今回ご紹介するインデックスは今までご紹介してきたものと比べるとやや変わり種です。その名はS&P500配当貴族指数といいます。「S&P500は知ってるけど、配当貴族って何?」とお思いになったのでは? この記事はまさにそんなあなたにお届けする内容となっています。
S&P500からさらに選び抜かれた銘柄で構成されるインデックス
S&P500配当貴族指数の採用条件を確認しましょう。以下の4点です。
2.25年以上連続で増配していること
3.時価総額が30億米ドル以上であること
4.1日あたりの平均売買代金が500万米ドル以上であること
4つをややラフにまとめると「S&P500に採用されている銘柄の中から25年以上連続増配されている適度な流動性がある大型の銘柄」ということになるでしょうか。S&P500については以前の記事ですでにご紹介しています。米国企業かつ4四半期連続でEPS(1株当たり純利益)が黒字といった採用基準がありました。S&P500配当貴族指数の採用条件3番の「時価総額」は、2024年1月4日以降、S&P500は最低180億ドルと決められているので、現時点ではS&P500に採用されていれば自動的にクリアする条件です。
S&P500配当貴族指数はS&P500の採用基準を満たした上で、さらなる採用条件をクリアした銘柄で構成されるということです。2024年9月末現在66銘柄が採用されています。
S&P500配当貴族指数の最大の特徴は、「25年以上連続増配」している銘柄で構成されることです。ひとことに25年以上と言いますが、25年は長いです。2024年から25年さかのぼると1999年になります。それからの25年の間に、株式市場ではITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナショックといった大きな下落局面がありました。そのような局面でも前年比でずっと増配を続けてきた銘柄だけで構成されているのです。
つまりこのS&P500配当貴族指数に採用される銘柄は、景気が良い時も悪い時も配当を増やし続けられる余力がある大型企業であると言えるでしょう。S&P500配当貴族指数は「連続増配」がキーワードです。ちなみに、50年以上の連続増配銘柄は「配当王」と呼ばれています。
25年以上連続増配している銘柄の顔ぶれ
では25年以上連続増配している米国の大型株の顔ぶれを見てみましょう。こちらは2024年9月末現在のS&P500配当貴族指数のウエイト上位10銘柄です。
「あれ? 知らない銘柄が多いなぁ。アップルとかマイクロソフトとかエヌビディアとかが見当たらないぞ」と思われたのでは。それらの銘柄はよく知られていますが、実は「配当」の歴史は浅いのです。
アップルは1990年代半ばに配当を出していましたが、その後無配が続き、配当支払いが再開されたのは2012年でした。マイクロソフトが初めて配当を出したのは2003年でした。エヌビディアの初配当は2012年でした。現在は2024年です。3銘柄の中で一番長く配当を支払い続けているマイクロソフトですら、まだ25年は経過していないので、S&P500配当貴族指数には採用されていません。言い換えれば、マイクロソフトはあと数年後にS&P500配当貴族指数に採用される可能性があります。
ではS&P500配当貴族指数ウエイト上位銘柄にいくつか触れます。ウエイト1位のStanley Black & Decker Incは電動工具の大手メーカーです。ウエイト2位のKenvueは世界屈指のヘルスケア企業ジョンソン・エンド・ジョンソンから消費者向けの部門が分離して誕生した企業です。ジョンソン・エンド・ジョンソンも連続増配銘柄としてよく知られていますね。3位のClorox.Coも生活に密着した製品を供給するメーカーです。漂白剤では米国No.1シェアを持ちます。
心強い特徴は「下げに強い」
パフォーマンスをS&P500と比較して確認しましょう。過去10年の前半はS&P500とほぼ互角、あるいはやや優位に立つ局面もありました。
S&P500配当貴族指数の最大の特徴は、「下げに強い」ことです。
こちらの棒グラフで棒が下を向いているときはインデックスが前年比で下がったことを意味しますが、その局面ではS&P500よりも下げが小さいことがわかります。市場全体が軟調な時でも、大きく下げない点を心強く感じませんか。
近年S&P500とのリターンに差が出ているのは、株価が著しく上昇した大型IT関連株に無配の銘柄が少なくなかったからでしょう。グーグルを傘下に持つアルファベットが初めて配当を出したのは2024年、今年のことです。アマゾンはいまだに無配です。それらはもちろんS&P500配当貴族指数には採用されていません。先ほど挙げたように、アップルもマイクロソフトもエヌビディアも採用されていません。
一方でその大型IT関連株の株価が冴えなかった2022年、S&P500配当貴族指数はS&P500より非常に小さな下げにとどまっています。米国株式市場をけん引する大型IT関連株の株価が好調な時は、S&P500配当貴族指数の騰落率が寂しく思えるかもしれませんが、逆の場合はいい守りをしてくれるインデックスと言えるでしょう。
一つ理解していてほしい点があります。連続増配銘柄は決して高配当利回りではありません。株価のリターンがS&P500と遜色ないということは、連続増配していても株価も上昇していることが多いです。その結果として、予想1株あたり配当÷株価×100で算出される配当利回りは、配当も株価も上昇すれば、それほど大きく変化しないことになります。連続増配だから、配当利回りが高い銘柄が多いんだなと勘違いしないようにしましょう。
2024年9月のFOMCで米国の政策金利が引き下げられました。今後少しずつ政策金利が下がっていくようであれば、投資家がインカムを選好するようになることも想定されるでしょう。資産を守りつつ、少し先を見据えた資金の配分先としても有望と考えます。