社会をよくする投資入門 経済的リターンと社会的インパクトの両立

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

「お金を増やす」ことと「よい社会をつくる」ことは両立できる! 1万人以上のお金を見てきたプロによる、新時代の投資本です。

お金を増やしながら社会をよくする投資力

著者が代表を務める鎌倉投信は①本社は鎌倉の古民家②直販しかしない③日本の「いい会社」にしか投資しないーーというコンセプト。本書のタイトル通り「社会をよくする投資」に軸足を置いてきました。「それで儲かるの?」と言いたくなるかもしれませんが、2010年のスタート以来、なんと約120%の成長率! コロナ禍後の顧客の資産状況はほぼ100%でプラスになったという実績つきです(2021年3月末時点)。

投資の成果はリスクとリターンという2つの尺度で語られますが、数字のみの追及はリーマン・ショックなどの大暴落を引き起こしかねません。社会変化を鑑みても「お金を増やすことだけを考えた投資」はそろそろ限界で、リスク・リターンではない、「お金以外の価値を増やす」3つ目の軸が重要になると問いかけます。

内容は投資初心者にも実践的です。「なぜ株式投資か。貯蓄ではダメ?」のくだりから始まるのですが、普通預金に100万円預けたとして今の金利で2倍になるのは3500年後! かつインフレ下で購買力は維持できない。物価の上昇に強い株式投資が第一の選択肢になることを力説します。

さらに深掘りし「とりあえずインデックスで投資していないか?」の問いかけにギクリとする方は少なくなさそう。今夏、大暴落を経験した身としては「予測せずに投資を継続せよ」のアドバイスが刺さりました。

金融市場の反応を的中するのはプロであっても至難の業。素人が対策できるのは「予測に左右されない投資の枠組みを作ること」。価値のある会社であればなおのこと、値下がりを恐れるよりも値上がりのタイミングを逃さないことの方が大事だといいます。

もちろん、「社会をよくする投資」の具体例も豊富(個別株投資を推奨するものではない、との断り書きはありますが)。バイオ燃料を開発する「ユーグレナ」、死亡事故ゼロを目指し運転支援システムを開発中の「SUBARU」、プラスチックトレーのリサイクルで先陣を切ってきた「エフピコ」など、さまざまな会社の逸話は、ビジネスの雑学としても興味深く読めます。