もうすぐ保険証は廃止 マイナ保険証がないと一体どうなる?

フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル/ 山田真哉

みなさんこんにちは! 公認会計士兼税理士の山田真哉です。

政府は現行の保険証を廃止して、「マイナ保険証」に移行する方針を表明しています。「マイナンバーカードを持ち歩くのは不安」「持っていない人はどうするの」など多くの方が不安に思っているにもかかわらず、保険証の廃止はもう間もなくとなっております。今回は、保険証廃止についてのポイントをお伝えしたいと思います。

お送りする内容は、以下の通りです。

・保険証廃止で多い質問
・「資格情報のお知らせ」と「資格確認書」との違い
・そもそもマイナンバーカードがない人の場合
・マイナ保険証がある人の場合
・なぜ国は強行するのか

保険証廃止で多い質問

まず、保険証廃止について「今の保険証は使えるのか?」という質問を多く受けます。今の保険証は2024年12月1日までで、12月2日以降に新たに発行される事はありません。今の保険証の使用は、経過期間として1年間ありますので、2025年12月1日まで有効です。ただ、それより手前に有効期限が来た方はその時点で終わってしまいます。

次に「マイナンバーカードがあればOK?」という質問もよく受けますが、持っているだけではダメで、保険証利用登録をする必要があります。マイナンバーカードにマイナ保険証の機能がついて初めて、保険証として使えるんです。マイナ保険証は、病院や薬局の受付にある機械で使える仕組みになってます。

なお、マイナ保険証の利用率は12.43%と全く普及していません(2024年8月末時点)。しかし国はマイナ保険証に一本化しようとしています。

そして「マイナンバーカードを持ってない人はどうなるの?」という質問もあります。加入している健保組合によって多少異なると思いますが、僕が全国の中小企業が入っている協会けんぽに問い合わせたところ、2025年9月以降にマイナンバーカードを持っていない人には「資格確認書」を発行すると言われました。資格確認書については、この後解説します。

保険証は「マイナ保険証」か「資格確認書」になる

マイナ保険証を持つには、そもそもマイナンバーカードの申請と入手が必要です。しかし、マイナンバーカードは、国民の義務ではなくて任意となっています。そのため、加入者は日本の人口全体の約75%にとどまっています。マイナンバーカードを持ってる人が約9300万人で、持ってない人が約3100万人です。

そこに保険証の機能をつけたのがマイナ保険証です。マイナ保険証の機能をつけてる人は約7500万人です。なのでマイナンバーカードはあるけど、保険証の機能をつけてない人が約1800万人います(すべて2024年8月末時点)。

本来は今の保険証を廃止して、本来はすべてマイナ保険証に一本化するはずでした。しかし、マイナ保険証は実質義務となり、資格確認書でもいいことになりました。

マイナ保険証がない方は、2024年12月2日以降、保険証の有効期限が切れると資格確認書に変わっていきます。この資格確認書が保険証の代わりとなります。材質・サイズ・形状は現在の保険証と同様で、有効期限は5年以内です。当面の間は、皆さんが加入している健保組合から送られてきます。ただこの「当面の間」が、いつまで続くのかは分かりません。

つまりこのままだとマイナ保険証と資格確認書のふたつを使う世界になります。

ちなみに、これまで保険証は身分証明書として使えていましたが、資格確認書は身分証明書にはならないだろうと言われています。

マイナンバーカードがない人の場合

では、そもそもマイナンバーカードを持っていない方々はどうなるのでしょうか。まず、2024年12月2日以降は保険証の新規発行がなくなります。その後は、保険証の有効期限が切れたら、資格確認書が発行されます。

そして、2025年12月2日には今の保険証がすべて使えなくなります。健保組合などに返すわけではなく、自分で破棄することになるようです。

高額療養費制度で使っている限度額適用認定証や70歳以上の方が対象の高齢受給者証はこれまで通り使えますので、持っていてください。ちなみにマイナ保険証にすれば、限度額適用認定証や高齢受給者証はマイナ保険証に一体化されますので、不要となります。

このように、しばらくは資格確認書が使えます。ただし、有効期限は最長でも5年なので、2029年には有効期限が切れてしまいます。その時、国がマイナ保険証に一本化したいということであれば、マイナ保険証に強制的に移ることになるのかもしれません。その辺りは今後の状況で変化していく点だと思われます。

マイナ保険証がある人の場合

すでにマイナ保険証を持っている方には、2024年9月以降に「資格情報のお知らせ」が届きます。マイナンバーカードには健保組合名や社会保険の番号が書いてありませんが、この「資格情報のお知らせ」には載ってます。

