株式市場で「防疫」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は2.0%と、東証株価指数(TOPIX、1.7%安)に対して逆行高となりました(10月4日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
秋冬に増加、更なる拡大を警戒
防疫関連株が上昇した背景は、全国的なマイコプラズマ肺炎の流行です。国立感染症研究所が10月1日に発表した9月16〜22日の週の感染症発生動向調査で、マイコプラズマ肺炎の報告数は調査対象の1病院あたり1.48件と今年最大となりました。6月3〜9日の週ごろから増加傾向にあり、過去5年間の同時期と比べてかなり多い状況です。
マイコプラズマ肺炎は「肺炎マイコプラズマ」という細菌への感染で、長期にわたるせきなどの症状を引き起こす呼吸器感染症です。例年、患者の約80%が14歳以下の若者ですが、成人の報告もあるようです。
秋冬に増加する傾向があり、今後の更なる感染拡大を警戒し予防する必要性から、感染症対策の「防疫」関連銘柄の業績上振れへの思惑が広がりました。
マスクで飛沫を防ぎ、抗菌剤や電解水で除菌【興研】
上昇率首位の「 興研 」は、医療用では銅を用いた抗菌剤「イマディーズ」や顔にフィットしやすいマスク「ハイラック」、除菌や洗浄効果のある電解水を生成する装置「オキシライザ」などを製造・販売しています。
マイコプラズマ肺炎の感染経路は、感染した人の咳の飛沫(ひまつ)を吸い込む飛沫感染や、感染者との接触による接触感染があると言われています。マイコプラズマ肺炎患者が増加すれば、医療機関を中心に抗菌剤や電解水などの除菌や飛沫感染を防ぐためのマスクの需要が増加し、同社の収益拡大が見込めそうです。
非接触で体温を測定【日本アビオニクス】
上昇率2位の「 日本アビオニクス 」は、体の皮膚温度をリアルタイムに計測し発熱を確認する赤外線サーモグラフィーを手掛けています。非接触で体温を測定できるうえ、複数人の同時測定もできます。マイコプラズマ肺炎は発熱を伴うため、建物の入口での体温測定により感染者との接触を回避でき、感染拡大を抑制できます。
マスク需要が再び拡大か
「 重松製作所 」は、米国労働安全衛生研究所(NIOSH)の規格「N95」に適合する医療用高機能マスクやフェイスシールドなどを製造しています。
「 川本産業 」は、医療機関や一般家庭向けに、それぞれ消毒液やマスク、感染症対策の手袋などを手掛けています。
「 日本エアーテック 」は、感染症対策に特化した空気清浄機などのメーカーです。
新型コロナウイルス禍ではマスクの品薄などが話題になりましたが、マイコプラズマ肺炎などが流行すれば、感染症の対策製品は再び需要の拡大が見込まれます。
手足口病やインフルエンザの流行にも注意
国立感染症研究所の調査によると、乳幼児がかかりやすい手足口病の感染も過去5年と比べてかなり多い水準です。新型コロナウイルス感染症流行後の2021年から2023年は、9~10月に報告数がピークを迎えています。
また、毎年流行する季節性インフルエンザは過去5年間と比較して多くありませんが、8月19日の週以降は増加が続いています。あわせて注意が必要です。
新型コロナウイルス禍を経て感染症対策への意識が高まっており、マイコプラズマ肺炎などへの対策でも「検査キット」関連銘柄(『感染症急拡大でニーズ増 「ウイルス検査」関連株が上昇』)とともに、「防疫」関連銘柄の業績拡大が期待できそうです。