大容量化の切り札 3D NAND新技術で攻勢へ

フォーカス!押さえておきたいテーマと企業/ QUICK

AI(人工知能)や自動運転など情報通信量の増大に伴い、大容量のデータを記録できる半導体のニーズが高まっています。半導体製造装置の新技術でシェア奪還を目指す東京エレクトロンを中心に、関連各社の取り組みを紹介します。

東京エレクトロンが新型装置の開発状況を開示

8月8日、「 東京エレクトロン 」が2024年4~6月期決算を発表。あわせて通期の業績予想を上方修正し、連結純利益が2年ぶりに最高益を更新する見通しを明らかにしました。業績好調の背景は、AI向けなど半導体製造装置の需要拡大です。

しかし、より注目されるのは、同社が決算発表の説明会で開示した新たな半導体製造装置技術の開発状況です。

半導体製造装置は、スマートフォン等電子機器に使用されるNAND型フラッシュメモリなどを対象の一つとしています。同メモリは、メモリーセルを平面に配置する構造から、垂直に何層も積み上げて大容量化を目指す3D(3次元)NANDが主流になってきています。ただし、積層数が増えるほどメモリーセルに穴を開けて上から下までつなげることが技術的に難しくなり、精度や製造時間などが課題となっています。 

これを解決する手段として注目されているのが極低温エッチングという新技術です。この技術は半導体の基盤(シリコン・ウェーハ)を氷点下に冷やすことで加工精度を上げることができます。 

東京エレクトロンは同装置の開発で世界をリードしており、決算説明会で量産に向け最終段階に入っているとの自信を示しました。

 

3D NAND向け製造装置では米国のラムサーチが独占的なシェアを握っているといわれます。しかし、現在主流といわれる200層から近いうちに1000層を超えるとの見方も一部にあります。東京エレクトロンは技術難度が一段と上がる局面でシェアを奪還したいと考えているようです。 

半導体材料メーカーなどにも商機

半導体用材料を手掛ける「 トリケミカル研究所 」は、2025年に稼働開始予定の新工場で400層を超える積層構造に対応した次世代3D NAND用の新たなエッチング材料を生産予定です。

また極低温エッチング装置の浸透で3D NANDの高積層化が加速すると、他の半導体材料でも需要動向に変化が出てきそうです。

たとえば、3D NANDの各層のセルを制御するためには階段状の加工が必要になりますが、「 東京応化工業 」は加工に使う専用の材料を手掛けています。積層が増えれば需要拡大が見込まれます。

SCREENホールディングス 」は半導体洗浄装置を手掛けており、3D NANDが増えることで洗浄工程が増加し、その重要性が一段と高まる可能性があります。

複雑な成膜工程が必要な3D NANDにおいて、「 KOKUSAI ELECTRIC 」は成膜装置で圧倒的なシェアを獲得しています。 

3D NAND関連の技術開発は日進月歩で発展しています。