スナック菓子の絶対王者が、王者であり続ける理由【前編】

発表!あの会社の気になるランキングNo.1!/ 日興フロッギー編集部

来年発売50周年を迎えるカルビーの「ポテトチップス」。後発ブランドとして1975年にスタートし、「コンソメパンチ」の爆発的ヒット、美味しさを維持するパッケージの導入、オリジナルのばれいしょ開発などを経て、スナック菓子の絶対王者に君臨しています。続けて食べたくなる「連食性」はいかにして生まれたのか。同社マーケティング本部の井上真里さんにお話を伺いました。

カエル先生のデータバンク

今回は、カルビー株式会社のポテト系スナックのカテゴリー別売上ランキングを発表!
※2024年度3月期販売実績より

3位 Jagabee/じゃがポックル(120億円)
100品種超のじゃがいもを使用して試作を繰り返すことで、開発に成功。サクッ! ホクッ! とした食感が楽しめる皮つきじゃがいもスティック。「じゃがポックル」は、北海道産の厳選した原材料のみを使用しています。

2位 じゃがりこ(454億円)
1995年に発売。心地よい固さのスティック状の形状、またカップ包装が発売当時大注目されました。カルビーの技術で手を汚れにくくすることにも成功。定番のサラダ味とチーズ味以外にも様々な味展開がある人気商品。

1位 ポテトチップス(983億円)
1975年に発売。じゃがいもにこだわったパリッとした食感で、食べる楽しさを伝えます。フレーバーで一番人気の「うすしお味」は、昆布の旨味でじゃがいも本来の素材の味を引き立てた味わい。堅い食感で噛むほどにじゃがいもの味わいが楽しめる堅あげポテトなども展開。

「うすしお味」からスタートし、現在も圧倒的No.1

ーー第1位はみんなが大好きな「ポテトチップス」ですね。人気フレーバーTOP3を教えてください。

不動のベスト3は順に「うすしお味」「コンソメパンチ」「のりしお」ですね。次いで「しあわせバタ~」と続き、この4商品で売上の多数を占めています。例外はエリア特性で九州にて「九州しょうゆ」という地域限定の商品が2位に入ったことがあります。それでも首位は「うすしお味」なので圧倒的な強さを感じますね。

ポテトチップスの中でダントツ人気の「うすしお味」

「ポテトチップス」はフレーバーごとに購買層が異なりますが、「うすしお味」に関しては男女世代を選びません。最大のポイントはアレルゲンがないこと。小さなお子様にも安心して食べてもらえますし、小袋やアソートパックなどサイズ展開も豊富で、それぞれのシーンに合わせられるところも強さのポイントでしょうか。なお、社内には全工場分の「うすしお味」を毎週チェックし、味や食感、色味はどうか? などをフィードバックしている部署もあるんですよ。

カルビーマーケティング本部の井上真里さん

ーーポテトチップスは1975年、「うすしお味」からスタートしました。後発ブランドとして発売当初は伸び悩んだものの、ほどなくして国民的なスナック菓子に成長したとのこと。どのような分岐点があったのでしょうか。

最初にブレイクしたのは1976年のCMがきっかけだったと聞いています。当時14才の人気女優を起用、「100円でカルビーポテトチップスは買えますが、カルビーポテトチップスで100円は買えません」というフレーズは流行語にもなりました。当時、他社さんのポテトチップスは120円~150円ほど。市場の拡大を狙い100円という価格設定にしたのもありますが、このCMで一気に浸透しました。

1978年発売当時の「コンソメパンチ」

次のターニングポイントは1978年の「コンソメパンチ」発売です。先行ブランドにはなかったフレーバーで、ビーフの味をベースに隠し味として梅肉パウダーを使ったところ、大ヒットにつながりました。「初めて食べた時の、あの衝撃は忘れられない」と言われることも多いんです。

続いて1983年、パッケージにアルミ蒸着フィルムを導入。ここでも大きな転機を迎えました。当時のお菓子の包装は中身が見える透明な包装が主流でした。ですが、透明ですと光や酸素が透過するため、酸化しやすく湿気りやすいため、品質保持が非常に難しいんですね。中が見えないパッケージに当初は反対の声もありましたが、美味しさを長く保てるようになったことで、やがて業界全体に波及していきました。