そして、病院にカードリーダーがない時や停電でマイナ保険証が使えない時などに、この「資格情報のお知らせ」を見せるという仕組みになっています。

よって、この「資格情報のお知らせ」を捨ててはいけません。病院に行く時にはマイナ保険証と資格情報のお知らせの両方を持っていったほうが良いです。ということで……なんだか面倒な感じになってます。

ちなみに、先ほどまで出てきた資格確認書とはまったくの別物です。

また、2025年12月2日以降もマイナ保険証を持っていれば心配ないと思うかもしれませんが、気を付けなければならないことがあります。

それは、マイナンバーカード自体の電子証明書の有効期限です。この有効期限は5年で、過ぎてしまうとマイナ保険証も使えなくなります。急に使えなくなると問題なので、マイナンバーカードの電子証明書が切れる3ヵ月前から病院の端末などでアラートを出すようです。さらに期限の3ヵ月後まで使えますので、その間に市役所や区役所へ行って電子証明書の更新をする必要があります。

僕は電子証明書の更新をしたことがありますが、平日の昼間に区役所に行くのは大変でした。

もしこの更新を忘れたり、放置したりした場合、現時点ではマイナンバーカードを持ってない人と同じ資格確認書が交付されることになるようです。

マイナンバーカードはあるが、マイナ保険証ではない人の場合

最後に、マイナンバーカードを持ってるけれど、まだマイナ保険証の登録をしていない方の場合です。このケースでは、マイナンバーカードがない人と同じように資格確認書が届きます。

ですが、マイナ保険証にすることは非常に簡単です。スマホでもできますし、セブン-イレブン、病院や薬局でもできるそうです。

なぜ、国は強行するのか?

というわけで最後に、「なぜ国は保険証の廃止を強行しようとしてるのか」について解説したいと思います。

一番の目的は医療DXです。マイナ保険証を使うようになれば、電子処方箋でリアルタイムに病院同士で情報共有できたり、診察券をマイナンバーカードに一体化することで病院ごとの診察券がいらなくなったりします。また、マイナ保険証が1枚あれば、通院している病院や使用している薬などが全て分かるため、救急医療の現場でも役立つでしょう。このように非常に便利になります

とはいえ、「利用者にとって便利なら自然と普及するはずなのに、国は強引すぎる。これには何か裏があるに違いない」と思う方もいると思います。

例えば、高速道路のETCカードは強制された記憶はありませんが、自然とみんな使うようになりました。それはやはり便利だったからなんですよね。

しかし、マイナ保険証はすでにスタートしているものの、利用率が12.43%と普及していない。だから今の保険証を廃止してマイナ保険証への流れになっているのですが、そこまでする理由はいくつかあると思います。

まずは、デジタル化されることで、診療報酬のやりとりで発生する行政コストが下がります。また、情報を共有化することによって、複数の病院で重複して薬を処方されることも防げる。その結果、社会保障費を減らすことができます

さらに、無保険者の不正利用を減らすことができます。過去の新聞に出ていた話ですが、外国人労働者の中には無保険の人がいて、家族や親戚から保険証を借りて病院へ行ったり、薬をもらったりするケースもあるようです。今後、外国人労働者を積極的に受け入れるのであれば、その前に仕組みを整備しなければいけないと、いった目的もあるようです。

このようにさまざまな理由がありますが、やはり最も大きい目的はマイナンバーカード自体を普及させたいのだと思います。これまで国は2万円のポイント還元など莫大なお金をかけて、マイナンバーカードを普及させようとしてきました。しかし、任意となっているので、普及率が74%で止まっています。残りを何とかするために、保険証を人質にしているとも言えます。

マイナンバーカードが普及すれば、医療費以外の行政コストも下げることができるのでしょう。

個人的にはマイナンバーカードのおかげで、印鑑証明書や戸籍謄本をコンビニでも取れるので非常に便利になりました。でも、面倒なことも多いです。

暗証番号を3回間違えたら、すぐにロックがかかってしまい、ロックを解除するために市役所へ行かなければなりません。認知症の方など、暗証番号を覚えるのが大変な方もいると思います。ですから、マイナンバーカード自体の課題を解決してから保険証の廃止でもいいのではないかと思いますが……。

というわけで、今回は保険証の廃止について2024年8月時点の情報でした。

よかったら今後ともごひいきに。ば~い、ば~い!