株式市場で「小売り」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は1.0%と、東証株価指数(TOPIX、0.5%高)を上回りました(10月11日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
業種別指数が最高値
業種別東証株価指数(TOPIX)の小売業は11日に最高値を付けました。足元では小売り企業の中間決算発表が本格化。好調な業績結果や買収を巡る思惑などを背景に、ファーストリテイリングやZOZO、セブン&アイホールディングスなどが相次いで上場来高値を更新しました。
好決算発表【ファーストリテイリング】
上昇率首位は、「ユニクロ」を展開する「
ファーストリテイリング
」です。10日に発表した2024年8月期連結決算(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前期比12%増の3兆1038億円、営業利益は31%増の5009億円で、会社計画を上回りました。好調な国内外のユニクロ事業が寄与したかたちです。
2025年8月期も売上収益が前期比10%増の3兆4000億円、営業利益は6%増の5300億円と増収増益を見込んでいます。足元では、国内ユニクロの9月既存店売上高(既存店+Eコマース)は前年同月比22%増えました。期初にあたる9月に好スタートをきったことで、今期業績も上振れが期待されます。
月次売上高の伸びが加速【MonotaRO】
上昇率2位は作業服や工具、資材などのネット通販を手がける「 MonotaRO 」です。10日に発表した月次業績によると、9月度の売上高は前年同月比13%増と8月実績(同10%増)から伸びが加速しました。営業日数が前年同月より1日少なかったのを勘案すると、好調だったと評価できそうです。新規顧客獲得数は8万9900アカウントと8月実績(10万2100アカウント)から低下したものの、好調が持続しています。
目標株価引き上げや買収額引き上げ、既存店売上高の好調持続も
衣料品通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する「 ZOZO 」は、外資系証券が目標株価を引き上げたことなどを受けて上場来高値を更新しました。7~8月の記録的猛暑と多くのファッションブランドがZOZOを通じた販売を重視する傾向が流通総額(GMV)の追い風になるとのこと。
「 セブン&アイホールディングス 」は、カナダのコンビニ大手のアリマンタシォン・クシュタールが買収額を引き上げたことが材料視されました。セブン&アイは祖業である「イトーヨーカ堂」の売却方針を示すなど、企業価値を高める動きを強めており、買収を巡る今後の動きへの関心が高まっています。
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを運営する「 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス 」は、既存店売上高の好調が評価されました。9月の既存店売上高は国内リテール事業が5%増、ディスカウント事業が6%増、GMS(総合スーパー)事業は2%増とプラス基調が続いています。
小売業の景況感は大幅に改善、インバウンドの追い風期待も
日銀が1日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業非製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス34と前回比で1ポイント上昇しました。特に小売りはプラス28と9ポイントの大幅な改善になりました。
また、日本政府観光局(JNTO)が発表する月次の訪日客数は過去最高が続いており、出遅れ感のあった中国人観光客も戻り歩調が鮮明となりつつあります。10月初旬の中国の大型連休「国慶節」では相当数の中国人観光客が日本を訪れたとみられ、小売り各社の10月の月次売上高に追い風となれば株価上昇につながると期待されます 。