初代「コンソメパンチ」は優しい味

ーー定番商品は時代ごとにリニューアルしています。一方で、新フレーバーも年間100種近く発売。さすが「コンソメパンチ」を生み出した会社という気がします。

次々と食べたくなる連食性をいかに高めるかという点を日々考えています。その代表と言えるのが「コンソメパンチ」です。ビーフを強めにしたり、チキンを強めにしたりと、これまで10回以上改良しているんですよ。先日、初代の「コンソメパンチ」を試食する機会がありましたが、今食べると意外にもふんわり優しい味に思えました。味のトレンドはその時々で変化しますが、昨今は濃いめの味の方が受けます。なお、「うすしお味」も過去にはしいたけエキスパウダーをプラスしたり、塩分量を減らしたりとその時々でリニューアルしています。

うすしお味もコンソメパンチも10回以上味を改良している

フレーバー戦略については「しあわせバタ~」に続く新しいヒットとなる味を模索していますね。お客様に手に取って頂ける企画として人気なのは定番の○倍シリーズです。コンソメ風味3倍の「コンソメトリプルパンチ」、「のりしお」ののりの風味何倍、「しあわせバタ~」のバター何倍などはやはり数字も伸びますね。

「ポテトチップス」はスーパーとコンビニで対象層が変わる!?

ーー現在、ブランドの再構築中で商品ごとのそれぞれの役割を「見える化」しているそうですね。

実は、商品開発を進める一方で、アイテム数が増えすぎてお客様からするとわかりづらくなっていた、という反省点があります。さまざまなブランドからさまざまなフレーバーを出してきましたが、単品の利益の「見える化」がうまくできていませんでした。今春には「利益が取れなかった場合、クローズするのか」「それとも商品自体に別の役割を持たせるのか」を徹底して詰めました。その結果、25年以上人気だった「ポテトチップス ギザギザⓇ」をはじめ一部を終売しました。残すものに関しては改めてロゴを付記し「カルビー ポテトチップス」ブランドであることがお客様に伝わりやすいように変更しました。

単品の利益の「見える化」を図っていく

また、その際に全商品の役割をマーケティング部で言語化できるようにしました。「コンソメパンチ」であれば「うすしお味」を卒業した小学生が最初に食べて衝撃を受けるフレーバー、「のりしお」は「うすしお味」では少し物足りないけれど素朴な味を食べたい時や、男性のおつまみ代わりに、など。「しあわせバタ~」は20代の女性が多く、他のフレーバーにはないポジションを取れていますね。

ーーカルビーには「かっぱえびせん」「じゃがりこ」など人気のスナック菓子も多数あります。社内での「ポテトチップス」の位置づけを教えてください。

その点については「ポテトチップス」ならではの現象があります。フレーバーだけでなく、取り扱う販売チャネルによってもターゲットが異なるんです。スーパーの場合、中心購買層はお母さんで、お子さんや家族のため買い置き用に購入されることが多く、一方コンビニでは一人暮らしの男性が中心で、この場合は買い置きではなく、今すぐ食べる用途が多いです。同じ商品なのにユーザーも目的もチャネルによって異なる。さまざまな層に幅広く愛されている商品だなと感じています。多くの方にお届けできるようアプローチを都度変えていく必要があるのも「ポテトチップス」の面白さだと思います。

後編では「ポテトチップス」の飛躍の土台となったじゃがいもの品種開発や、「空気を運ぶようなもの」と言われる物流の秘密について触れていきます。

カエル先生のデータバンク

カルビーの創立は1949年。社名は、カルシウムの「カル」とビタミンB1の「ビー」を組み合わせた造語で、「人々の健康に役立つ食品をつくる」という想いが込められています。カルビーのDNAには「未利用の食糧資源を活用する」という考え方があります。この考え方に基づき開発したのが最初のヒット商品となった「かっぱえびせん」です。その後、もともと主にでんぷんとして消費されていたばれいしょを丸ごと使った「ポテトチップス」や「サッポロポテト」などたくさんの商品を発売してきました。

カエル先生のデータバンク

・連結売上高3030億円(2024年3月期)
国内スナック菓子市場のシェア51.7%、国内シリアル市場のシェア36.1%でいずれもナンバーワン(2024年3月期)、海外では11の国・地域で展開しています(2024年10月現在)。カルビーは、ばれいしょに関する専門力、時代の変化をとらえた商品企画・開発力、自然素材を活かす加工技術に強みを持っています(カルビーHP/よくわかるカルビーより)。

井上真里(いのうえまり)さん
マーケティング本部 ポテトチップス部 ポテトチップス1チームブランドマネージャー。
2009年にカルビー株式会社に入社(大阪営業所に営業として赴任)、広域営業を経て2020年よりポテトチップスコンソメパンチや地域商品を担当。2021年育休を取得し2022年4月より現職。
カルビー
次回は10/28(月)配信予定です。