世界最大の不動産市場を持つ米国の不動産投資信託(REIT)。米国の内需成長を享受できることなどから多くの投資家の関心を引きつけています。しかし、個人投資家にとって、海外の不動産市場を直接分析し投資することは容易ではありません。今回は、フィデリティ投信のUSリート・ファンドについて、フィデリティ投信のシニア・プロダクト・スペシャリスト早藤寛記さんにお話を伺いました。
「 フィデリティ・USリート・ファンド(資産成長型)C(為替ヘッジあり) 」
「 フィデリティ・USリート・ファンド(資産成長型)D(為替ヘッジなし) 」
米国REIT市場の特徴と魅力
まず、「米国REIT」とは米国のさまざまな不動産を保有する「上場投資信託」という制度のことを指しています。その上で、USリート・ファンドはそうした米国REITに分散投資するファンドになります。REITは実際の不動産を直接保有し、その賃料収入を投資家に還元する仕組みです。
REITの保有対象不動産として、オフィスや住宅、ショッピングセンターなどは当然含まれますし、裏方として生活を支えている施設も入っています。たとえば、インターネットを支えるデータセンターや、通信機器を支えている電波塔、物流施設、介護施設などあらゆる施設が保有対象と言えます。
REITの大きな特徴は、着実な賃料収入に支えられている点です。株式のリターンがほとんど値動きによるものなのに対し、REITは半分程度が配当収入で占められています。これは、不動産のテナントが払う賃料に支えられているためです。
また、REITには税制優遇制度があり、賃料収入の90%以上を配当として払い出すと、法人税が大幅に免除されます。そのため、高い配当収入が期待できるのが株式との大きな違いです。
より純粋に米国経済の恩恵を受けるのが米国REIT
米国は先進国で唯一人口が増え続けている国です。人口が増えれば住む場所、働く場所、ショッピングする場所が必要になります。そのため、米国経済の拡大とともに、米国REITも成長していく可能性が高いです。
また、米国株式の場合、海外売上高比率が約40%あり、実は米国以外の経済のリスクも取っていることになります。一方、米国REITは地元のテナントから賃料収入を得ているケースが多く、より純粋に米国経済の成長の恩恵を受けることができます。
さらに、米国REIT市場は日本のREIT市場の10倍以上の規模があり、投資対象の種類も豊富です。日本のREIT市場が約14兆円程度なのに対し、米国は約170兆円規模です(2024年8月末時点)。この規模の差が、投資の多様性と流動性の違いにつながっています。
物件の「質」と、経営者の「質」を見る
USリート・ファンドは約140銘柄ある米国REIT市場の中から、より優れていると判断した銘柄、現在約35銘柄に厳選投資をしています。もちろん、徹底した分散を行っているほか、住宅REIT、ショッピングセンターなどの小売りREIT、物流施設、データセンターなど、様々なタイプのREITを保有することで、単一のテーマリスクに偏ることを防いでいます。
運用チームは1986年から約40年の歴史があり、REIT専任のチームだけでも14名ほどいます。さらに、フィデリティの強みを活かし、900人程度いる運用プロフェッショナルの知見も活用しています。これは単なる情報共有にとどまらず、各業界の現状分析や将来のトレンド予測、個別企業の成長性評価にまで及びます。
また、REITの経営陣との面談や保有する主要物件の視察、テナントの信用分析まで行う徹底したリサーチも特徴のひとつです。総合運用会社だからこそできる、幅広く深いリサーチ体制を有しています。
そして、銘柄選定の基準については、物件の質と経営者の質、この二つが最も重要だと考えています。物件の質は立地やテナントの信用力で判断し、経営者の質は過去の実績や将来の戦略を評価しています。
多様化するREIT投資の最前線
現在、特に注目しているセクターは以下の通りです。
一方、オフィスセクターについては、テレワークの定着により需要が減少しているため、2022年12月から非保有としています。米国REIT市場全体の見通しについては、現在、REITの平均入居率は過去最高水準にあると言われており、賃料収入の成長率も長期平均を上回っています。また、財務健全性も高いことから、負債が高まってREIT自体が倒産してしまうといったリスクも足下においてはそれほど高くないと言えます。
金利の低下傾向は、基本的にREIT市場にとってポジティブな影響があると考えています。その理由として、資金調達コストの低下が挙げられます。REITは不動産投資のために借入を行うことが多く、金利低下は資金調達コストの減少につながり、収益性の向上が期待できるからです。
また、金利が低下すると預金金利なども下がるため、REITの配当利回りの相対的な魅力が高まることによって、投資家の資金がREIT市場に流入する可能性があります。実際、過去のデータを分析すると、金利低下局面では米国REITは米国株式を上回るパフォーマンスを示す傾向が見られます。ただし、短期的には金利動向以外の要因も市場に影響を与えるため、常にこの傾向が当てはまるわけではありません。
一方で、金利低下が景気後退懸念を反映している場合、テナントの事業環境悪化によるREITの収益低下リスクにも注意が必要です。そのため、マクロ経済環境全体を見極めながら、個別のREITの質や財務状況を精査することが求められており、当ファンドではこうした金利環境の変化も考慮しつつ、質の高いREITを選別したうえで、ポートフォリオを構築しています。
長期的な視点で米国の繁栄に投資する
USリート・ファンドは、着実な賃料収入を裏付けとした質の高いインカム収入と、米国の成長性を背景とした資産価値の向上という、二つの魅力を兼ね備えています。特に、株式に偏重しているポートフォリオを持つ投資家や、長期の資産形成を目指す若い世代の方々におすすめです。REITは株式とは異なる値動きをするため、ポートフォリオの分散に役立つほか、長い目で見れば米国経済の成長をしっかりと取り込むことができます。
単なる不動産投資ではなく、米国経済の成長と人々の生活の変化に連動した投資機会を提供しています。長期的な視点で、米国の繁栄に投資する手段として、USリート・ファンドをぜひご検討ください。
フィデリティ・USリート・ファンド(資産成長型)C(為替ヘッジあり)
フィデリティ・USリート・ファンド(資産成長型)D(為替ヘッジなし)