株式市場で「レストラン」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は3.5%と、東証株価指数(TOPIX、1.9%高)を上回りました(9月20日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
インバウンドが好調で需要増
レストラン関連株が上昇したきっかけは、好決算や良好な月次売上高の発表です。好調の背景には増加するインバウンド(訪日外国人)と、日本食への関心の高まりがあります。
インバウンドについては、日本政府観光局(JNTO)が9月18日に発表した「訪日外客統計」によると、8月の訪日外国人旅行者数は前年同月比36%増の293万3000人と、7ヵ月連続で同月過去最高となりました。台風7号による航空便欠航などの影響があったものの、中国からのインバウンドが2倍になるなど引き続き好調でした。
また、観光庁が発表した訪日外国人消費動向調査の2023年の年次報告書によると、「訪日前に最も期待していたこと」は「日本食を食べること」が36%で首位でした。健康志向の高まりなどからインバウンドの日本食への関心は高く、インバウンド増加でレストラン関連企業の更なる業績拡大が期待されたようです。
海外展開への布石にも【エターナルホスピタリティグループ】
上昇率首位の「 エターナルホスピタリティグループ 」は焼鳥チェーンの「鳥貴族」や国産チキンバーガー専門店の「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」などを手掛けています。アジアや米国など海外事業の拡大も目指しており、インバウンドへの焼き鳥の認知度向上は海外展開への重要な布石となりそうです。
13日に発表した24年7月期連結決算は国内への継続出店が寄与し、大幅な増収増益となりました。連結配当性向20%以上を目安とする累進配当も発表したほか、19日に発表した27年7月期までの中期経営計画で売上高600億円の1割にあたる海外売上高60億円を目指すことなども好感されました。
レストランとホテルでインバウンドを両取り【ひらまつ】
上昇率2位の「 ひらまつ 」は大都市を中心にフランス料理や日本料理などの高級店をレストランや料亭、カフェなどの業態で運営するほか、料理に強みを持つ婚礼事業やホテル事業も手掛けています。
13日に発表した24年8月の売り上げ速報は既存店売上高が前年同月比15.7%増と好調でした。レストラン事業だけでなくホテル事業でもインバウンド需要を取り込み、ホテルの長期利用も増加しています。
外国人の関心は「コト消費」へ
「 DDグループ 」は知的財産(IP)を活用するなどコンセプトが異なる飲食やアミューズメント事業のほか、ホテルや不動産事業も手掛けています。13日に発表した24年8月の既存店売上高は前年同月比6.4%増でした。
「 クリエイト・レストランツ・ホールディングス 」は居酒屋「磯丸水産」やしゃぶしゃぶ食べ放題の「しゃぶ菜」、ラーメン店「つけめんTETSU」など多様な飲食店を展開しています。
「 きちりホールディングス 」も「いしがまやハンバーグ」や「肉の満牛萬」などを経営しています。
いずれの企業も日本食やIPなどインバウンドが興味を持つ飲食店を展開しています。インバウンドの関心はモノを所有することを重視する「モノ消費」から飲食などの体験を重視する「コト消費」に移行しているなか、日本食に興味を持つ外国人を上手く取り込めれば業績の拡大が期待できそうです。
帰国したインバウンドによる需要を狙う
上昇率首位の「エターナルホスピタリティグループ」のように、国内での出店が頭打ちになりつつある飲食店の中にはさらなる収益を求めて海外進出する企業もあります。
2023年10月に農林水産省が公表した「海外における日本食レストラン数の調査結果」では、海外の日本食レストランは2021年から約2割増の18万7000店でした。最も出店数の多いアジアは約20%増だったほか、日本のアニメが人気になっている中南米は約2倍になるなど好調です。アニメキャラクターなどのIPの活用も効果がありそうです。
インバウンドが日本食を楽しんで帰国すれば海外売り上げも期待でき、レストラン業界の収益向上が見込めるでしょう。