再生エネ向け蓄電池 ルール改定で優遇 需要拡大へ弾み

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地球温暖化対策で再生可能エネルギーの活用は不可欠とされています。一方、発電量が気象条件に左右されるという課題も抱えています。この課題の解決に蓄電技術の活用で取り組む住友商事を中心に関連各社の動向を紹介します。 

蓄電利用の再生エネ事業者を優遇へ

8月7日、経済産業省が、再生可能エネルギーの発電事業者を優遇するルール改定案を発表したと報道されました。

優遇されるルールの改定ポイントは、再生可能エネルギーを蓄電池にためる事業者を「出力制御の対象から外す」というものです。

政府は、電力供給が過剰となった場合、発電を一時的に止める「出力制御」を行っています。

具体的には、発電量が増えすぎた場合、最初に火力発電の出力を下げ、その次に他の地域に電気を送るようにして調整。それでも余る際はバイオマス、太陽光と風力の順で再生エネの発電を抑えています。

今回のルール改定では、2026年度から、再生エネと蓄電池をあわせて活用する「FIP(フィードインプレミアム)」と呼ばれる制度を使う事業者を優遇し、出力制御の順番を後ろに回すこととなりました。

これにより、蓄電池にためることで再生可能エネルギーを安定供給できるだけでなく、事業者にとっては出力制御による収入減を避けることができるというメリットが出てきた訳です。

系統用蓄電池とは
発電所などの電力ネットワーク(系統)に直接接続する大規模な電池

住友商事が北海道で蓄電システムを稼働

ルール改定を受けて蓄電池に関する各社の取り組みに関心が集まっています。

住友商事 」は10年以上前から蓄電事業に取り組んでいます。同社は欧州などと比較して日本で再生可能エネルギーが浸透しない理由の一つとして、送電線の容量不足を挙げており、蓄電池の重要性を強調しています。

最近では北海道千歳市で系統用蓄電システム「EVバッテリー・ステーション千歳」の稼働を開始しました。ここでは電気自動車から回収したリユースバッテリーを使っており、資源の再利用にもつなげています。同社は2026年度までの累計投資額を200億円超、2030年頃に数十億円の利益を目指すとしています。

蓄電所の整備も加速

蓄電所の建設は加速度的に広まりを見せています。

伊藤忠商事 」は今年9月に系統用蓄電所に投資する日本初の専用ファンドの運営を開始したと発表しました。2025年度をめどに1号の蓄電所を立ち上げる計画です。

ENEOSホールディングス 」は大型産業用蓄電池の分野に参入しています。2025年度までに3拠点を設置することを明らかにしています。

メガソーラー開発の「 ウエストホールディングス 」は人工知能(AI)を活用した系統用蓄電所を2027年までに開発すると8月に発表しました。蓄電池関連事業を太陽光発電に次ぐ収益の柱に育成する計画です。

日本碍子 」は大容量の蓄電池「NAS電池」を手掛けています。

今回のルール改定により、蓄電技術を持つ企業の活躍の場が広がるとともに、再生エネルギーに安定供給の道が拓け地球温暖化対策への対応が大きく進むことが期待されます。