おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

小説でお金と経済の本質がわかる! 考えさせられる台詞も多く、世代や投資レベルを問わず発見のある一冊です。

初心者も中級者も! 経済の「そうだったのか!」がわかるマネー小説

この本は、もともと現役記者がわが子のために書き、家庭内で回覧して読んでいた代物。お金の知見を広げながら成長していく中学生の物語です。

著者いわく「貨幣ができてせいぜい数千年。人類はまだまだお金に慣れていない。だからこそ、お金との距離感を学び上手に付き合えるようになってほしい」。

執筆の動機からして、対象が子どもだけでないことがわかります。マネー本が大好きな自分も、読後に目からウロコ一枚落ちた感がありました。

劇中では、とあるクラブの中学生に顧問がお題を出します。「あなたのお値段おいくらですか?」「正しい借金の仕方は?」「お金を手に入れる方法『かせぐ』『ぬすむ』『もらう』以外に何がある?」ーー。

答えを出すまでに中学生は紆余曲折します。これがちょっとした謎解きミステリーのようで、読む手が止まりません。ノウハウ小説はバランスが難しく、教養部分を優先すると物語が説明っぽくなりがちですが、本作はストーリー運びよし、顧問の先生や子どもたちの造形もよし。

基礎にとどまらず、経済学者ピケティの不等式「r>g」(経済成長より投資で儲かるペースの方が早いという理論)まで小説内に落とし込むセンスは見事です。

本作には資産運用会社の社長も登場しますが「市場の動きは「神の見えざる手」。われわれの仕事はいってみれば神様のお手伝いです」なんて洒落たことをいう。かと思えば、会社のモットーは「大口の顧客お断り」。断ったら損では? という中学生に対し「解約する時も大口になる。腰を据えて投資できる会社を選びたいからドタバタしたお金とは相性が悪い」と解説。

フィクションとはいえ、理想的な投資信託の有り様がわかった気がしました。大人なら知っているであろうお金の知識も、作者が自分の言葉で語るので「そういうことか」と腑に落ちやすい。経済社会の大前提として「生まれた時には既にできあがった世界が回っている。誰もがそこに遅れて参加する」なんて名台詞も多し。

ストーリーの持つ影響力は年代問わず大きい、と改めて感じました。