に推移した事で苦戦しています。
そしてロボマシン部門では、ロボドリルの低迷や、ロボカットで欧州向けの出荷停止があったものの、ロボショットでは中国の需要増があった事で増収になっています。景気が低迷する中国市場ではロボット部門を中心に苦戦傾向は続いていますが、一方で、ロボマシン部門では需要増加が見られるように一部需要回復の動きがあります。
四半期ごとの地域別の売上の推移を確認すると、中国市場では前期比では▲17.4%と苦戦は続くものの、前四半期比では+11.8%と一定の改善が見られます。前年同期比から受注面の回復も起きていて、中国市場では一定の改善傾向は見られているということです。
地域別の受注高の前年同期比は以下の通りです。
②米州:+20億円
③欧州:▲48億円
④中国:+130億円
⑤アジア(中国以外):+83億円
景気停滞も見られる欧州は苦戦していますが、それ以外の地域は増加していて、特に中国やアジア(中国以外)が大きく伸びています。中国市場を中心に受注回復が続いて、業績改善の兆しが見えてきたことが分かります。
そういった中で、実際に通期予想に関しては、減収で経常利益や純利益は減益を見込む予想ではあるものの、上方修正を行っています。不安定な状況が続き、一定の苦戦傾向が続く可能性はあるものの想定以上の回復が進んでいることが分かります。
また、為替に関してもドル円の想定レートは135円→147.72円へと修正しており、第2四半期~第4四半期の想定レートは145円となっています。直近では、為替は非常にボラティリティが高い状況になっていますので為替面の推移には注目です。
ということで、中国の経済動向や為替など市況の変化には特に注目です。
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